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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第一章 闇の聖女 始動?
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しがない鑑定眼の情報屋さんのDランク迷宮でトラウマ

「ごご、ごめんなさいごめんなさい!」

 私は杖をブンブンと必死に振り回します。目の前にレッドスライムが出て来たからです。普通のスライムなら流石に慌てたりしませんが、相手は『レッド』です。好戦的です。すぐに体当たりしてきます。怖いです。


 ブンブンと杖を振り回すと杖の先から黒い球体が飛んでいきます。


 ブシュウウウゥゥゥ!! ブジュルルルゥゥウ!!


 スライムが黒い球体に当たると、まるで強い酸をかけた様にドロドロと溶けていきます。

 あの……? これは相手がスライムだからですよね……? 闇魔術に当たるとこうなるわけじゃないですよね……?


「あうあうあう……えぇぇん」

 あまりの気持ち悪さに泣いてしまいます。闇魔術でみんなこうなるなら私は一生闇魔術を使う事がないかもしれません。 闇の聖女 廃業確定です。


「うぅ……ぐすっ……」


 でも闇魔術でこうなると決まったわけではありません。さっきの闇の魔術を鑑定眼で見てみるのもありだと思います。

 杖に魔力を込めると ズズズッ と黒い球体が出来上がります。黒い球なのでダークボールと名付けます。それ以外に名前は思い浮かばないです。どうせ私しか使える人もいないのです。名前ぐらい決めてもいいです。

 ダークボールが杖の先で浮いている状態で鑑定眼でじっと見つめると。文字が浮かび上がります。



 ダークボール

 属性  闇

 能力  対象に闇魔力の球体を飛ばす

 効果  対象に魔術攻撃。攻撃力は魔力に依存

 仕方ないから一言

     対象が酸で溶けたのはダークボールの効果ではない



 仕方ないから一言が少し納得いきませんが、よしとしましょう。


 私は涙を拭き、迷宮を進みます。何はともあれ初のDランク迷宮で魔物を倒したのです。大したものです。まだ地下一階ですけど。


 両手で杖を握りながら辺りを見渡します。迷宮内の壁には光る魔石が埋め込まれていますが、かなり薄暗いです。普通なら明かりが必要になると思います。

 今の私には必要ありません。猫目になっていますから。にゃーと鳴いてもいいほどよく見えます。


 道が突き当り、左右に分かれる所で右側からゴブリンがトコトコ歩いてきます。

 私と目が合うと棍棒を振り上げます。やる気です。


 杖をギュッと握りしめ。今度は目を逸らさない様に魔力を込めます。


「ダークボール!」


 杖の先からズズズッと黒い霧が集まって黒い球体を作ると。凄い速さでゴブリンに飛んでいきます。私はダークボールが生成される過程が気になります。ちょっと不気味です。慣れるかな?


 ぎゃああぁぁぁぁす!! ぐじゅぅるるるるぅぅ!!


「うぇぇぇぇぇぇぇ」


 ダークボールに当たるとゴブリンは強い酸に当たったかの様にボテボテと溶け始めました。

 廃業です。私は二度と闇の聖女を名乗りません。


「あうぅ……ひっく……ぐすん……」


 嘘を付いた鑑定眼に文句でも言ってやろうかと。涙を流しペタリと座り込みながらも。私は杖の先にダークボールを生成し、鑑定眼で睨みます。


 ダークボール

 属性  酸で溶けたみたいにならないように魔力を生成しろ

 能力  デフォルトでは溶けちゃうから! 消滅するように生成しろ!

 効果  爆発するように生成してもいいんじゃないの!?


 要は溶けないようには出来るみたいです。自分の魔術の作り方に依存する様です。私が泣いてるせいか、普通にアドバイスです。なんの魔眼かわかったもんじゃありません。一応鑑定して教えてくれてるという事にします。


「すん……すん…………」


 消滅はよく分かりませんが、爆発は頭でも理解出来ます。なので次は爆発で試そうと思います。さっきのレッドスライムよりも心に深い傷を負いました。人型が溶けるところを見るのはもう嫌です。


 私はゴブリンがいた道とは逆方向に進みます。とりあえず見る事が出来ませんでした。ゴブリンがいた道に地下へ続く階段があるなら、もう行けません。帰ります。今日は無理です。ほんとにごめんなさい。


 道なりに進んでいくと、奥からまたゴブリンが歩いてきます。私は必死に爆発するダークボールをイメージします。絶対に溶かしたくないので、かなり強く爆発を頭に思い描きます。


「ダークボール……」


 それでも少し怖くて、小声で魔術を唱えたんですが、魔力はしっかりと込めていたのでダークボールはゴブリンめがけてすっ飛んで行きます。


 ドオオオオオンッッッ!!! ボタボタボタ……


 ダークボールはコブリンに当たると同時に破裂しました。言うまでもなくゴブリンも破裂しました。ボタボタと肉塊を飛び散らせながら……


「いやぁぁぁ……どうすればいいのぉぉ……」


 曲がりなりにもAA級の魔力です。このランクだと相手が原型を留める事は無さそうです。私……耐えられないかもしれないです……


 その時、私は思いました。そうです。私にはAA級の魔力があるのです。だとすれば対象よりも大きいダークボールを放ち。相手を完全に消滅させれば悲惨な現状は見なくてもいいのでは?


 一縷の望みに思いを託し、震える足を踏み出し、地下二階へと続く階段に向かいます。倒した魔物からはふよふよと光の玉が浮かび上がり、私に引き寄せられる様に寄ってきていました。生命力です。私が手を翳すと光の玉は吸い込まれる様に光の粒になって私に宿ります。


 この生命力は溶けたスライムとゴブリン。それに飛び散ったゴブリンだと思うと泣いてしまいそうでした。次は消滅させてみせます。魔力の無駄遣いでも構いません。

 このままでは魔力がなくなりより先に私の心が折れます。


 私は決意を胸に。地下二階へ続く階段を下ります。


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