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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第三章 闇の聖女と世界の話
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闇の聖女の葛藤

「レティ♪ 一緒に来てぇ♪ 妹にも紹介するわぁ♪」


 モニカに連れられてシャンベリーの町を歩きいていきます。


 そんなに大きな町ではないです、落ち着いた小さな町といった感じです。


 シャンベリーはモニカの話の通り魔族の血が混じっている人がほとんどの様です。頭にコウモリの羽根が生えている人。ドラゴンの様な尻尾が生えている人。蛇の様な髪をしている人もいます。え? あれ本物の蛇ですか?


 と言っても見た目は人の範疇です。ほかの種族の血が混ざっているからでしょう。ベイランの町にいたマッチョター程怖い人はいないので安心です。


 辺りを物珍しそうに見渡しながら、モニカの後に続きます。人通りの多くない道でしたがモニカの姿を見かけると、陽気に挨拶をする人が多いです。モニカの人柄が伺えます。


 モニカが歩を止めたのは、町の一番奥にある。一番大きな家の前でした。


「ここがぁ 私の家♪」


 館と言ってもいい様などでかい家でした。家全体を囲む壁、取り付けられた門の大きさ。完全に館ですね。


「…………え? モニカ偉い人?」


「そんな事ないわぁ♪ 私のご先祖がこの町を作るのに一役かったんだってぇ♪ その名残かしらぁ?」


 モニカはあっけらかんとそう言って門をくぐります。


「ほらぁ♪ レティ早くぅ♪」


 門の前で呆然と立ち尽くす私は、モニカの声に後を追う様に門をくぐります。


 館には使用人がズラリと並んでいたりするのではないかと思ったのですが、出迎えてくれた使用人は数人でした。館の中はガランとしていて、少し寂しさを感じます。この館には妹さんと数人の使用人がいるだけとの事でした。


「マニカ♪ ただぁいま♪」


 館の二階。奥の部屋の扉を開けながらモニカは嬉しそうに微笑みました。


 私の胸が少しだけ痛んだ気がします。


 大切な妹さんなんだもんね。


「お姉ちゃん!? もぉ! また勝手にいなくなってぇ!」


 妹さんは窓際のベッドの上で、体ごと此方を向いて困った様な。モニカが戻ってきて嬉しいかの様な顔をしています。体を動かす事は難しいのか、ベッドから出てくる気配はありません。


 私もモニカの後ろからひょっこりと顔を出しました。


「わ!? お連れの人がいたの!? ちょっと先に言ってよ! もぉ……!」


 妹さんは見苦しい所を見られたかの様に、恥ずかしそうに俯きました。


 可愛らしい妹さんだなと思います。モニカと同じ様に下向きの角、濃い紫色の髪。髪の長さはショートカットで短めですが、丸い感じの女の子らしいショートカットです。


 緩やかな服の上からでもスタイルがいいのが分かります。間違いなくモニカの妹なのでしょう。この家系は代々グラマラスで間違い無さそうです。


「あらぁ♪ 言おうと思ったのよぉ? この人はレティ♪ 私の大事な仲間です♪」


「え……?」


 妹さんが少しキョトンとした気がしましたが、私は紹介のタイミングを逃さない為に言葉を出します。


「レティシア・プリシエラです。えと……初めまして」


 ペコリと頭を下げます。なんて言えばいいか分からないものです。


「マニカ・オリビア・パルクゥウェルです。お姉ちゃんがお世話になりました」

 マニカさんはそう言って、軽く頭を下げながら微笑んでくれます。マニカさんは笑顔のまま続けます。


「それで、お姉ちゃんとレティシアさんはどうしてここに? と言うか、どこに行ってたんですか?」

 どうもモニカは何も言わずに月下美人を取りに行ったようです。なんともモニカらしい気がします。


「月下美人を手に入れに行ってたのぉ でもぉ 私一人じゃ手に入れられなくて、レティに助けてもらったのぉ♪」


 モニカの言葉にマニカさんは驚きを隠さずに声を上げました。


「えぇ!? 月下美人って生命力の強い場所にしか咲かない魔草でしょ!? 何処にあったの!?」

 この驚き様からすると、マニカさんはモニカに危険を冒してほしくなかったのでしょう。私だって自分の為に危険は冒してほしくありません。


「えーと……? メタルゴーレムさんの頭の上? に咲いてたわぁ♪」

 そう言う事を聞いているのでしょうか……?


「えぇぇ!? そんなの一人で倒せないでしょ!? どうやって倒したの!?」

 そういう事を聞いていたみたいです。


 モニカ私の腕にするりと腕を絡めて言いました。


「レティにぃ、倒してもらいましたぁ♪」


 うえぇ!? 別に私一人で倒したわけじゃ!? むしろ私のせいでモニカが危険に……!


 私はわたわたと慌てて両手を振りながら答えます。


「わわ私何にもしてません!? むしろ私のせいでモニカが危なかったと言うか!? その、ごめんなさい!!」


「私一人だとぉ 死にかけちゃいましたぁ♪ マニカには分かるでしょぉ♪」


 うぇ? どういう事でしょう?


「うん。レティさん。お姉ちゃんをありがとうございます。私の為に危険を冒してまで月下美人を……ありがとうございます」


 マニカさんは深々と頭を下げます。私もどうしていいか分からずに頭を下げました。


「その……これでマニカさんの病気は治りますか?」

 モニカが確信を持っていたので治るのは間違いないと思います。返す言葉が見つからず照れ隠しで私は聞きました。


「はい。曾祖母も同じ病気だったんです。私よりもひどかったのですが、月下美人飲んだ次の日には病気が治ったと聞いています」

 問題なさそうです。飲んだ次の日に治る月下美人の力は凄まじいと言うほかありません。


「じゃぁ私、さっそく月下美人煎じてくるわ♪ マニカ、レティ苛めちゃだめよぉ♪」


 うえぇ!? 私マニカさんと二人きりですか!? 私が引き留めるより早く、モニカは スッスッ と部屋から出ていきます。私では出来ない速さです。流石です。


「えと、えぇと……」

 あわわと話をしようとする私を見て、マニカさんは ふふふ と笑いました。


「レティさん。そんなに気を張らなくても大丈夫です。月下美人、本当にありがとうございます」

 話し方はモニカとは違うのですが、何故かモニカの様な緩やかな空気を感じます。


「そんな、私はたまたまモニカに声を掛けられただけで……頑張ったのはモニカです」

 一人でゴーレムに挑み。一人では倒せないと知りながらも諦めず、見ず知らずの人に抱き着いてまで強い人を探していたのです。私には絶対出来ません。


「ふふふ♪ お姉ちゃんの言った通りですね。レティさんは優しいです。綺麗な生命力♪」


 え? 私が優しいなんて言ってましたっけ? 悪い印象がないのはいいんですが……。


「あの、早く良くなって下さい。モニカも喜ぶと思います」


 私はそう言いながらも、鈍い胸の痛みを感じます。


 理由は分かっています。私はモニカと離れたくないのです。モニカはここに残るのでしょう。それが辛いんです。


 でもそんな事は口が裂けても言えません。モニカはマニカさんを元気にする為に死ぬほどの危険を冒したのです。私のわがままで一緒にいてほしいなんて……言えるわけがないのです。


 それに自分のやりたい事をやるのが一番いいのは間違いない事だと思います。マニカさんと一緒にいたいと思うモニカを連れ出す事なんて出来ません。


「マニカさん。モニカは素敵な人です。私もあんなお姉さんが欲しかったです」


「ふふふ♪ 妹しては中々大変ですよ? 自由人だし、私の言う事なんて聞いてくれません。何考えてるか分からない事も多いんです」


 マニカさんも、モニカが大好きなんですね。


 嬉しそうなマニカさんに、私は微笑みます。姉妹で一緒に過ごすのです。いい事なんです。マニカさんの病気も治って一緒にお出かけや旅も出来るでしょう。素敵な事です。


「でもレティさん? お姉ちゃんは」


 部屋の扉が キィ っと音を立てました。見るとモニカが急須とコップの乗ったおぼんを片手に器用に扉を開けています。私ならおぼんをぶちまける自信がありますね。流石はAA級です。


「おまたせぇ♪ ほらマニカ、飲んで飲んでぇ♪」


 香ばしい匂いが急須から漂います。飲み物としてお金をとってもいいのでは無いでしょうか?


「レティさん。お姉ちゃん。ありがとぉ♪ 頂きます」


 マニカさんはそう言ってコップに口を付けました。その様子を見て、モニカの表情が一層和らいだ様に思います。


 モニカ、よかったね


 私はその光景を見ていましたが、少し、見ているのが辛くなりました。

 私の初めて出来た仲間との別れです。私もずっと一緒に旅が出来るとは思っていませんでしたが、実際にそうなると分かると悲しい限りです。


 また一人旅の始まりです。うーたんと鑑定眼を人数に入れていいのかは分かりませんが。まぁそう考えると一人では無いのかもしれません。


 うーたんはここに来てからずっと寝ていますけどね。馬車の中が楽しいのか飛び回り、動き回り、はしゃいだ反動なのでしょう。ポケットでいつものわけの分からない恰好で寝ています。


 不意にモニカが此方にススッと移動して ハッ と意識を戻します。


「えーい♪」


 あの時と同じ様に胸に飛び込んで来ました。

 急な事にあの時の様に慌ててしまいます。


「え!? ちょっと!? モニカ何してるのっ!?」


「あらぁ? レティ? 今日はここで泊まっていってぇ♪」


 正直に言うと、泣いてしまいそうなので早めに大森林に行こうと思っていました。


「レティ♪ お願い♪」


 別れの言葉かな? ここで別れても二度と会えないわけでは無いのです。変な別れ方をして気まずくなりたくはありません。


「分かった。今日はお邪魔するね」


 その後、マニカさんの部屋で三人で夕食を食べました。使用人さんは気を使っているのか、私達を見守る様に接してくれました。


 私は別れの悲しさを紛らわす様に笑いました。


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