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闇の聖女の馬車

「えうぅぅぅ」

 馬車に揺られて半日ほど。私は気持ち悪くて荷台で寝転んでいます。まさか馬車がここまで揺れる乗り物だとは思っていませんでした。

 乗客が私とうーたんだけなのが救いでした。他の人がいて寝転ぶわけにはいきません。というか、皆馬車平気なんですか? 絶対何人か吐いてる。いえ、息を引き取った人もいるんではないでしょうか?


「うぇぇぇぇ気持ち悪いですぅぅぅ」


 私はグロッキーです。立ち上がる事すらままなりません。あまり病気にかからない強い体だと思っていたのですが、この揺れに耐える事は出来ません。


「えふぅ。えっえふぅ。えふぅ」


 と、変な叫び声まで出る始末。どうにもなりません。本当にもう降りたいです。私馬車嫌いです。元から馬車嫌いだったんだと思います。


 込み上げる何かを必死に抑えながら えふぅえふぅ と不思議な呼吸をしています。この馬車は二日間でカハルダに到着するそうです。

 途中で何度か町で休憩するらしいのですが、逃げてもいいですか? 馬車の運賃銀貨5枚を返せなんて言いません。


「お嬢ちゃん!! 陽が沈む前には休憩できるよー!!」


 今は陽が真上にあります。そうですか。死刑宣告ですね? 当分はこのままだと私の心を折る為の言葉ですね?

 もう私に折れる所ないですよ? ボッキボキですもん(泣)


「うぇぇぇぇ。その前に死にますぅぅぅぅ」


 ここまで馬車が辛い乗り物だとは想像出来ませんでした。


 休憩所に辿り着いた時、私は運送ギルドのトイレに駆け込みました。理由は聞かないでください。私、がんばりましたもん(涙)


 トイレから出ると魔馬を御する御者さんが馬車の前で待っていてくれました。


「さぁお嬢ちゃん! 早く荷台に乗んな! 夜道もこのまま走るよー!」


「うぇぇぇぇぇぇぇ(ヨダレ)」


 さっきトイレでいっぱい出したのに、また何か出そうになりました。私の馬車の旅はまだまだ続きます。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 小さく縮こまる様に荷台の壁に腰掛け座っています。


「う、うふぅ……えぅぅ……」


 ぐわんぐわんと頭が揺れています。何もしてないよりはマシになるかと思い私は指先で闇魔力を形成しながら気を紛らわそうとしています。


 あまりの気持ち悪さに自分でははっきりと意識出来なかったのですが、闇魔力はぐわんぐわんと弧を描く様に形作られています。


「きもち悪いですぅぅぅぅ」


 頭の中がぐちゃぐちゃかき回されている感じです。生成している闇魔力もそれに呼応する様に、かなり複雑に絡み合う様に形を変えているのですが、私はいまいちはっきりと意識していないです。


 半ば虚ろな意識。気持ち悪くて何も考えたくないものの、何もしていないと揺れが気になり気持ち悪い。なすすべがないとはこの事を言うのでしょう。


「もぅだめぇぇぇ」


 パタン とその場に倒れ込みます。倒れ込んでも荷台がガタガタと揺れ、私の気分が良くなる事はありません。

 この揺れを意識しない為に私はまた闇魔力の生成を始めます。


「うぇぇぇぇ。もぅいゃぁぁぁぁ(涙)」


 子供の様に喚きながらも、闇魔力を生成していました。ぐわんぐわんと回る様に。ぐちゃぐちゃと絡み合う様に。精密に魔力を形成出来ている事に気付かないままに。


「う……うふぅ……ひく……ひっく……すんすん……」


 私の頭の中は もう馬車乗らない この言葉でいっぱいでした。


「もぅ……馬車乗らないもん……うっく……ひっく……ごめん……なさ……い。馬車乗……て……ごめ……なさい……」


 馬車が止まる事はありませんでした。


◇◇◇◇◇◇◇◇



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