闇の聖女のA級冒険者登録
「買い物に行きます!」
私が目を覚ましたのは太陽が昇り、真上から徐々に傾き始めた頃。おはようございます。
目を覚ました私はお風呂でゆっくりと昨日の疲れをとりました。寝る前に入る元気はなかったのです。
ゆっくりと湯船に浸かり。髪を梳かし準備が出来た私は最深部の魔石やら道具の入った袋をもって商店通りに向かいます。
まずはギルドで換金からです。
宿のお姉さんに商店通りとギルドの場所を聞き、お礼を言ってトコトコと宿から歩いて行きます。荷物は宿に置いてあります。今日は買い物と地図で下調べです。もう一泊しますよ? 今から次の町に向かったら昨日の二の舞じゃないですか。あんな思いはこりごりです。
◇◇◇◇◇◇◇◇
換金所のおじいさんは帽子をかぶり、長い耳が横向き……少し下を向いてピンと伸びています。エルフ族か魔族なのでしょう。
換金所で働いている方はギルドに在住しています。複数人で交代をしながら常に換金所には誰かがいてくれるので、何時でも換金出来るのです。
「ほぉ……これはいい魔石じゃな」
換金所のおじいさんはA級魔石を専用の鑑定道具で調べています。
私が持ってきたものはすべてA級の魔石です。その中に珍しい魔石があったのかもしれません。きっと気操師の魔石です。
「なかなか見かけない魔石じゃよ。この不死の魔石」
「それなのっ!?」
おっと。つい驚いて声を上げてしまいました。おじいさんがビクリとしたのは気のせいだと思います。
「そうじゃよ。ほかもA級魔石じゃが、これは特にいい。屈強な冒険者。王国の騎士が欲しがる魔石じゃわい」
そんな死に急ぎ野郎みたいな魔石欲しがる人いるんですね。世界は広いですね。
私としては高く売れるならいいんです。私には縁のない魔石ですから。その魔石で役立てるなら喜んで換金します。役に立たなくても換金しますけど。
「これは換金していいのかい? 個人でやり取りすれば相当の値がつくぞい? 勿論。ギルドでもそれなりの功績値を付けさしてもらうわい」
「あ。はい。換金して構いません。後これも……」
私はおずおずとグールのシャツを袋から取り出します。
見た目がボロボロのシャツなので出すのが恥ずかしいです。もしも価値のない物だったら、こんなシャツは換金できんよと笑われるかもしれません。あぁ、出さなきゃよかったかもしれないです。だって……グールのシャツですよ? 恥ずかしくなってきました。
「どれどれ……」
換金のおじいさんは鑑定を始めます。私は恥ずかしさに真っ赤になって俯いています。別に私が着ていたシャツというわけでは無いのに何故こんなにも恥ずかしいのでしょう。
「こ。これは……!?」
「あ、あの。換金出来なかったらいいんです! あ、あの、あの! ご、ごめんなさい!」
「グールのシャァァァツ!? グゥゥゥルのシャァァァァツ!!?」
ビクゥゥゥ!?
ビクつき距離をとる私に身を乗り出して迫るおじいさん。私はさらに3歩ほど後ろに離れます。人って怖いです。
震える私をみて冷静さを取り戻したのか。おじいさんは備え付けられている椅子に腰を下ろすと すまんすまんと笑ってくれます。
私がこのおじいさんに近付く事はないと思います。変態かと思いました。
先程より明らかに遠くなった距離のまま、おじいさんは私に言葉を投げかけます。
「お嬢さん。よくこれを手に入れたもんじゃ。これはグールキングが出現する迷宮でしかでない一品じゃよ。なるほどのう、それでさっきの魔石だったんじゃな」
そのボロボロで出すのが恥ずかしいシャツはそれなりに高価な物だったんでしょうか? それだと子鬼のパンツはどれぐらいいい物だったんでしょう?
「これも、換金していいのかい? お嬢さんA級冒険者になれると思うよ」
「か、換金していいんですが。別にA級冒険者にならなくても……」
「そういうわけにはいかんよ。A級以上はB級までと違い実力がなきゃ務まらん。功績値が基準を越えれば、勝手にA級冒険者に登録されるんじゃ。メリットはあるぞ? 一般人が入れない城下や、王都にも立入る事が出来る様になるぞい」
というと。ティルノーグにも入る事が出来る様になるという事でしょうか? それならA級に上がっておくに越した事はありません。
「え、えっと。ではお願いします」
「此方こそ感謝じゃわい。いい物をありがとう。最安値だが、いい値段になるわい」
おじいさんは長方形の形をした艶のある板を取り出します。ギルドで情報屋さんをやっていた時に何度か見た事があります。あれは全ギルドに情報を共有し記録する魔道具です。あの板の様な魔道具に冒険者それぞれの功績値冒険者値を記録しているのです。とある魔素材から加工するらしいのですが冒険者ギルドの一部の人しか知らないらしいです。
「レティシア・プリシエラ……と。やはりじゃ。功績値はA級を越えたの。そのまま登録となるが、いいかの?」
「あ。はい。宜しくお願いします」
「よし。これでお嬢さんはA級冒険者じゃ。若いのに大したもんじゃわい」
おじいさんは皺の溝を深めてニヤリと笑ってくれました。私との距離は遠いままですがいいですよね?
「あと換金のお金じゃな。A級魔石2つに珍しいA級魔石。グールのシャツ。最安値での換金となるが……」
ドチャリっ トットット
重量感のありそうな袋と、10枚重ねられた金貨が3つテーブルの上に置かれた木製の器に並べられます。
金貨30枚。大金です。二年はこれだけで暮らせると思います。流石はA級魔石です。
手に取った事もない大金の眩しさに目が眩みます。私に受け取る事が出来るでしょうか?
器の上にのっている重たそうな袋。金貨を入れる袋ではない様ですが、これは何なのでしょう?
「…………? あの……この袋なんですか?」
「何って? 金貨じゃよ? 50枚入りの袋じゃよ? 最安値で悪いのう。二倍の値段でも安いぐらいなんじゃが、ギルドの規定があるんじゃ。すまんのう」
金貨50枚入りの袋……? え? どういう事ですか?
「一応振り分けを言っておくの。A級光の魔石が金貨5枚A級気の魔石が金貨15枚。A級不死の魔石が金貨20枚。グールのシャツが金貨40枚じゃ。A級魔石だと最低が金貨5枚、能力付加系は価値が高い。グールのシャツは金貨100枚でも売れるんじゃが、申し訳ないのう。その分功績値は高いんじゃ、そこに免じて。の。」
「うええぇええぇぇぇええ!!?」←(単純に金貨80枚に驚いてる)
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