闇の聖女の初めてのグランツ
ワイワイガヤガヤ
ガヤガヤガヤワイワイワイ
見てきなにぃちゃぁん!! 掘り出し物だよー!!
この剣!! なんと光るんだよぉ!! どうだい!? ←ペカー☆
美味しいお肉があるよ! 安くしとくよぉ!!
この杖!! なんと光るんだぜぇ!? 見てみなっ! ←ペカー☆
誰か一緒にダンジョン行きませんかー!? これからギルドに向かう人いませんかー!?
この剣と杖!? なんとぉ!! ひっかりまーす↑↑↑!! うぇーい!! ←ペカー☆
なぁ、これからどう? 俺と一緒にナイトフィバーしちゃわないっ? えぇ~♡ もぉ~♡
つい最近採れた魔素材(生命力の宿った魔物の素材)から加工して出来たこの魔道具!! なんとぉ!! ひっかりまーす↗↗ うぇーい↗↗ ←ペカー☆
「うぇぇぇ。絶対私がとった魔素材だぁぁぁ…」
グランツは賑やかな町でした。隣町ですが私はきた事が無かったです。貧困生活にお出かけする余裕はなく。隣町にくる機会はありませんでした。
私の第一印象としては。この町嫌いです。特に光る魔道具の売り方に納得出来ません。どんな売り方をしても売れるとは思いませんが。何故加工して武器を作ったのか問い詰めたいくらいです。
もし私に金銭的な余裕があれば、買い取って目の前で叩き折りたいくらいです。
私は光を出す系の道具が好きじゃないです。理由は聞かないで下さい。
「すん……すん………」
にぎやかなグランツの商店通りをトコトコと歩きます。やたらハイテンションに光る魔道具を目玉商品の様に宣伝する店主に強い視線を向けると、すこし静かになりました。
「うにゅ~? にゅにゅ!」
ローブの内ポケットからするすると体を駆け上がり。泣いている私は心配するかのように肩に乗っかり首筋にふわふわの体を当ててきます。
「うーたん……」
うーたんです。何故かあれから離れずに私の左足を定位置とするかのようにしがみ付いて離さないので、内ポケットに突っ込んでおきました。歩きにくいし邪魔だったんです。体のバランスも悪くなりそうでした。
可愛い所もあるもんです。私はうーたんを撫でながら今日の宿を探します。その後は冒険者ギルドで妖精の森の聞き込みをしなくてはなりません。
場所は情報としては大体知っていますが、それだけで妖精の森に無事辿り着けるとは思っていません。なるべく詳細な情報が欲しい所です。
ギルドの店主に話を聞けばそれなりに情報を貰えると思います。私も一応冒険者登録はしてあります。それにギルドで魔石や魔素材、装飾品等を換金した功績でBランクの登録が出来ました。
ギルドで換金した場合は基本的に相場の最安値で換金をする事になります。自分で商店を開いて売るか自ら商店を開いている人に持ち込んだ方が高く売れるという事になります。
お店側も、ギルドを仲介として通すよりも冒険者から直接取引をした方が仲介料がない分得です。お店に行けばすぐに買い取って貰えますし。
それでも冒険者ギルドで換金する事にメリットもあります。冒険者ギルドで換金した場合最安値で換金となりますが、換金した物のランクによって功績値が貰えます。功績値が一定を超えると冒険者ランクが上がっていく仕組みになっています。
ランクが上がる事により受けられる依頼が増えたり。適正のダンジョンにパーティーが組みやすくなります。
A級以上になろうと思うとB級以下のランクの物をいくら換金しても功績値は増えません。そしてB級を超えるA級以上の道具は基本的にA級以上じゃないと出ません。
要はA級以上は強さも兼ね備えてないとなれませんよ って事です。極稀にすごい珍しくて弱い魔物が極稀にA級以上の道具を落としたりしますが、それでA級に上がったとしても自分が辛いだけなので換金する人はほぼいません。実力がない事はいずればれます。
功績値が増えないなら、お店で直接取引をした方がいいと思う人の事もギルドは考えていました。
功績値は増えないものの、冒険者値というものは増えます。
冒険者ギルドは大きな組織です。何処の町にも冒険者ギルドは存在する程の巨大組織です。冒険者ギルドの店主、又は冒険者ギルドで働く事が出来ればそれはAランクの冒険者に負けない程の収入を叩き出す事が出来ます。危険もないので一生安泰といっていいでしょう。
冒険者値が高い人は冒険者ギルドから雇用の話を頂く事が出来ます。
基本的に冒険者値が高い人からお声が掛かる様です。冒険者ギルドのマスターはほぼ全員が元冒険者、屈強な人が多いのも納得出来ます。
冒険者ギルド側としても、Aランクといかないまでも、強い気操師や魔操師を雇用出来た方が助かる事が多いので持ちつ持たれつと言えます。
冒険者には、荒くれ者もいますから。
私は冒険者ギルドで働く事に惹かれませんが、危険もなく一生安泰というのは素敵な事だと思います。
宿屋が多く立ち並ぶ一画で私はキョロキョロと品定めする様に辺りを見渡します。
銅貨4枚の料金表を掲げる宿を見つけると、迷わずその宿に歩を進めます。
一際目を引く木造の宿屋です。心なしか少し傾いている気がしますが、気にすることはありません。
むしろ銅貨4枚でこれならお値打ちといえます。
私は手馴れた様子で宿の扉を開けます。
え? 普通にお風呂付いてますよ? ちょっと隙間風とかくるぐらいですから。何の問題もありません。
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