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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第一章 闇の聖女 始動?
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しがない鑑定眼の情報屋さんの闇の聖女の物語

 体が水の中にいる様な、ふわふわと浮いている感じがして目を開けます。


 え?


 現実的ではない空間。すぐにここは現実の世界ではないと理解出来ます。妙に頭がすっきりしています。


 ここは、どこでしょう?


 辺りは真っ白です。私の体は浮いているのか、足元には地面はありません。


 パッ


 え?


 一瞬で目に映る光景が変わります。真っ白な空間は現実的な世界へと変わります。木造りの建物。テーブルや椅子が置かれています。


 家の……中?


 きょろきょろと見渡すと、やはり家の中っぽいです。見た事もない部屋です。でも何故か、心地よさを感じます。

 白色で蔦の模様が縁に縫われているカーテン、可愛らしい小物が置かれています。私が好みそうな物です。


 え? 私……?


 部屋と繋がっているテラスに、銀がかった髪の女性が見えます。天気がいいのか日差しが眩しいです。私にしては落ち着いていると言うか、柔らかい雰囲気を纏っていると言うか……。私よりも素敵な女性に見えるので、私じゃないでしょう。


 白い布に包まれた何かを大事そうに抱いています。

 俯いて抱いている何かを見ているので、女性の顔は見えません。優しく微笑んでいるのは分かるんですが。愛しむ様に大事に、大切に何かを抱いているのが分かります。


 赤ちゃん?


 パッ


 ふぇ!?


 光景が変わります。同じ部屋だと思いますが、夕方になりました。

 テラスに繋がる壁際で、男性が椅子に座っています。顔はよく見えません。逆光というわけではないですが、何故でしょう?


 椅子に座る男性に甘える様に椅子の前で座り込み。男性の膝に頭を乗せる銀がかった髪の女性。長い髪が顔を隠しています。

 男性が笑った気がします。優しく女性の頭を撫でています。大事そうに抱いていた赤ん坊の姿は見えません。


 あれ? お腹が大きい?


 パッ


 ふぇぇ!?


 一番最初に目に入ったのは眼前に広がる大きな海です。今私がいる所から海が一望出来ています。


 えっと……丘? ですね。海が見える……小高い丘? かな


 丘の上には先ほどの女性と多分先程の男性が寄り添うように座っています。

 相変わらず女性の銀色の髪は確認出来るのですが、一向に顔は見えません。

 何故か男性は髪色も分かりません。


 ただ、優しい空気を感じます。とても居心地がいいと思えます。


 あ……


 二人が向き合い、唇を合わせます。横向きになった女性の顔は風に靡く銀がかった髪で見えません。

 何となく、自分の唇に指を当ててしまいます。


 パッ


 え?


 ゴオオオオオオォォォォ!!


 今までとは明らかに違う光景です。どこかもわからない場所で銀がかった髪の女性が倒れています。


 ─────ッ!!


 動こうとしても私の体は動きません。

 女性は体を起こそうと腕に力を込めますが、力が入らないのかその場に崩れ落ちます。

 それでも立ち上がろうと懸命に腕を支えにしようとしているのが分かります。


 それを見てニヤついた笑みを浮かべている。光る人の形をした何かがいます。


 光る何かは手の平を女性に向け、魔術を生成しています。手の平に溜まった光の魔力が、大きな球体を生成しました。

 私はなんとか動こうとしますが、空中に浮いている為か体は動いてくれません。必死に腕を伸ばします。


 光る何かはニヤリと不気味に笑い……


 やめてっっ!!


 私の声が届いたのか、光る何かは腕を女性に向けたまま。頭だけ横を向き此方を見ます。


 ニタァ と音が聞こえそうな程不気味に口角を上げ。


 ゆっくりと口を動かしました 



  ガバッ!!


「はぁ!はぁ──ぁ!」


 私はベッドから飛び上がる様に体を起こしました。体がブルブルと震え、自分の体を抱きしめるように体を縮こまらせます。

「なに……いまの……」

 夢なのでしょうけど、何故か夢だとは思えませんでした。あの女性はどうなったのでしょう?

 最後の光景はいったい……?


 光る何かは口元を動かしていただけなのに、なんと言ったかは分かってしまいました。


 私は 何か が口にした言葉を、同じ様にゆっくりと言葉にします。


『そ ん な み ら い は な い 』


 未来が……ない? それは私の未来がという事? それとも世界の未来がという事?


 世界の未来であれば、そんな話は聞いた事があります。


 情報屋さん時代です。そうは言ってもそんなに昔の事じゃないですが。

 私が聞いた使う事がないと思っていた情報は伝説の魔石だけではありません。


 世界の終わりに関わる話を度々聞いた事がありました。


 曰く 世界が2000年より先に進む事はない。

 曰く 世界が2000年前から始まったのには理由がある。

 曰く 世界の境目に世界中の生命力が失われる

 曰く 生き残れるの極わずか。

 曰く 世界中の生き物は エサ なのだと


 確かに世界は2000年前から始まっていますし、今は世界暦1986年。後14年もすれば結果は分かるのでしょうが…………。仮にこの話が真実だとしたら、14年も猶予は無いのかもしれません。噂通り世界が滅び、生き残った人がそこから1年を数え始めているか分かりません。2000年ぴったりに何か起こる確証もありません。逆に時間はもっと長いのかも知れません。


 気にも止めていない情報でしたが、夢での光景を思い出します。

 自分でも気付かないうちに、毛布を握りしめていました。


「そんな未来はない……」


 そんな事を言われては、意味があるのかと思ってしまいます。

 この伝説の話をしていた人達には一つの共通点があります。それは長寿の種族である事。

 エルフ族、天人族、妖精族、長寿の魔族。寿命が長い種族の人が、鑑定をした対価として、こういった情報を教えてくれました。お金下さいって思ってましたけど。


 話を聞きに行った方がいい気がします。


 ここからならそう遠くない位置に、妖精の森があります。夢なら夢でいいですが、話を聞いておいて損はないはずです。


 世界を救おうなんて大それた事は思っていませんよ? 妖精族に話を聞いて、何も無かったら他の種族に話を聞きに行こうなんて思っていません。

 闇の聖女になって初めて鑑定をした時に、付け加えた様に浮かび上がった文字。『光の破壊者』

 夢にいた 何か は光輝いていました。対抗出来るのは 闇の聖女 だけだと。

 

 あれ? じゃぁ夢の中の女性はやっぱり私なのかな?


 光輝いていた 何か が光の破壊者じゃなければ。闇の聖女である必要は無いのでしょうから。私ではないと思いますが、どうも分かりません。


 夢で倒れていた女性の事が頭から離れません。同じ髪色をしていたからでしょうか? それとも女性の心地いい光景を見たからでしょうか。

 もしも、あれが未来だとするならば。私じゃないにしても、幸せそうな二人の邪魔はしてほしくないです。赤ちゃん? もいたから三人ですね。


 情報屋時代その日暮らしをし、闇の聖女になってからは強くなろうと迷宮や塔に潜り。今ようやく私にできる事を見つけた気がします。


 ただの夢で済むのが一番いいです。


 ただの夢で済まないのが最悪です。


 私は早速、明日から旅を始めようと思います。先ずは妖精族の森を目指します。



 闇の聖女としての物語は、ここから始まりました。

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