しがない鑑定眼の情報屋さんのC級塔最上階
精神的に限界です。ここが3階の塔で良かったと心から思います。
3階に上がるとそこに迷路はありませんでした。
3階全てが一つの大きな部屋になっています。
奥に祭壇が見えますが、魔物がいないわけはありません。1階のハーピィを思い出し上を見上げると。
バサッバサッ
ハーピィクィーン
属性 風
特徴 ハーピィ上位種。風魔術が得意。
能力 風魔術に自信があるのか、物理攻撃をあまり使わない。ウィンドカッター ウィンドランス 多様の風魔術を使用する。
備考 ダークウォール!!
鑑定眼の文字に、対象が魔術を放つ前に前方を中心にダークウォールを展開します。
「ダークウォール!」
瞬間。
キキキキィン!
ズオオォォォォ!
空気を刃物で切った様な甲高い音が響きます。前方に展開したダークウォールが風の刃を飲み込み無効化します。ちゃんと出来てる様でよかったです。
大きな羽根に毛皮を纏ったような体、白く長い髪のハーピィクイーンは間を開けずに次の魔術を放ちます。
ドゴオオオオン!
渦巻く竜巻が私を飲み込みます。前方にダークウォールを展開しているものの、それを飲み込む程の大きさに飛ばされない様に足を踏ん張ります。
ダークウォールが展開している前方は上手く魔術を無力化しているらしく、ダークウォールを通して竜巻の中心。穴を確認できました。
「ダークアロー!!」
ダークウォールが消えない様に魔力を維持しながら、ダークウォール越しに対象を狙います。竜巻の中心を通って3本の矢が対象を襲います。
ドドドンッ! ヒュヒュヒュン!!
敵は竜巻の中を通って迫り来る矢を視認すると、竜巻の魔術を解き真下に急降下します。一本の矢が右足に刺さります。
ギリッ!!
歯を食いしばる音が聞こえた気がしますが、考えてる暇はありません。
急降下した敵は速度を保ったままクルクルと横に回転を始めると、見る見る風が集まっていくのが分かります。
自分自身が弾丸になった様に、風を纏いながら一直線に向かってくるのが分かります。
私は杖を強く握りしめ魔力を込めます。ダークウォールが黒い霧に覆われていきます。
「ダークシールド!」
どう考えても物理攻撃なので、闇の壁を切り替えます。使わない物理攻撃を使ってくるという事は、私もそれなりに強敵に見られているのかもしれません。
ドオオオオンッッッッッ!!
ダークシールドと激突すると敵が纏った風の影響もあるのか、凄まじい風が放射線に広がります。軽い衝撃波が発生したのかもしれません。
「んん……」
両手を顔の前で軽く交差させ吹き付ける風から頭と目を守ります。対象を見逃さまいと目は閉じません。
ダークシールドに当たった衝撃でクラクラするのか、頭をブンブンとふりもう一度上空に跳び上がります。
すかさず杖を握った右腕をハーピィクイーンに向けます。
「ダークボール!」
ズオオオオッ!!
大きめのダークボールを放ちます。敵はダークボール目掛けて渦巻く風を生成します。渦巻く風は槍状に形を変え。ダークボールとぶつかり合います。
カッ!!
ドオオオオンッッ!!
黒い光が煌くと、先程のよりも強い衝撃が私を襲います。流石に腕で顔を覆い、衝撃で吹き飛ばされない様に膝を突きました。
一瞬の衝撃が治まると腕を外し。空中に浮いていたハーピィクイーンを確認します。
ダークボールの威力を完全に相殺する事は出来なかったのか、所々体は黒く、羽も軽くもげ、飛んでいるのがやっとな感じがします。
今しかなさそうです。右手で杖を持ちながら、杖の魔石に魔力を込める様に左手を翳します。一度鋭く息を吐きます。
フッ!
「ダークアロー!!」
チャンスを逃す事はありません。私は出来る限りの魔力を込めました。無数の数のダークアローが生成されます。何本生成されたか気付いてませんでした。兎に角全力で撃ちました。
ドヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ────────────ッッッッ!!
「ふえぇぇぇぇぇぇぇ!!??!?!?」
今までの10倍はあるんじゃないかと思える本数でした。放った私が驚きの声を上げた程です。
ハーピィクイーンの姿は中空を覆う黒い矢で良く見えなかったですが、諦めた様に羽は羽搏くのをやめていました。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
ドォンッッッッ!!
しかも全弾命中という徹底振りです 闇の聖女 とんでもなかったです。
無数に刺さったダークアローは黒い光を放ち弾けました。
魔力圧縮のお陰か、魔力をかなり込めたお陰か、ハーピィクイーンは跡形も残りませんでした。
さっきの様に毎回弾けてくれるといいんですが………………あ、やっぱりだめですね。中途半端に弾けても悲惨な状況になりそうなのでやっぱり弾けなくていいです。
私が思い直したところで、光の玉がふよふよと漂ってきました。
胸の前で両手を器にする様に合わせると。光はすっと私に宿ります。
何はともあれ無事でした。私はどうも闇の聖女の力を存分に発揮できていない様です。AA級程度の生命力の質じゃ、本来の力を発揮出来ていないのかもしれません。
そんな事を思いながらトコトコと祭壇に向かいます。
塔の祭壇は少しおしゃれです。ブロックを三段重ね、杖の様な物が五本ほど半円を形作るように刺さっています。モギれば折れそうです。しませんけど。
半円の中には魔石やら装飾品っぽい物がゴロゴロと転がっています。ひょいひょいっと魔石を集めてまとめて鑑定眼でのぞきます。
B級魔石
属性 無
能力 …………光を放つ
効果 分かるよな……?
見なかった事にしましょう。この魔石は初めから無かったんです。
さぁ一回の目の魔石の鑑定を始めましょう! 今日は魔石三つです!
B級魔石
属性 無
能力 …………泣かない?
効果 …………ねぇ泣かない?
泣かないもん……
うぅ…………
今日の魔石は二つです! どんな魔石なんでしょう!? 魔石は色々な種類があります。属性が5属性。無属性も合わせれば6属性です! そうそう同じ魔石ばかり出るもんじゃないです! 杖に填めて魔力を上げる魔石や。自分自身に能力が加わる魔石もあります! 珍しい魔石はランクも高いのでなかなかお目にかかれないですけど! 今日はどんな魔石なのか楽しみです!(若干現実逃避)
B級魔石
属性 無
能力 ハッハッハッハッ☆
効果 ハハッ……ハ…………
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ヨダレ)」
B級魔石
属性 無
能力 光を放つ(半永久)
効果 魔石に生命力を込めれば光を放つ魔石。生命力が無くなれば光を失うが込めればまた光る。任意の方向。光の明るさまで調節可能(ヤケクソ)
「………………おぇぇぇぇぇ←(ショックでなんか出た)」
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