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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第一章 闇の聖女 始動?
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しがない鑑定眼の情報屋さんの南の森卒業

 私はまた南の森に来ています。

 理由は簡単です。C級塔に登る為に防御魔術を試そうと思ったからです。

 もちろん相手を決まっています。


 私に悶絶の苦悩を味わわせたあの魔物です。うら若き乙女に涎を止まらない程垂らさせたあの魔物です。

 許してはおけません。


 すぐあの魔物に出会う事は出来ました。忘れもしません。

 あの青透明な肌。重力で丸が垂れたようなポヨポヨした体。目なのかなんなのか判別出来ない丸く黒い瞳。私の3倍の速さはありそうな速度。恐怖感すら覚える程の神々しい金色の肌。


 混ざりました。しかしこいつもあいつも同じ様なもんです。私に恐怖を植え付けたのに変わりはありません。今度こそ私の鉄壁の防御を見せつけてやるのです。


 ポヨポヨと移動するスライムに恐る恐る近づきます。

 もしもこいつがゴールドスライム並みの速度で動いたらどうしようかと体が強張ります。

 そんな事はないのですが、一度植え付けられた恐怖はそうそう消えるものではありません。トコトコと近づけたあの頃が遠い昔の様です。


 何とか杖の届く位置まで近づき、そ~っと杖で体をツンツンと突きます。


「ご、ごめんなさい」


 体は正直です。怖いんです私。スライム怖いんです。


 スライムが振り向いたのを皮切りに、私は杖を持って目の前に闇魔力を圧縮した闇の壁を作ります。


「ダダダダダークシールドドドドー」


 声が震えるのは仕方ないのです。怖いんです。私だってほんとはこんな事やりたくないんです。

 私は分かり易く圧縮した物理無効化用の闇の壁を ダークシールド 渦巻きの様な魔術無効化用の闇の壁を ダークウォール と名付けました。

 同じ名前だとイメージしにくいと言う事に気付いたんです。昨日。


 ズズズズズズズズッッ!!


 目の前に真っ黒い霧というか、雲に近いかもしれません。入道雲ほどふわふわな感じはしませんが、分厚い綿のような闇が発生します。

 スライムからは私がうっすらとしか見えていないと思います。私の目は猫目なのではっきりとスライムを見る事ができます。

 この場合は猫目は関係ないですが、闇視覚化能力で私には関係ない様です。


 ポヨンポヨンッ!!

 ドン!

 ポヨヨーン


 スライムはダークシールドにぶつかると反動で飛んでいってしまいます。

 闇同化よりも目に見えて安心出来ます。魔力を維持している限り消える事も無さそうです。


 ポヨンポヨヨンッッ!!

 ドコン!

 ポヨヨヨーン


 スライムは何度もダークシールドにぶつかっては弾かれてコロコロと地面を転がっています。

 何故でしょう。何故かとても悪い事をしている気になってきます。

 もうやめて、この壁は壊せないの、もうぶつからないで!っと声を出しそうになるほどです。


 ポヨヨン! ドン! ポヨポヨ……

 ポヨヨンッ! ドコン! ポヨポヨ……

 ポヨヨヨンッッ! ドッコン! ポヨポヨ……


「もう……やめてください……」


 私はダークシールドを消しました。見てられなかったです。コロコロと転がるスライムに近付き、両膝を突いてスライムを覗き込みます。


「ごめんね……ひどい事をしてしまいました。大丈夫ですか?」


 スライムに言葉が分かるとは思わなかったですが、声を掛けずにはいられませんでした。私は何故、こんなスライムを怖がっていたのでしょう。自分が恥ずかしくなります。

 スライムはコロコロ転がって横向きの体勢をポヨポヨ戻しています。ポヨンっと此方を向くと、黒い瞳が私を見ている様な気がします。


 ポヨヨンッ!!

 ドコンッ!


「げふぅ!」


 奴はまたしても私の鳩尾に突き刺さりました。


「うぐぅ……おぱぁぁぁ……」


 デジャヴです。前にもこんな事があった様な気がします。こうやって森で蹲る光景は見た事があります。

 涎が止まらないやつです。


 スライムは満足そうにポヨポヨと森の奥へ消えて行きます。乙女心を利用した策士でした。私の心が無理難題に挑むスライムを可哀想と思った時点で、勝敗は決していたんだと思います。


 奴はそうやって私がダークシールドを解くのを虎視眈々と狙い澄ましていたのです。そして私の心にスキが生まれた瞬間。 ガブリ ですよ。

 まんまとやられました。正確には ポヨヨンッ!! でしたけどね。


 よしとします。ダークシールドの効果は試せました。魔力を強く込めればC級でも使えると思います。闇同化よりは信頼性は高いと思います。


 蹲り動けない私は思います。防御出来ても出来なくても結局スライムにはやられてしまうと。もうスライムで魔術を試すのはやめようと思います。

 ある意味私にとっては一番危険なのではないでしょうか?


 私はこの森を卒業しようと思います。お世話になりました。

 

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