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異世界探偵

巨大プリン事件

作者: にゃきもん

 巨大プリンと言われてどれ程の大きさを想像するだろうか。パケツプリン?あるいはエベレスト?まさかの宇宙規模?


 流石に宇宙規模は無いだろうが、ここは異世界。見たこともない大きなプリンに胸を躍らせ錬卵術士の住む丘へと向かった。


 昨晩、宿屋の主人がお金がないワタシを快く(こころよく)馬小屋に泊めてくれた上に、巨大プリンの情報を教えてくれた。タダで巨大プリンを振舞っているという噂なので、お金のないワタシにはうってつけだ。


 同じ屋根の下で一晩をともに過ごした馬のアーサーに別れを告げ、朝一番に馬小屋を出た。


 錬卵術士の住む丘には昼頃に着いた。巨大プリンは、巨大だが一般的なプリンの形ではなく、タワーの様な形で六百三十四メートルらしい。

 錬卵術士だからこそできる芸当とのことだ。


 空まで届くこの巨大なスカイプリン。食べていいかと問うとダメだと言われた。駄々をこねるか真剣に悩んでいると、今朝方プリンの頂点のカラメルソース部分に頭から刺さっている人が発見されたらしい。


 プリンに刺さっていた人は救出されベットで寝ていたが、ワタシが到着した頃に亡くなってしまったそうだ。流石にワタシもそんなプリンを食べようとは考えない。


 ワタシは自分が探偵である事を告げ、何故プリンに刺さっていたのか、この事件を解決することを約束し、報酬にプリンを要求した。カラメルソース増し増しで。


 錬卵術士に話を聞き、事件を整理してみた。プリンに人が刺さっていた、そして亡くなった。終わり。なんの手がかりもない。だが、しかし、ワタシは探偵。亡くなった者の胸ポケットに紙切れが入っていた事を見逃さなかった。


 紙切れを確認すると、どうやら遺書のようだ。家族への感謝の言葉と謝罪の言葉、それと自殺しますとだけ書かれていた。普通はこの遺書を見たなら自殺だと断定するだろう。


 ワタシは違う。ワタシには分かる。これは自殺ではなく、殺人だ。恐らくこの遺書は何らかの魔法によって偽造されたものだろう。プリンに刺さっていた人は両腕が骨折しているようで、包帯を巻かれていた。


 両腕が折れていては自ら(みずから)文字を書くのは勿論、魔法で文字を書くこともできない。以前から遺書を残していたなら話は別だが、腕が折れたのでという一文がある。これは腕が折れてから書かれたものだ。つまり別の誰かが書いた事になる。


 真犯人まで辿り着く事は不可能だが、分かった事を魔法警察へ連絡し錬卵術士に報酬のプリンを要求した。


「錬卵術の真髄、とくとご覧あれ」


 玉子や牛乳を始めとする食材が跳ねるように弧を描き宙で一つに混ざり合い、弾ける。

 瞬間、部屋中を花びらが舞っているかと錯覚する程の無数のプリンが踊る。

 再び宙で一つに混ざり合うと大きな一つのプリンとなった。


 大きなプリンは錬卵術士が手に持つ皿へとゆっくり落ちてくる。後はカラメルソースだけだ。カラメルソースはどの様に作るのか楽しみにしていると、錬卵術士は大きく息を吸った。


 刹那、口から大量のカラメルソースを吐き出した。ワタシはもうこの世界ではプリンを食べることが出来ないのかもしれない。全てのプリンがこの製法でない事を祈り、急用を思い出したと言い残し錬卵術士の住む丘を後にした。


 後日の話だが、口に棒切れを加えて魔法を使っているのを目撃した。自殺だったかもしれない。今となっては真相は魔法警察の書類の中だ。


 恐らく錬卵術士は杖を使わないのでこの事を知らなかったのだろう。それにしてもワタシに厳しい世の中だ。推理が当たっていた可能性はゼロではないが、十中八九外れているのだろう。


 探偵がいつも真相を解決するのはフィクションの中だけだ。真相を解決するどころか真相も分からないままの方が圧倒的に多い。


 そんな事を考えながら街を歩いていると、草むらから猫の尾がはみ出しているのを見つけた。今請け負っている迷子の猫探しの猫かもしれない。草むらに入ってみると、ビンゴだ。

 胸にあるドクロの模様が情報と一致している。


「ギャオリュャーース!!」


 ……ただ一つの問題はとんでもない大きさの猫の怪物だったという事だ。聞いていない。今すぐ逃げたい。というかこんな怪物を飼っているんだろうか、狩っていると間違えて依頼を受けたかもしれない。


 ここは異世界。探偵が勇者の真似事をしなければいけない時もあるのだろう。

 その辺に生えてた猫じゃらしを片手に戦ってみることにした。

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