唐突に迷宮攻略(リベンジ)
いつの間にか寝てしまっていた俺は昼頃に目を覚ました。
何故か部屋に遊びに来ていたカリンの遊び相手をさせられ、解放された頃には既に夕方。
また夜に戻ることになりそうだと思いつつ、ギルドで昨日と同じ受付から入門証をもらい、迷宮の中に入っていく。
昨日よりも更に感覚を研ぎ澄ませ、先に進む。心臓の音もやけにうるさかった。
自分が死ぬ可能性を直視した場所へ自ら進んでいくんだから、当然といえば当然だが。
「ん……?」
ムカデと戦った小部屋までもう少しといったところで、人の声が聞こえた。
迷宮は不思議の塊で、最初にパーティーとして一緒に入らなければ、中で他のやつに会うことはないと聞いたのだが、例外もあるのだろうか。
「きゃぁぁあー! 虫魔! 虫魔きらいぃ!」
よく聞くと、女の声だ。少しずつ近づいてきているように感じる。
というかこれは、
「きゃぁぁぁぁあ! うわぁっ」
「ぶつかるっ」
正面から走ってきた女に突き飛ばされる形で、俺は床に強かに背中をうちつけた。
「ぐっ」
その衝撃に一瞬息がとまる。
「だ、誰!?」
それはこっちの台詞だ! と怒鳴ってやりたかったが、それどころじゃなかった。
「っ、はぁ……はぁっ」
「あ、あぁ! すいません!すいません! 大丈夫ですか!」
今更ながら俺の惨状に気付いたらしい。暗いから無理もない。仕方のないことだ。
女が駆け寄ってくる。俺の横に転がっている松明の火に照らされて、すこし泣きそうな表情をしているのが見えた。
こいつからしたら、虫に追っかけられ、得体の知れない男にぶつかってしまい、と二重苦だろう。
って、こいつは虫に追っかけられてたんだよな?
「あ、あの~、本当にすみません、大丈夫ですか?」
返事をしなかったからか、さらに泣きそうな表情で問いかけてくる。
しかし、俺はそれどころではなかった。
女の背後に忍び寄る影に気づいてしまったから。
あれは……ムカデ、じゃない!
「どけ!」
「す、すいません! 怒ってますよね! 許してください!」
うるさい女を半ば突き飛ばして、俺は敵前へと飛び出る。
対面した敵は迷宮の闇に溶け込むかのような黒い甲殻をもち、かさかさと動いていた。生命力のありそうな見た目をしている。
「巨大ゴキブリかよ……!」
この迷宮はこんなんばっかか!
俺も虫は嫌いだが、そんなことは言ってられない。
「おい、そこの女。そこで騒がれると邪魔だから、さっさと逃げろ!」
「え、えっ!?」
女は状況が把握できてないのかすっとんきょうな声をあげた。
あぁ、もう、めんどうくさい。
俺は思考からこの女のことをカットして、敵に挑むことにした。
全ては無事にこいつを倒してからだ。
俺は剣を両手で構えた。小部屋ならいざ知らず、狭き通路での戦いは避ける空間はないが、敵を見失いにくい。
転がっている松明の火は狭い通路をそれなりに明るくしていた。
戦法は相変わらずの串刺し戦法である。
黒い悪魔が突進してくるタイミングにあわせ、頭をつぶすように剣を突き立てる。
「死ね!」
上手く剣が突き刺さった。ムカデの時のように体を分離することもなく、しばらく足をぴくぴくと動かしてはいたが、やがて絶命した。
光の粒子となって、迷宮に消えていく。
「意外と呆気なかったな」
あれだけ早く動く虫に正確に攻撃できたのは運が良かったのだろう。
ゼネラルマナも手に入ったことだろうし、結果オーライだ。
「す、すみませんでした、ぶつかって……その魔物まで連れてきてしまって……」
俺が戦っているあいだに状況の確認は出来たようだ。
俺は勝利の高揚感からか、苛立ちをなくしていた。
「もう気にしなくていい、それより迷宮で他の探索者と会うなんて妙だし、一度出たいんだが」
「はい……。私も先には進めませんし……」
「そうか、なら決まりだな。一旦戻ろう」
頷く女。歩き出すと後ろについてきているようだ。
気弱そうな探索者は珍しいしそれなりに話は聴けるかもしれない。
しかし、まずはここから出ないと。
危険な迷宮でのんびりお話できるほど俺は強くないからな。
【クエスト】
・はじめてのパーティー
→仲間と迷宮を攻略しましょう
・○○との遭遇
→達成条件開示なし(※危険なクエストです。死を覚悟してください)
以上、ふたつのクエストを今回の探索で達成しました。
魂力を3000獲得しました。
10000GMを獲得しました。
あなたの位階が5上昇しました。
クエスト及びログの閲覧は、あなたには許可されていません。
あなたへの報告は失敗しました。