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ただ普通の迷宮探索  作者: 寒ブリア
4/10

唐突に看板娘になつかれる?








「あら、お帰り。あんた無事だったのね」



「あぁ、まあ、なんとかな」



宿屋のおばさんに相槌をうちながら、そのまま二階の階段に足をかける。



「あぁそうだ。娘が随分と心配しててね。良かったら顔を出してやってくれないかい」



2階の一番奥の部屋にいるからさ、と付け加えて、視線を外したおばさんに「分かった」と頷く。



しかし、このおばさん、無用心すぎやしないか。俺が言うのもなんだが、粗野な探索者を一人娘のとこに案内すんなよな。



ギシギシと音のする階段を登っていく。



奥の部屋なんて行かずに自分の部屋に入ろう。そう思っていたが、娘さんは階段の頂点で待ち構えていた。



「なんだ、まだ起きてるのか。早く寝ろよ」



声をかけるが、



「レイ兄ちゃん! 良かった!」



俺の言葉はお構い無しで、ひしっと抱きついてくる。



因みに娘さんの年齢は10歳。名前はカレン。ショートの黒い髪がばっちり可愛い少女である。



すこし我が妹に似ているところもあり、贔屓目になっているかもしれない。



ただそれがゆえにあまり顔を会わせたくない少女でもあった。



「おいおい、カレン? どうした?」



肩に手をおいて、引き離そうとするが、強く掴まれていて離せない。



それどころか、顔のあたっている腹のあたりがじんわりと生暖かく感じるような……。



まさか……。



「泣いてるのか?」



頭をぽんぽんとしてやってから、顔を上げさせる。その目は赤く、濡れていた。



「ぶじで……ぶじでよかったよぉ……」



また泣き出すカレンに俺は困惑するだけだった。



俺、そんなに好かれるようなことしたっけ?



まだ出会って1日……くらいだ。特別なのことは、まあ、唯一所持していた飴をあげたことくらいか。



飴で懐柔されたのかもな。



親父さんもいないらしいし、色々と寂しい子なんだろう。



「ったく、ほら、部屋まで連れてってやるから」



カレンを抱き上げ、だっこしながら、背中をさすってやる。



今も昔も、子供は嫌いじゃない。



でも、今は子供は苦手だった。



どんな行動をとるか、どんな気持ちになるか、俺は同じ目線でそれを考えることができない。



「ついたぞ」



カリンの部屋。やけに静かなこいつをベッドに下ろしてやると、



「……なんだ、寝てるのか」



はあ、やっぱり子供はわからん。



布団をかぶせてから、俺は静かに部屋を出た。



自分の借りた部屋につき、ふぅ、と一息つく。



妙に悲しい気分になっていた。



「この宿にしたの失敗だったかもな」



とはいっても、金はないし、仕方ない……な。

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