唐突に敵と遭遇
松明の光がすこし開けた空間を照らした。
今までは狭い通路だったが、小部屋のような場所に着いた。と、同時に俺の視界に何かの影がちらついた。
迷宮の静寂に包まれた闇のなかで、その影はがさがさと音をたてた。
間違いない何かがいる。
おそらく魔物、敵だ!
息がつまる。心臓がばくばくと脈打って、首に血液を送り込み、頭ががんがんと痛む。
耳も血液の音が聞こえるばかりで、動く影の音を聞き取れない。
どこだ、どこにいる?
自分の左手の剣を強く握って辺りを見回す。
がさがさとまた音が聞こえた。これは間違いなく左からだ。
そちらに目をむけると、暗闇に隠れて近づく巨大なムカデの姿が見えた。
「っ……」
叫びそうになるのをギリギリでこらえた。
元々虫嫌いな俺は、既に腰が引けていた。意識しないうちに、剣を握るちからも弱くなっていた。
くそっ! なんでいきなり虫なんだよ!
自分よりも低い位置から、がさがさと音をたて、何本もある足で、こちらに近づいてくるその姿は俺の恐怖と、嫌悪感を煽った。
落ち着け、冷静になれ……!
相手は幸いそこまではやくない。ここまで、でかいのは気色悪いが逆に言えば的はでかい!
こちらから先手を打たなければあの気味の悪いムカデに襲われることになるんだなぞ! 冗談じゃない!
やるしかない! 俺はひたすらに自己暗示をかけ、ムカデの動向をつぶさに目で追った。
そして、そいつが俺の近くに迫ってきた瞬間、俺は松明を投げ捨て、剣先を下に向け両手で強く握りしめムカデに飛び掛かった。
「ぐっ!」
ムカデの胴体に剣が突き刺さる。
よし! とすこし気が緩んだ矢先、ムカデの胴体がちぎれた。
縫い合わされた下半身を置き去りに、上半身、そして、鋭い齶肢がこちらに迫る。
咬まれる――!
俺には最早冷静な判断などなく、剣を反射的に手放して、前へ転がっていた。
「はぁっ……はぁっ……」
荒い息を吐く。なんとかかわせた。
しかし、剣を置き去りにしてきてしまった。
未だに蠢くムカデの下半身を床に縫い止めている剣の近くでムカデが鋭い齶肢をかみ合わせているのが見える。
武器を取らせない気か!
多少なり知能があるのか、それとも偶然の産物かは分からないが、ムカデの立ち位置が俺にとって最悪であることは間違いない。
逃げようにも来た道はムカデのさきだ。
ここから逃げるなら先に進むしかないが、武器を捨てていくのはあまりにも無謀だろう。
くそっ、ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!
俺はこんなムカデになめられて、こんなところで終わるのか?
そんな終わりかたは認められるはずがない!
考えるんだ、打破する方法を。
幸いムカデは剣の横から動いては来ない。今がチャンスだ。
更に幸いなことに、俺が投げ出した松明はこちら側に灯をともしたまま落ちていた。
俺はムカデを警戒しながらリュックから松明を取り出した。
そして落ちている松明なら火をうつすとムカデに投げつけた。
ムカデは機敏な動きで、松明をかわしたが、大きく後退した。
火を恐れているようにも見える。
俺は火だねとした最初の松明を拾い上げると、火の位置を下に向け、ムカデに、にじりよった。
あまり急いで近よって反撃されてはたまらない。
ムカデがジリジリと後退していく。
俺は剣を回収した。剣を抜き取ると、ムカデの下半身が光となってきえた。
俺はその事に、疑問を抱く余裕もなく、一目散に、もと来た道を逃げ帰ったのだった。
【クエスト】
・はじめての迷宮
→迷宮に入ってみてください。
・はじめての敵
→敵と戦ってみてください。
以上、ふたつのクエストを今回の探索で達成しました。
魂力を30獲得しました。
300GMを獲得しました。
あなたの位階が1上昇しました。
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