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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第4章 【色欲】悪魔アスモデウス討伐編

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5  いざ、マーデルへ

『潮騒の家』のメイドさん、サーナさんがパンが詰まった袋を腕に立っていた。

 驚いた表情で、眠そうな目を見開いている。


「どうして、トーヤが……? この人達、何……?」


 サーナさんはアマンダさんとルーカスさんの髪を見て呟く。


「リューズ。どうして、リューズの方がここへ……?」


「私はアマンダ・リューズ。こっちは弟のルーカスよ。何故私達がこの街に来ているのかは、まだ言えない……。ねぇメイドさん、マリーナへの船はどこから出ているか、知らないかしら? 急いでいるの」


 切迫した様子のアマンダさんに、サーナさんは西の方向を指差し、「ついてきてください」と言った。

 ボサボサの茶髪を揺らし、駆け足で船着き場に向かう。

 僕らも立ち上がって後を追った。吐き気は若干残っていたけど、もう気にしてられない。我慢して走る。


 幾つもの大きさの船の横を通り、見付けたのは巨大な帆船。

 どうやら、これがマーデル国へ向かう船らしい。


「大きいな。こんなの始めて見たぞ」


「ええ。素晴らしいわね」


 その帆船は全長120メートル、幅は20メートル程で、僕がこれまで見た中でも一番大きい。

 後で知った事だけど、この船は世界で二番目に大きな船らしい。

 

「これに乗せて貰えれば、マーデル王国に行けると思う……」


 港に下ろされたタラップから、船員が荷物を出し入れしている。

 アマンダさんは船員さんに声をかけた。


「すみません、この船に乗せてもらえないかしら?」


 やはり、この船員もアマンダさんの白い髪を見て嫌そうな顔をした。

 首を横に振って断る。


「仕事中だ、邪魔をするな」


「お金なら幾らでも出せるわ。私はリューズ家の人間よ」


 リューズと聞き、船員の表情が変わる。苦い顔をして、渋々了承した。


「わかった、船長に話をつけてみる」


「ありがとう、船員さん!」


 船員さんは荷物を持って船の中へ戻っていった。アマンダさんがこちらに微笑みかけ、「オッケーよ」と伝える。


「この船だと、どのくらいの時間でマーデルに着くのですかね?」


「距離を考えると、一、二日はかかりそうだ。それまで王女が無事でいてくれたらいいが」


 アリスが尋ね、ルーカスさんが返答する。

 今こうしている間にも、王女の身に危険が迫っているかもしれない。もたもたしている暇などなかった。


 さっきの船員さんがまた船から出てきて、僕たちに吐き捨てるように言った。


「船長はお前たちを船に乗せることを許可した。揉め事を起こさないこと、金貨50枚を払うことを条件としてな」


 た、高っ……。船に乗るだけでこんなに取られるのか。

 そんな大金を払えと言われても、アマンダさんはにこやかに金貨の袋を懐から出して、船員に押し付ける。


「これでいいかしら? 金はまだまだ持っているけど……」


 船員はタジタジと渡された袋を見て、大急ぎでその袋を抱え走り戻った。


「アハハ、血相変えて飛んでいっちゃったわ」


 アマンダさんが人目も憚らず口を開けて笑う。

 改めて、この人達が凄いお金持ちなんだということを認識させられた。


「流石、リューズ……」


 サーナさんは呆然と金の袋の行方を見やる。

 結局、あのお金は商会の手でリューズ家に戻ってくるに違いないだろう。


「さあ、乗り込みましょうか」


 アマンダさんを筆頭に、タラップを上って船の中へ。

 サーナさんとはここでお別れだ。


「じゃあね、トーヤ」


「うん。やること終えたら、また戻ってくるからね」


 サーナさんが手を振ってきて、僕も振り返す。

 目を細めるサーナさんに見送られ、僕らは出発した。


 船の帆が立ち上がり、風を受けて少しずつ進み出す。


 いざ、マーデルへ。王女様を救うため、僕らの決死行が始まるのであった。

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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