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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第3章  神殿テュール攻略編

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17 【グングニル】

 白い部屋の中で始まった戦闘。

『組織』の魔導士レオは、僕に杖を向けて魔法の呪文を高らかに唱える。


「『炎熱斬刃(イグニス・アズキュー)』!」


 レオの杖先から吹き出す炎が剣の刃のように形を成し、僕へ飛んできた。

 僕は炎を【ジャックナイフ】で弾く。


 炎の攻撃は僕の剣には効かない!


 僕は強烈な熱を放つ【ジャックナイフ】を構え、相手との間合いを詰めていった。


「ハハッ、俺に攻撃が当てられるかな?」


 僕はナイフを突き出す。

 だが、それは防衛魔法(ディフューズ)によって簡単に防がれてしまった。


「強力な魔導士の防衛魔法(ディフューズ)は、どんな物理攻撃でも通しはしない! お前の魔剣(まけん)は俺の防御を崩すことは決して出来ないんだよ!」


 レオは楽しそうに笑っている。

 戦闘中なのに、どうしてそんな顔が出来るんだ?

 少し苛立つ僕に、レオは囁いた。


「その顔だよ。『英雄の器』とやらでも、そんな顔をする……俺はそれを見るのが何より大好きなんだ」


 本能的に後ろへ飛び退く。

 その瞬間、レオの杖から雷魔法が放たれていた。

 青白い電流が空気中を走り、すんでのところで僕はそれを避ける。


「惜しかったねー、レオ!」


「茶化すな、キルノ」


 ルーカスさん達を一人で相手取って圧倒している黒髪の少年、キルノが(はや)すように言った。

 ルーカスさん達はその隙を狙って攻めに出たが、キルノの速さには敵わない。


「遅いよ」


 キルノは杖を振り抜き、雷魔法を一閃。

 ルーカスさんとベアトリスさん、モアさんを再起不能に追い込んでしまう。


 なんて強さだ……! これじゃ、【神器】を使っても倒せないかもしれない。

【神器】には溜めが要る。攻撃を当てる前に、やられてしまう……!


「僕も君の相手をするよ! 二対一の方が、(たぎ)るよね!」


 キルノがにっこり笑みを浮かべ、レオに加勢してきた。

 

雷魔法(トニトリス!」


 避ける間もなく、キルノの魔法が僕を吹き飛ばした。

 強烈な電流が体を流れ、手足を焼き焦がし、痺れさせる。

 僕は床に膝を突き、絶え絶えになった意識の中、二人の魔導士を見上げた。


「あれれ? 倒し損ねちゃったかな? まあいいや、レオ、止め刺しなよ」


 まだ、倒れる訳にはいかないのに……。

 エルはまだ戦っている。彼女を置いて、僕が倒れてしまうことなんて許されないし、彼女が許さない。


 僕は戦う。組織の魔道士なんかに負けるものか!


「フン、立ち上がったか。【神器】の加護か? あるいは……」


「面白いねー、君! 僕の雷魔法(トニトリスを受けても倒れなかったのは君が初めてだよ!」


 お前達が笑ってられるのも、もう終わりだ。

【神器】の力をもっと引き出せれば、もっと素早く力を放つことが出来れば……。

 あいつの防衛魔法(ディフューズ)だって、きっと破れる。

 

 エルが一瞬僕の方を見た。

 彼女は桃色の髪の女魔導士の攻撃を懸命に防ぎながらも、僕のことを想ってくれている。

 僕が、彼女を想ったように。

 

「『光線(ルミナ・ラディウス)』!」

 

 エルが光魔法を桃髪の魔導士に浴びせかける。

 桃髪の少女は、すかさず防衛魔法(ディフューズ)でそれを防いだ。

 桃髪の少女に一瞬の隙を作らせると、エルは僕に向かって叫ぶ。


「トーヤくん、ぶちかましてやれ! 相手側がいきなり襲いかかって来たんだ、やり返しても何も問題はないさ!」


「こいつ……何を言っているの!?」

 

 桃色の髪の少女が、水魔法をエルにぶつけて声を上げる。

 水の塊を体に受けてもエルは屈しない。

 ここで負けたら、全てが終わってしまうから。

 



 僕が呟くのと、二人の魔導士が呪文を唱えるのと、ほぼ同時だった。


「神オーディン。僕に力を、勝利を与えてくださいッ!」


「『氷槍(グレイス・ハスタ』!」


「『雷魔法(トニトリス』!」


 僕は【神器】を抜き、想いを込めてぐっとその柄を握る。

 ここまで共に戦った仲間のために! 

 神様、力を貸してください!!


 槍のように尖る氷と、青白い雷が弾丸のように撃ち出される。

 僕は【グラム】を振り抜く。

 腕に走る、ドクンドクンという脈動。

 体に、力が流れ込んで来る!

 エルは、僕の名を声の限りに叫んだ。




「いけえええええッッ!! トーヤくん!!」




 振り抜いたそれは、もはや剣の形をとっていなかった。

 大剣よりも更にリーチが長い、『長槍』。

 

『神の槍』は、迫る魔法の攻撃を『打ち消した』。

 レオとキルノの目が大きく見開かれる。

 桃色の髪の少女も、動きを止めて僕を見ていた。

 

 振り抜いた勢いのまま、長槍は二人の魔導士を斬り飛ばす。

 防衛魔法(ディフューズさえ粉々に破壊するその一撃を目前にして、桃色の髪の少女は腰を抜かした。

 エルもそんな魔道士の様子は目に入っておらず、ただ茫然(ぼうぜん)としていた。


「その槍は……【グングニル】」

 

 エルは『神の槍』の真名(まなを、小さく呟いた。

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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