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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第3章  神殿テュール攻略編

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5 『魔導書』の主

 五匹のゴブリンを一気にぶった斬った僕は、少し息を切らしながら剣を杖代わりにして立っていた。


「もう、トーヤくん! 力は温存しておく筈だっただろう?」


 エルにお叱りを受ける。……つい、体が前に出てしまった。


「しかし、一気にモンスターを五匹も倒すとは……中々やるな、トーヤくん」


「流石です、トーヤさん!」 


 ルーカスさんとシアンは、僕の【神器】(さば)きに感心していた。


 これまで、僕は【神器】の魔力を殆ど引き出すことができなかった。しかし、あるものが僕を変えた。

 それは、ノエルさんからの『プレゼント』、魔導書(グリモア)だった。

 魔導書を読んでからの僕の体には、これまでとは全く違う、魔力(マナ)が溢れ出していた。


「『魔導書(グリモア)』が僕の力を引き出してくれたんだよ。僕は別に何も……」 


* * *


 数日前、ノエルさんに『魔導書(グリモア)』を貰った後、僕は早速それを読んでみた。

 本を開き中に目を通すと、僕には読めない不思議な文字が羅列されていた。

 すぐに読むのを諦めた僕が黙って本を閉じようとすると、信じがたいことにその本が語りかけてきたのだ。


『貴方の願いは、何?』


 僕は驚いて本を取り落とした。

 本のページがパラパラと勝手にめくれ、あるページで止まった。そのページからは光のようなものがほとばしり、僕はそこに引き込まれた。


「な、何!?」


『私は魔導書(グリモア)の主。少年、貴方の願いは何かしら?』


 女の人の包み込むような優しい声。僕は『魔導書(グリモア)の主』の問いに答えた。


「僕は、強くなりたいです」


『そう……貴方ならそう言うと思ったわ。私が貴方の力、引き出してあげる』


『貴方ならそう言うと思った』? この(ひと)、僕のこと知ってるのか?


『どうなの? 私なら、貴方の願いを叶えられるわ』


 僕は一瞬躊躇したが、誘惑には勝てなかった。

 力が欲しい。僕はその一心で『魔導書(グリモア)の主』に頼んだ。


「お、お願いします! 僕は、力が欲しいんです!」


『うふふ……貪欲なのね。いいわ、やってあげる。私に全てを委ねなさい……」



 

 目を覚ました時、開かれていた『魔導書(グリモア)』は閉じられていた。

 僕は妙に冴えていた目で自分の胸を見下ろす。

 心臓のあたりから、力がみなぎってくる。そんな感じがした。


* * *


「君の体内の魔力(マナ)は何故かはわからないけど、今までセーブがかかっていた。だけど魔導書(グリモア)がそのセーブを解いて、君は本来持っていた力を発揮したんだ」


 エルが言った。僕は【グラム】を鞘にしまい、頷く。

 父さんと母さんから受け継いだ力。僕はそれを解放した。【神器】を使うことも以前ほど苦ではなくなっている。


「さあ、先へ進もう!」


 暗い洞窟の中、僕は明るく言った。

 僕らは進み出す。その足取りはさっきより早かった。

 僕がモンスターを倒して、皆の士気が上がったのかも。


「トーヤ、次はあたしらが戦うよ」


「私も戦います!」


 ベアトリスさんが僕の肩をバンと叩き、シアンが拳を強く握り締める。


「俺も、先陣切って戦わないとな。トーヤくんには負けていられないよ」


 ルーカスさんが腰の【カタナ】に触れる。彼の【カタナ】は、静かに戦いの相手を待っているように見えた。


 と、その時。洞窟の中に誰かの声が響き渡った。いや、僕らの頭の中に声が流れ込んでいるようだ。


『ようこそ、俺の【神殿】へ。俺の名はテュール。この【神殿】を支配する神だ!』


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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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