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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第3章  神殿テュール攻略編

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1  雪の馬車の旅

 僕たちを乗せた馬車は、ガタゴトと揺れながら進み出した。この馬車は雪の上でも走れる特別な品種の馬が引いているという。

 ストルムの市壁の北門から出る僕たちの馬車は、スレイプニルも引いてくれているので普通の馬車より速度は速い。

 街を出る直前、白い馬の豪華な馬車が幾つも王宮へ入っていくのが見えた。


「さっきの人達、何なんだろう」


「マーデル王国の王族達だ。何でも、今日スウェルダとマーデル両王家で会談が行われるらしい」


 僕が訊ねるとルーカスさんが教えてくれた。


「マーデル王国は、スウェルダと海を挟んで南の隣国です。過去にスウェルダと対立した歴史もありますが、現在は友好的な関係を築いています」


 モアさんが解説する。僕は感心して聞いていた。本当に、モアさんは物知りだ。いつも僕に色々な事を教えてくれる。


「お勉強になります」


 シアンはモアさんが言った事を繰り返し言って覚えようとしている。

 シアンたちは奴隷であったため、文字の読み書きが出来なかった。今はモアさんたちに少しずつ教えて貰って簡単な文字を読むことが出来るようになったが、まだ書くことは難しい。


「私も早く文字を覚えて、もっとお勉強できるようになりたいです」


 シアンは呟く。黒い大きな目は、後ろの市壁を見つめていた。


「いつか、お金がたまったらストルムの学院で一緒に勉強できたらいいね」


 僕が言うと、シアンはこくりと頷いた。


「ルーカスさんは普段あの学院で勉強してるんですよね? 学院ってどんな感じなんですか?」


「うーん、そうだなぁ。俺はいつも、学院の研究室に閉じこもって実験をやってるよ。今は、微生物について研究してるんだ」


 僕たちは聞き慣れない単語に、首をかしげた。


「微生物?」


「微生物っていうのは、俺たちの目には見えないごく小さな生き物たちの事さ。新しく開発された顕微鏡という道具を使うと、見ることができる」


 僕にはさっぱりわからなかったが、エルはこくこくと頷きながら聞いていた。


「他には、何をやっているんですか?」


 エルが後ろの席から前に身を乗り出し、ルーカスさんに訊く。


「他は、植物から薬を作る研究とかかな。あれは中途半端にやめちゃったんだけどな」


「あ、ルーカスさん。ルーカスさんは研究の合間に武芸もやってるいるのですよね。それって、やっぱり凄いですよ」


 僕はルーカスさんに尊敬の気持ちを持っていた。ルーカスさんは照れ臭そうに頭を掻き、笑った。


「ははは、そうかな。でもトーヤくんたちも、仕事の傍ら剣の訓練をしたり、勉強したり……俺よりもハードな生活を送ってると思うよ」


「いえいえ、そんなことはないですよ……」




 馬車は郊外の雪原をどんどん進んで行く。

 辺り一面真っ白な雪原は、音もなく静かだった。トナカイが雪を掘り返して(コケ)を食べているのが見える。

 外は、雪が降りだしていた。

 馬車の中は暖められていたが、運転席の方から冷たい風が僅かに入り込んでくるため少々肌寒い。上着を何枚着込んでも足りないくらいだ。

 寒がりのエルは何重にも重ねて上着を着ていた。重ね着しているその姿は、東の国『ソトロア王国』の『マトリョーシカ人形』に見えなくもない。


「寒いのは苦手だよ……ああ、早く街に着かないかな」


 エルはブツブツと手を擦りながら呟いていた。


 僕らの目的地は【神殿】テュールがあると言われている『暗黒洞窟』だが、その前に『レータサンド』という村に寄る予定でいた。

 そのレータサンド村は雪原の中にある小さな村で、ルーカスさんによると『人間』は一切住んでいない村なのだという。

 僕は『人間』のいない村に興味を持ち、入るのを楽しみにしていた。




 ストルムを発って五時間くらい経った頃、ルーカスさんが声を上げた。


「着いたぞ! レータサンド村だ!」


 馬車を降りた僕らが見たのは、驚くべき光景だった。

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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