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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
最終章【傲慢】悪魔ルシファー討伐編/マギア侵略編

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49  セトの真実

 ノエル・リューズは、その【使徒】が現れた瞬間に起こった魔力の揺らぎを感知していた。

 彼が囚われていたストルムから南方で発生した、莫大な魔力を放つモノ。

 それが何なのかはノエルには分からない。だが、彼の予感はそれが良からぬ結果を引き起こすのだと頻りに訴えた。

 そして同時に、自分にかけられていた女神ベルザンディによる戒めが解かれていたことにも気づく。

 術者であるジェードが魔法を維持できなくなった――彼が躊躇う理由は、もはやなかった。

 牢を破り、看守たちを蹴散らして地上へ出た彼は、飛び立った。

 少年たちを守るために。彼らに迫る脅威を、退けるために。

 

「……あれが、敵か」


 エールブルーの上空に差し掛かったノエルは、南の沖合を飛行する赤い人型の怪物を捉えた。

 無機質に鈍く光る体躯からは、命の匂いを感じられない。


(あれは魔道具か? それとも科学者とやらが作る機械? ……いや、違うか。あれは、魔力の塊だ)


 近づくほどに強く胸を突くように押し寄せる、魔力。あの赤い魔神からはそれ以外の何も見えてこなかった。

 状況を把握する必要がある。その手がかりとなりうるのは――


「おい、お前たち! あの赤い物体について、知っていることを教えてもらおうか!」

 

 眼鏡の下の真紅の瞳が見据えるのは、アレクシルとアダマスだ。

 不遜な物言いに眉間に皺を寄せるアダマスを制し、ノエルとは知己であるアレクシルは彼のもとへと下がると短く告げる。


「世界の破壊を目論む者が遣わした、【使徒】だ。あの魔神が放つ黒い魔力に呑まれると、痕跡を一切残すことなくこの世から消滅させられる。食らえば二度と生きては戻れまい」


「……ほう、なるほどな。【悪魔】にまつわる者、リリスかイヴの仕業かね?」


 フィンドラ王からの情報提供を受けて推測するノエルだったが、それをアダマスが否定する。

 帝は【使徒】が発する魔力の波長が、よく知るそれと酷似していることに気づいていた。


「【マギ】と名乗る魔導士が生み出したものだ。奴は【神】を降臨させることに執心している。これは差し詰め、そのための儀式といったところか」

 

「……【マギ】? 【マギ】、ね。まぁ、それが誰かはどうだっていい。『敵』の定義を『対等に戦える』相手としたら、あれは敵ですらないのだからね」 

 

 傲慢の悪魔を身に宿す男は嗤う。

 膨大な魔力を放散し続けている【使徒】の様子からして、そのリソースは体内で恒常的に生産されていると考えるのが妥当だろう。あの体躯に貯蓄できるであろう魔力量よりも、放っている魔力量の方が遥かに上回っている。


「子供たちの未来を守るのが、大人の役割。せめてもの罪滅しとして、この力を振るわせてもらおう」


 そう呟いたかと思えば、ノエルの姿は二人の王者の前から掻き消えていた。

 瞬間、漆黒の弾丸が海上を横切る。

 風を切って猛進する黒翼の堕天使は、水面に黒い散弾を撒く【使徒】へ鮮やかな追撃を浴びせた。

 金属質な鎧に覆われた背面を、伸ばされた巨腕のごとき腕が穿つ。

 バキリ――膂力に任せた小細工なしの攻撃は、赤い装甲に亀裂を走らせた。

 しかし、魔神は首を真後ろに回転させると、そのあぎとを開いて瘴気じみた呼気を吐き出さんとする。


「――効かんよ」


 一笑。

 男の翼は黒い魔力が彼自身に届く前に、それを振り払う。魔力に触れたそばから消失する翼にも、ノエルは動じなかった。

 戦闘において犠牲は当然の出費。それがあってもなお勝利という利益を出すのが、ノエル・リューズという大商人だ。


 ――翼などいくらでもくれてやる。切り札は、こちらだ!


【使徒】が口から魔力を吐く間隔は、呼吸のように一定に刻まれている。つまり一度吐かせてしまえば、次を撃ち出すまでに絶対的な隙ができるのだ。

 手など他の部位から放たれる分は考慮しない。引き出したこの好機に、全てを賭す!

 

「せいッッ!!」

 

 黒い羽根の雨の合間、一閃。

 迸る気合と共に鯉口を切り、ノエルは白刃を【使徒】の背に叩き込んだ。

 重く腕から肩に伝わる、衝撃。刃を受けて反発する装甲に押し返され、彼は歯を食い縛る。

 決めきれなかった剣が宙に跳ね上がる。

 翼を失った男の身体がバランスを崩す。

【使徒】の背には確かに亀裂が入り、その奥にある筋繊維らしきものが覗いていた。それでも、ノエルの一撃は致命傷にはならなかった。

 ――だが。


「覚えておけ【使徒】よ! ノエル・リューズとは、お前の命を奪う男の名だ!!」


 ノエルは、吼えた。

 宙に放り出されようが、衝撃に剣が手を離れようが、彼に諦める選択肢はもとよりなかった。 

 一撃で仕留められなければ二撃目を放つのみ。剣がなければ魔法を使うだけだ。

 悪魔の翼など要らない。敵を討つのに必要な唯一のもの、それは覚悟だ。

 死をも恐れぬ信念を胸に、自身の持てる全てを使って抗う。ノエルを超えた少年、トーヤがそうしたように。

 

 ――私も君に学ばせてもらったよ、トーヤ君!


 男の拳に灯ったのは、紅蓮の炎。

 彼のありったけの思いの丈を込め、撃ち出す、必殺の拳だ。

 喉が張り裂けんばかりの雄叫びを上げ、なけなしの力を乗せ――


「るぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


 一撃、貫く。

 破砕された装甲が飛散し、背から腹までを穿った風穴から肉片と血液が雨のように地上へと降り注いだ。

【使徒】の喉が歪な音を奏で、宙に浮いていた身体が静かに堕ちていった。



「ぐっ……!? 邪魔を、するなッ……!」


 少年の腕の中で青年の身体が一度、激しく痙攣した。

 痛みに悶え苦しむようなセトの様子に、トーヤは外部で何かが起こっているのだと悟る。

【使徒】に害なす者の登場。それはつまり、トーヤたちを救援する者が現れたということだ。


「トーヤ君、きみは何故僕を知りたいんだ? 僕が何であろうときみの在り方は変わらないし、僕が変わることもない。そうだろう?」


「いいえ――変わります。人は他者に影響されて心を形作る。誰かを好きだと思う気持ちとか、喪って悲しむ気持ちとか、憎しみをぶつけることだって、誰かと触れ合って初めて生まれる感情なんです」


 青年と額を突き合わせたまま、少年は言った。

 彼はセトの裸の胸を強く抱き寄せて、その鼓動を確かめる。

 激しかった拍動は密着した距離によって和らげられ、荒かった呼吸は徐々に穏やかなものへとなっていく。


「今はただ……僕の温度だけを感じていて」


 心音が、静かに共鳴していく。

 感情が溶け合い、理性は鎮まる。

 肌の接触を通して相手の魔力が流れ込み、浮かび上がる光景に彼らは互いの人生を追体験した。



『君たちが抱える憎悪を晴らすには、戦のない社会を作るしかない。その実現のための力は、【神殿】にある』


 始めに見えたのは、若かりし日のアダマス帝とタラサに道を説いている彼。

 青年は理想のために純粋な少年たちを唆し、彼らの未来に破滅を願うことさえ厭わなかった。


『【ユグドラシル】は崩壊する。【悪魔の母】の望みは叶い、僕の願う【神】の降臨も果たされるだろう』


 次に見えたのは、黒装束を纏い、隣に白い髪の少女を伴った彼。

 青年はこれからもたらされる崩壊を喜々として待っていた。母との再会も、密かに心待ちにしていた。


『僕は皇帝を超え、「人」を超え、「神」になる男さ。人々も次第に僕らをそう仰ぐようになる。そうなれば、名実ともに世界は魔導士のものだ』


 皇帝を弑逆し、玉座を簒奪した彼。

 高らかに笑う青年は、国という母体を手に入れ野望へと突き進む。魔導士の世界を作るという、母の理想を信じて。


 試験管の培養液の中で生まれ、育った彼。

 少年は母の声を聞いていた。『あなたはカインとアベルの代わりになるのよ』、そんな母の期待を一身に背負って。

 


「……やめろ。そんなもの、見るな。僕の過去は、僕だけのものなんだ……!」


 セトはトーヤの腕の中でもがきながら喘いだ。

 頭を激しく振る彼の瞳は危うげに揺らぎ、その心音は乱れていく。

 だがセトが拒絶の意思を示せば示すほど、少年の腕の力は強まって彼を離さない。

 暴れる青年に対して、少年は酷く冷静になれていた。拒否を無視して人の過去を暴くような真似は、トーヤも本心ではやりたくなかった。しかし、知らなくてはならないのだ。

 セトという人間を紐解かなければ、この問題は解決できない。これは発端から終結まで、セトの意思次第で変わりうる事態なのだから。



『期待しているよ』『彼らならきっと、上手くいきますよ』『あの子たちなら間違えない』『凄い点数です! 彼はいずれ、カインとアベルをも凌ぐ神童になるんじゃないですか!?』『双子に試す予定だった魔力負荷実験、やってみてもいいかもしれませんね』


 期待に弾む研究者たちの声が幾つも重なり、わんわんと不協和音を奏でていく。

 その重奏はセトにとって悪夢の象徴だった。

 周囲の大人たちが彼の感情を無視して進める、実験や訓練の数々――それは幼い彼の身体を痛めつけるような、非人道的なものであった。

 アダムは『魔女計画』の子供たちを生物兵器として運用するため、彼らの『マインドブレイク』を克服しなくてはならなかった。毎日のように行われる『負荷実験』によってセトたちの魔力耐性は徐々についてきたものの、それに比例して彼らの心はすり減るばかりだった。


『また吐いたのか。頭だけでなく、臓器の強化も図る必要があるな』


『あの、父さん……ぼ、ぼく……』


『近づくな。汚れるだろう』


 床に(つくばって再度込み上げる吐き気に耐えながら、セトは父に助けを求めようとした。

 その時の父の眼を彼は忘れていない。そこに、子を想う親の情はなかった。ただ醜い実験動物を見下す、不快感に塗れた瞳。

 屈辱だった。「カインとアベル」になるために努力し、期待に応えてきたのに、返された言葉は『近づくな』だなんて――。

 


『どうしたの、セト? 何か嫌なことがあったの?』

 

 訊ねてくる母親は、普段通り慈愛に満ちた表情でセトたちを迎える。

 彼女は実験や試験に殆ど関わることなく、研究所に隣接された家で過ごしていた。そこに双子の形見の品が保管され、彼女が二度と還らない日々に浸っていることに、セトが気づかないわけがなかった。


『嫌なことがあったか、だって? ……過去に囚われて嫌なことから逃げているあんたに、そんなこと聞く資格なんてない!』


 イヴは優しい母親などではない。

 彼女の愛は、セト自身に向けられたものではない。


『どうして、お母さんにそんなことを言うの? セトはお母さんのことが好きでしょう? だから、今まで頑張ってこれたんでしょう? 今度は間違えない、ってお母さんと約束してくれたじゃない……』


 母親が好きだったことなど、一度たりともなかった。

 好きであるふりをし続けていただけだ。そうしなければ、セトを庇護するものも、彼の居場所もなくなってしまうから。


『カインとアベルの死は間違いなの? 彼らの死を間違いだと断じて、その負債を僕らに解消させようとする――それこそ間違ってるんじゃないの? ねぇ、母さん、母さんにとって僕らは何なの!? 僕らに、何を望むの……!?』


 母親の胸に顔を(うずめ、少年は訴える。

 胸を叩くその悲痛な叫びにも、イヴは微笑を崩さず――


『あなたたちは「魔女計画」のために生まれた、大切な子供よ。お父さんとお母さんの期待に応えてくれたら、それでいいの』


 双子が死んで振り出しに戻った、計画。双子が応えることの叶わなかった、期待。

 何もかも、そうだった。両親も研究員たちも、誰一人としてセトたちを個人として認めない。『カインとアベルの代わり』の、『アダムとイヴの遺伝子を掛け合わせて生まれたモノ』に過ぎない。

「僕は僕だ」とセトは主張したくて堪らなかった。だが――他の子供たちが何も()()()()()環境下では、彼だけが狂人だった。

 おかしいものは処分される。失敗を認めたがらない愚かな研究者たちは、なかったものとしてセトを葬るのだろう。カインとアベルに関する論文も、発表直前に起こった事故のために焼き捨てられたのだから。

 

 ――言いたいことなんかない。言いたいことは言えない。


 父の権力欲と母の倒錯した愛情に、彼の精神は常に抑圧されていた。

 兄弟たちも研究員たちもアダムの傀儡(くぐつで、敵でしかなかった。

 味方はどこにも存在しない。ならば、戦う術は自分で身につけるしかない。

 そのために彼は知識を得た。勉強しか能のない父親は、彼が書物をねだると喜んで与えた。

 信じられるのは他人ではない。自分と、自分が持つ知識だけなのだ。



 セトさんという人間を形成した過去がどのようなものか理解した僕は、静かに目を閉じた。

 つまるところセトさんは、誰にも愛されることなく生きてきた人間なのだ。

 彼が知を求めるのは、それに縋るしかなかったから。探究にのめり込む行為は、僕がエルとの性交渉に溺れたのと同じく、辛いことから逃避するための手段でもあったのだろう。

 周りがみんな敵だったから、生き残るために誰よりも強くなった。魔導士として「強者」である自分を世界中に喧伝し、皇帝を弑逆して世界の覇権をも握った。そうしたことでセトという「自己」を犯す敵はいなくなり、彼は安寧を手に入れた――だなんて、都合のいい見方だ。

 

 彼は心を知らないわけではなかったんだ。むしろ、その大切さを身をもって知っていた人の一人だった。

 でも、その心は「自分」という殻の中に閉じこもったまま。

 他人は全員敵、そんな観念が幼少期から備わっているから、他者を思うことができない。

 

「トーヤ君……君は、随分と酷い過去を経験してきたようだね。それでも、なお……君は前を向いて進めている。人を信じられている。あまつさえ、自分を苦しめた男を許そうとさえ思っている。僕には、理解できないよ」 

 

 互いに過去を追体験した後、最初に口を開いたのはセトさんだった。

 困惑を色濃く滲ませる彼の瞳を正視して、僕は答える。


「今は理解できないかもしれません。でも……近いうちに必ず、わかるようになると思います。あなたが知らない『感情』を僕が、いえ僕らが、教えてあげます」


「僕に君らへ師事しろと言うのかい? 子供の癖に、随分と生意気じゃないか」


 鼻を鳴らすセトさんに声を掛けたのは、僕やエル、シルさんとノアさんでもなく、これまで口を(つぐんでいたリリスさんであった。


「師事とか、そういう、ものじゃないよ。トーヤ君たちと……共にいれば、嫌でも、分かる。この子は、天然の、人たらしだ。……そう、だろう?」

 

 負傷した胸を抑え、切れ切れの息で言ったリリスさんはエルたちを順に見て問う。

 彼女らの返答は満場一致の同意だった。頷く三人の中から一歩前に出たのは、シルさん。


「もともと敵だったエインがトーヤ君に懐いているのを最初に見た時は、驚いたわね。当時はわけがわからなかったけれど、今なら確信を持って言えるわ。トーヤ君が特別である理由は、その優しさ――たとえ相手が敵でも苦しんでいれば手を差し伸べる心なのよ。彼は決して自分の欲望のために戦っているわけじゃない、悲しみや苦しみの連鎖を断ち切るために【悪魔】と戦っているの」


 こうして他人に評価されるのは何だか照れくさいけど、胸を張っていよう。

 それがセトさんを変えることに繋がるのなら、貫き続けよう。

 誰かを助け、誰かに助けられる――そういった真心から成り立つ援助の関係が広がれば、世界はもっと温かい場所になる。

 それこそ、僕らが【悪魔】を倒した後に目指すべき理想だ。武力ではなく人の心が築き上げる、誰もが自分を誇って生きていける世界。

 

「セトさん――僕は、あなたの友達になりたいです」


 彼から身体を離し、僕は握手を求めて手を差し出す。

 表情は、笑顔。そこには打算も何もない。僕の素直な気持ちに従って、そう声をかけた。

 セトさんは瞠目し、それから視線を足元の虹色の水面に落とす。

 前髪に隠れて彼の顔はよく見えなかったけど、それでも構わない。考える時間はあっていい。選択は、自由だ。

 

「…………トーヤ君」


 一分、いや二分だろうか。

 長い沈黙の後、悩み抜いてセトさんが出した答えは、僕たちを大いに驚かせた。


「僕を『トモダチ』にしたいのなら、僕と戦ってからじゃないといけない。『トモダチ』というのは親しく対等な関係なんだろう? 力関係が対等じゃなかったら、意味がない」

 

「い、いや、実力云々は関係ないと思うんですけど……」


 そう呟くとセトさんは小首を傾げ、僕をじっと見つめてくる。

 今更だけど、自分と鏡写しな顔が目の前にあるのは変な気分だ。

 僕がセトさんの言い分に困惑していると、エルが横から口出ししてくる。


「魔法っていうのは、魔導士の感情が生み出すものだ。それをぶつけ合えば、きっと今より分かり合えるよ」


「魔法だけじゃないよ、少年。剣だってそうさ。一撃一撃に魂を込め、放つ……思いを剥き出しに激突すれば、相手が異種族だったとしても心を通わせることができる」

 

 ノアさんも補足してきて、僕はいよいよもって後に引けなくなった。

 再び空中に浮かび上がったセトさんは、こちらを見下ろして微笑んでいる。

 君の全てを見せてみろ、彼の目はそう言っていた。


「セトさん……僕は、僕の信念が決して折れないものだってことを、ここで証明してみせる!」


 抜き放ったのはオーディンの【神器】、魔剣【グラム】。

 僕が初めて手に入れ、これまで共に戦い続けてきた漆黒の剣だ。

 水底を蹴って飛び上がり、瞬間、【神化】を発動させる。黒い鎧が全身を覆い、赤きマントが雄々しくはためく。絹のごとき純白の髪を流しながらセトさんと同じ舞台まで上がった僕は、神槍【グングニル】を構えて宣戦布告した。


「――では、行きます!」


「互いに過去を知った後だ、隠すものもないだろう? 君が培った戦闘の技術、その集大成を僕にぶつけておくれよ!」


 想いを懸けた最後の決闘の火蓋が、ここに切って落とされた。

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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