18 エインの信念
「ノエル・リューズ、覚悟ッ!」
扉を蹴破り、偽りの王の座す『玉座の間』に突入したカイとエミリア、そしてエイン。
宣戦布告なしに火炎を撃ち放ったカイとエインに対し、白髪の男は何のアクションも起こすことはなかった。
代わって動いたのは――浅葱色の髪の少年である。
彼が展開した土の防壁が二人の炎を完全に遮断し、男を守った。
「っ、あいつらは……!?」
少年が防壁魔法を放つ寸前に見えたのは、ノエルと彼の左右を固めていた二人の若者だった。
浅葱色の髪の少年と、紫紺の髪の女。カイたちは前者に見覚えはないが、後者は顔見知りだった。
ミラ王女の親衛隊長を務める、イルヴァ少佐である。
「あの女、裏切ったのか!?」
「ううん、カイ陛下――彼女は悪魔に『支配』されています。一瞬覗けた瞳の赤……間違いない」
驚倒するカイにエインは反駁した。
かつて悪魔を身に宿していた少年には、ひと目で理解できる。あれは悪魔に取り憑かれた者にしかできない目だ。自分の意思を奪われ、ただ悪の使徒と化した、哀れな目。
「ノエル・リューズ! 私はエミリア・フィンドラ! 盟友の命を絶ち、国をも簒奪しようというお前の罪、断じて許――」
王女が毅然と声を上げ、【神器】たる【鷹の羽衣】をばさりとはためかせた瞬間だった。
土の防壁を跳躍してきた紫髪の女の拳が、彼女の腹に叩き込まれたのは。
「ガハッ――――!?」
見えなかった。
エミリアにもカイにも、エインでさえも、その初撃を捉えることが出来なかったのだ。
盛大に吹き飛ばされ、扉の向こうの廊下の壁に激突したエミリアは、床に崩れ落ちてえづく。
「陛下危ないッ!」
王女を沈めた直後、イルヴァは身体を捻転させてカイへと照準を合わせた。
青年は歯を食い縛り、既に抜いてある【魔剣レーヴァテイン】に魔力を込める。
瞬く間でしか許されなかった魔力のチャージ。だが、それで十分だった。
エインの警告に驚異的な反射速度で応じたカイは、向かってくる拳の軌道を読み切って刃の側面で受け止める。
「ッ……!?」
打ち鳴らされたのは、金属と金属が奏でる不快な激突音だった。
よく見れば敵の手には篭手すら装着されていない。カイにはイルヴァ少佐の裸拳が魔力によって金属にも劣らない硬度を手に入れた、としか考えられなかった。
拳が帯びる緋色の魔力と、剣が放つ紅の火焔が火花を散らし合う。
その力は互角――いや、イルヴァの方が僅かに勝っていた。
青年の脚が、一歩後退する。
が、彼には頼れる仲間がいた。
「ぼくのこと忘れてもらっちゃ、困るねッ!」
イルヴァの背後から急迫しながら、エインは鋭い気合と共に二刀【紅蓮】を唸らせる。
彼が纏う【超兵装機構】は常人には不可能な加速を実現し――イルヴァがその肉薄に意識を傾けた時にはもう、彼女の背を刃が抉らんとしていた。
カイもその刹那を好機として剣を突き込む。
しかし、あと一歩の所で浅葱色の少年の防護フィールドが展開され、二人の刃はその光の壁に阻まれてしまった。
「エミリア王女、カイ王、そして我が末息子エインよ。君たちは運が悪かった」
これがノエル流の歓迎だ。
侵入者は徹底的にいたぶり、反逆不可能な状態まで追い詰める。
そこに慈悲など欠片もない。彼にとって自分以外の人間は道具であり、それらは有用かそうでないかで区分されるのだ。前者の人間は不幸としか言いようがない。悪魔の操り人形として魂の尊厳をも踏みにじられ、死ぬまで道具として家畜のように使役されるのだから。
「最高の攻撃力を発揮する【拳の魔女】と、最硬の防御力を誇る【戦神の化身】……この二者の力が合わされば、たとえ【神器使い】が相手でも止まりはしない」
残酷なまでにノエルは真実を突きつける。
イルヴァは防護フィールドを前後左右に纏ったまま、カイへと攻撃を仕掛けた。
無論、その状態では防護壁が邪魔になって拳は放てない。が、しかし――。
「ぐうッ……!? 何だ、この力はッ!?」
フィールドごと突撃していくイルヴァに対し、カイは剣で受けるがその勢いを削ぐことができない。
金属鎧をも凌駕する硬度の防護フィールドは、それだけで圧倒的な武器となるのだ。
大理石の床を蹴って猛進するイルヴァは、瞳に真紅の炎を宿して吼える。
「あああああああああッ!!」
その咆哮は彼女をよく知る者が聞けば、痛哭にも思えただろう。
が、カイにとっては暴虐な鬼の砲声だとしか感じられなかった。
止まらない進撃によって背中から壁へと叩きつけられたカイは、衝撃に血反吐を散らす。
無様にも崩折れた王は、それきり抵抗もできなくなった。
――残るは、エイン一人。
「……っ」
カイを見下ろしていた【拳の魔女】が、悠然と身体をエインへと振り向かせて彼を睨み据える。
赤く滾る女の瞳はまるで獣だ。エインは生唾を飲み込みながらも、二刀を握り締める手に強く力を込め、反対に肩の力は最小限にする。
力で劣るエインがイルヴァに勝つには、その敏捷性を活かすのみだ。彼らはイルヴァの初撃を見逃したが、それは奇襲であったことと速さに慣れていなかったことの二つの要因があったためだ。
ここまでイルヴァの動作を観察してきて、エインの視覚は早くも彼女の速度への順応を始めている。
エミリアとカイが倒れてしまったのは心配ではあるが、二人を救助するにも障壁となるイルヴァ、及びノエルを討たねば話にならない。
「――いくよ!」
自分に発破をかけてエインは走り出した。
たった一人。だが、自分には信じて送り出してくれた友がいる。倒れた仲間がいる。彼らの期待や願いに応えるためにも、勝つのだ!
漆黒の二刀が真紅の炎を帯びる。床を蹴りつける脚は【超兵装機構】の補助によって強化され、隆起した筋肉が更なる加速を彼に齎す。
防護フィールドを再展開したイルヴァは、その場から動くことなく少年を目で追っていた。
二刀で斬り付け、即座に離脱。それを音速にも迫ろうかというスピードで繰り返していくエインに、機動性で敵わないと判断しての「鎮座」だった。
「せぇええええええいッ!!」
迸る雄叫びと、奔る火焔。
緑の防護フィールドに刃が触れる度、その表面から火花が舞い、徐々にだが鉄壁を削っていく。
小柄で華奢な少年が振るう刃の一撃は、見た目以上の重さを有していた。
【超兵装機構】が使用者に与える恩恵は二つ。一つは「人工の筋肉」にも等しい機械の補助。そして二つ目は、装着部位の筋肉に魔力を送ることで一時的な筋力の増強を引き起こす力。
現在、エインは双方の恩恵を得ることで圧倒的な膂力と速度を実現している。
「うらああああッ!!」
加えて、二刀の最大の利点である「手数の多さ」も彼の有利を確固たるものにしていた。
一秒にも満たない間に何発も撃ち込まれる刺突、斬撃。エインは執拗に一点のみを狙いながら、イルヴァの反撃を食らう前に距離を取る。
「クソっ、魔導士の癖に科学の産物に頼るような輩に、負けるはずが――」
ノエルの洗脳下にありながらも、イルヴァは幼い頃から信奉してきた魔導士至上主義が破壊される音を聞いた。
目が霞んでいる――いや、速すぎて残像すら薄らいでしまっているのだ。
少年の加速は止まらない。
女の正面から刃を突き出したかと思えば、瞬く間に背後まで回り込んで真紅の焦熱を浴びせかける。
一点突破を目論んでは軌道を読まれると気づいて、プランを変えてきた。その急な路線変更はイルヴァの思考を攪乱する狙いもあるのだろう。
そしてイルヴァを更なる混乱に陥れたのは、彼の背に装着された「翅」であった。
「――こんなのはどう!?」
浮遊魔法では不可能な音速飛行で舞い上がり、上からの重力を乗せた一撃を打ち込む。
ドガガガッ――!! と激突音を轟かせ、ドーム型の防護壁が衝撃に歪んだ。
燃え上がる爆炎、白く煌く魔力の光、少年が飛ばす汗の滴。
全身の筋肉が過剰使用に悲鳴を上げている中、エインはそれでも攻勢を緩めなかった。
「絶対に、勝つんだ! あなたなんかに足止めされてる場合じゃない……ぼくはノエル様を、父を超えたいんだ! 弱い自分に戻りたくなんて、ないから……!」
呼吸が乱れ、心音が異常な速度で打ち鳴らされる。
【超兵装機構】までも最大火力を出し続けたためにオーバーヒートに瀕していたが、エインの剣舞は止まらない。
防護フィールドに亀裂が生じ始め、その拡大がもはや抑えられない段階まで達していく。
「はああああああああああああああああああッッッ!!!」
旋回、攪乱。その果てにぶち込まれた、最後の一撃。
砲声が【拳の魔女】の耳を劈き、彼女を覆っていた防護壁を完全に破壊した。
緑の光粒が崩落し、遮蔽物のなくなった女と視線を交わす。
正面から突進していったエインは、二刀の頭をイルヴァの鳩尾へ打ち込んだ。
「がはぁッ――!?」
急所を突かれた女は吹き飛ばされて、背中から床に落下し、そのまま気絶した。
――勝った。だが、まだ終わってなどいない。
エインはノエル・リューズを見据え、二刀をぐっと握り込んだ。
脚や腕が今にも意識の手綱を手放しそうでも、彼は柳眉を吊り上げて敵を睥睨する。
「ノエル様……いいえ、お父さん。ぼくは、本心ではあなたを殺したくなんてない。どんなに酷いことをされても、どんな悪人だったとしても、あなたはぼくにとって唯一の父親だから……」
ノエルは単に『組織』の研究所に精子を提供しただけで、生まれたエインの世話は組織の構成員が行った。
だがエインが育ち、魔導士として戦える水準にまで達した頃、ノエルは彼のもとを度々訪れて話をしてくれた。商人としての様々な経験を語ってくれるノエルが、エインは好きだった。『組織』内で孤独だった少年の前に現れた同じ髪色、瞳の色をしたノエルやアマンダ、ルーカスの存在は、彼に安心感を与えた。
血の繋がった家族がいる。一人ではない。彼らへ確かに親愛の情を抱いていたエインだったが、ある日、ノエルと二人きりになった際に【強欲】の悪魔の力で魔力を吸われてから、父が変貌してしまったことに気がついた。
死ぬ寸前まで力を吸い取られてしまったことは、何度もあった。
苦しかった。辛かった。だが、見た目以上に頑丈に作られているエインの体は死を拒んだ。
死を諦めた少年は、その辛苦を受け入れた。これが父親からの愛なのだと、歪んだ理解を胸に刻んだ。その恐怖はあって当然のものと、彼は信じてしまった。
トーヤに負けてから彼らと触れ合ううちに、その暴力が間違ったものなのだとエインはようやく知った。
「……お父さん。ぼくは、昔の優しかったお父さんに戻ってきてほしいんだ。悪魔の力を手放せば、きっと戻れる。お父さんが変わってしまったのも、悪魔を長く身体に宿していたせいだったんでしょう? ぼくが変われたみたいに、お父さんだって、必ず――」
「お父さん、お父さんと煩いな。……全く、馬鹿なガキだ。少し甘やかしてやっただけで、笑えるほど従順になってしまうのだから。エイン、そこがお前の明確な『欠陥』だ。悪魔に選ばれ、生温い心を捨てたままでいれば、そんな下らない考えを再発することもなかっただろうに」
しかし、ノエルはエインの訴えを一蹴した。
愛を偽りだと否定し、悪魔に憑かれていた頃の彼を是とした。
ノエルの言葉の真偽はともかく、その台詞は少年の心を傷つける刃であった。
無垢な果実を切り、潰し、喰うために原型さえ奪わんとする悪意の牙。
「――そんな」
がくり、と少年の膝が屈する。
眼前の男の輪郭が霞み、得体の知れない「何か」と化していた。
――嘘だ。嘘に決まってる。これはノエルがエインを動揺させるために吐いた、詭弁に過ぎないのだ。
彼はそう懸命に自分に言い聞かせ、床に接しかけた膝をどうにか持ち直す。
「……お前が戦う理由は何だ? 今言ったこと以外にもあるのだろう、話してみろ」
荒い口調で促すノエルに、エインは口を開くことを逡巡した。
このままでは完全に彼のペースに乗せられてしまう。そうなってしまう前に、攻撃を仕掛けなくてはならないが――脚が言うことを聞かなかった。
焼け付くような痛みが身体中の筋肉を蝕んでいる。それを感じてもなお少年が立っていられるのは、彼の魔力が痛覚を麻痺させているからだ。しかしそこに魔力を回してしまっているために、エインは他の魔法が使えなくなってしまっている。
「ぼくが、戦うのは……トーヤ君たちの、ためだ。彼らはぼくを救ってくれた。トーヤ君はぼくにとって、一番の英雄なんだ。だから、恩返ししたい。彼らの使命を、共に果たすことが……ぼくに出来る最良のこと」
今、エインがやるべきは時間稼ぎだ。トーヤやエル、ティーナらフィンドラ陣営の魔導士が駆けつけてくれれば、エミリアやカイを回復させられる。そうなれば加わった戦力も含めて、ノエルへの勝算は一気に確実なものになるだろう。
「ふむ……そうか。やはりお前は愚かだな、エイン」
息子の言葉を聞いて、父はそう唾棄する。
侮蔑の色濃く滲む瞳でエインを見るノエルは、眉間に皺を刻む少年へ酷薄に言い渡した。
「私のため、トーヤのため……お前の意志は所詮、他者の影響で生まれたものに過ぎない。お前には『自己』の意思がないのだよ。芯がない、と言い換えてもいい。そんな者が私を超えられると思ったのなら、全くの誤算だ。彼のために頑張れば、きっと勝てる――確実性のない戯言だよ、それは」
「他人の影響を受けずにいられる者なんて、いない。人の意志っていうのは、誰かとの関わりがあって生まれるものなんだ! それを戯言だなんて言わせない!」
一瞬にして沸騰した激情が、エインの口を衝いて出た。
だが、それはノエルの思う壺だった。その感情に思考を染め上げた時点で、エインは父の手で弄ばれている。
息子の叫びにも表情を微動だにさせず、男は言葉の刃を振るい続けた。
「エイン。お前はトーヤ君のことをどう思っている? お前はトーヤ君にとっての何になりたい? 彼の使命のために動くのは何故だ? 彼に、何を望んでいる?」
列挙される質問が弾丸のごとく少年へ撃ち込まれる。
それは誘導尋問にほかならなかったが、怒りが抜けきっていない少年にはそこまで考えが及ばなかった。
「ぼくは、彼の側にいたい。……それだけで、構わないんだ」
己の純粋な願望を零してしまうエインに、ノエルはその感情が何に起因するものかひと目で悟った。
打算抜きの、混じりけのない好意。ノエル・リューズがどれだけ欲しても遂に取り戻すことの出来なかった、愛。
「――そんなものに何の価値が有る?」
ノエルは自分が身を乗り出していることに気づかない。
エインの心をいたぶってやるつもりが、逆に動揺させられている。計略も何もない、少年の本音に触れただけで、彼の心中には感情の渦が巻き起こり始めていた。
だが、悪魔の呪縛がそれを雁字搦めにする。
愛を求めた過去の自分の虚像を握り潰し、少年を否定し傷つける暴虐の言葉を連ねていく。
「いや、ない。愛情など、詮ずるところ無益で醜い情欲に付随するものでしかないのだよ。それに……男のお前がトーヤを好くだと? ただでさえ無価値なそれを、よく同性の男に注げたな。あまりに非生産的、あまりに生物の摂理に反している。やはりお前は『欠陥品』だよ、エイン」
「……それは、違う。ぼくは、欠陥品なんかじゃ、ない」
「何が違う? お前は出来損ない、失敗作、彼の側にいることも烏滸がましい存在なのだよ。――だが、欠陥品には欠陥品なりにやれることがある。抑圧した欲望を解放できる手段……それをもってすれば、お前はトーヤを手に入れることができる。どうだ、私の手を取ってみないか?」
か細い声を必死に絞り出して首を横に振るエインに、ノエルは被せかけるように告げた。
少年が無価値な人間だと彼の思考に植え付け、直後に「救い」を提示する。
精神の脆弱な者ならば、一度跡形もなく破壊された「自己肯定感」を再構築する選択肢を与えられれば飛びつくのだ。そうやってノエルはこれまで多くの人間を従えてきた。
が、エイン・リューズという少年は。
「正直に言うと、あなたの言う醜い欲望をぼくも持っている。でも、その欲に任せて悪魔に魂を売り、トーヤ君を強引に自分のものにするなんて、絶対にしたくない! お父さん――ぼくはあなたみたいな『欲望の獣』になったりなんかはしない! 今のぼくを、ありのままのエイン・リューズを大切にしたい! だから――ぼくは、あなたを倒します」
ノエルの否定を撥ね退け、自分の愛を貫いた。
自己を認め、瞋恚の炎を燃やし、エインは二刀を中段に構える。
魔力も体力も風前の灯火。それでも、彼は負けたくなかった。ここで父を討ってトーヤたちの使命を遂げ、自分が欠陥品でないと証明するのだ。
「うああああああああああッ!!」
「チッ――!?」
喉が張り裂けんばかりの絶叫と同時に床を蹴り、もう炎も宿らない生身の刃をノエルへ刺突せんとする。
最悪刺し違えても構わない。ここで傲慢の悪魔を倒せるならば――!
人の魂を支配するノエルの目には、エイン。リューズのそれは異質なものに映っていた。
紅き爆炎を宿す、白い光輝。少年の【心意の力】が具現化したような輝きは、その一瞬だがノエルを圧倒した。
だが、そこで冷静さを失うノエルではない。彼が「守れ」と念じると、一切のタイムラグなしにグリームニルが動き、防護フィールドでノエルを覆った。
「ぐあッ!?」
当然、エインの刃は緑の防護を破れない。弾き返された彼は既に傷みきった身体を床に叩きつけられ、再起不能になると思われたが――誰かの腕が、彼を抱きとめた。
「安心して。ここからは、僕らが」
短く言ってくる少年の声。意識をぷつりと手放す寸前、エインはその笑顔にこの上ない安堵感を抱いた。
――あとは任せたよ。ぼくの、英雄。
「うふふっ、私もいるわよぉ。それに……」
「先程の屈辱、ここで雪がせて頂きましょう」
「ケヴィン王を弑したその罪、この剣で裁く!」
トーヤに続いて登場したのはミラ・スウェルダ、エミリア・フィンドラ、カイ・ルノウェルスの三名。
そして最後に、少年の「共犯者」にして無二のパートナーである緑髪の少女が姿を現した。
「エイン君、ありがとう。おかげで二人を回復する時間ができた。――さあ、ノエルさん! ここで決着をつけよう! 神と悪魔の悲しい争いに、終止符を打つんだ!」
エインを横抱きにするトーヤと彼に付き添う回復役のエルを庇うように、三人の【神器使い】が前に出る。
しかし、三国の若き王族と対峙してもなお、ノエルは不敵に笑うだけであった。
漆黒の翼を背から広げ、純黒のオーラを立ち上らせる彼は少年たちからの宣戦布告を受諾する。
「いいだろう。新生リューズ帝国の最初の夜だ、楽しませてくれたまえ!」




