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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
最終章【傲慢】悪魔ルシファー討伐編/マギア侵略編

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13  使命の導き手

 グリームニルと名乗った浅葱色の髪の少年に、イルヴァは唖然とするしかなかった。

 つい先程まで呪いを受けて昏睡状態にあった彼が、何故これほどまで健康体でいるのか理解が追いつかない。

 言葉を失うイルヴァに、その少年は饒舌に話しかけた。


「ところで、私の服をどこにやった? 今は夏とはいえ、パンツ一丁では肌寒くて仕方ないのだが。あぁ、もし可能ならば新しい服を用意してくれても構わん。戦闘に適した、機動性重視のものがいい」


 下着姿でぺたぺたと部屋を歩き回る少年に、イルヴァは詰め寄らずにはいられなかった。

 何なのだ、この子は。下着一枚では肌寒いだの、「新しい服を用意してくれても構わん」だの、何様のつもりなのか。

 と、イルヴァの内心でそんな反感が湧き上がるのを察したらしく、グリームニルという少年は猫のように喉を鳴らして笑った。


「新しい服の件は冗談だ。服なら魔法で直せるし、汚れも落とせるからな。それで再度訊くが、私の服をどこにやった? あれは私のお気に入りなのだが」


「……先程お前を寝かせたベッドの下だ」


「ああ、ベッドの下に収納スペースがあったのか。これは盲点だった……私にとってベッドの下とは、若者がエロ本を隠す場所というイメージしかなくてな」


 イルヴァが露骨に唇をひん曲げるも意に介さず、グリームニルはベッドの下をごそごそと探り始めた。

 呆気に取られているミラ王女は、イルヴァに耳打ちする。


「あの子が、イルヴァが助けようとしていた子なの……?」


「そ、そのはずでありますが……どうにも、小官は騙されていたらしいのであります」


「おっと、騙す云々は言えた口じゃないだろう?」


 唸るように答えるイルヴァの言葉にかぶせ気味に、グリームニルは言った。

 スパイだということはいつでも暴露できるのだと札をちらつかせる少年に、イルヴァは嫌味も返せない。

修復魔法リペア)】で瞬く間に服を直したグリームニルは、新品同然のワイシャツに袖を通していく。

 彼の着替えを無遠慮に眺めるイルヴァは、その装備の無防備さを怪訝に思わざるを得なかった。

 防弾用の衣服も着ず、まだボタンを留めていないシャツの隙間から覗く身体は細く、殆ど筋肉がついていない。

 戦場に立つ者としては明らかに失格だが……どうやら彼は魔導士らしい。よほど【防衛魔法】に自信がなくては、そのような格好でこの場にはいられまい。


「さて、イルヴァとやら。お前は私の協力者に選ばれた。光栄に思え」


 ズボンに足を通し終えた少年は、手近なベッドに腰掛けて不遜な笑みを浮かべた。

 イルヴァは何の言葉も返さない。彼女はミラ王女の一歩前に出て、彼女を庇うように立った。

 警戒心も露に睨みつけてくる彼女に対し、グリームニルは鷹揚な口調で言う。


「まぁ聞いてくれ。外ではルノウェルスの兵士たちが攻めて来ているが、ここで小一時間語らう余裕はまだありそうだからな」


 弱みを握られている以上、イルヴァに拒否権はない。少年の向かいのベッドに掛けた彼女は、隣に座るミラに囁きかける。


「この者がノエルに抗った事実は確か。素性の知れない相手でありますが、話を聞く価値はあるでしょう」


「分かったわ。……何かあったら私が【神器】で切り抜けるから、安心して」 


 二人のやり取りを耳に挟みつつ、グリームニルは語りだした。

 現在まで続く彼の『組織』との戦いの道を、余すことなく。

 

 

 グリームニルは他の【神器使い】たちと交流することなく、ノアとバディを組んで独自に『組織』について調査を進めていた。

 悪魔の封印と同時に【ユグドラシル】時代が終焉を迎え、新たな世界が始まって以降、『組織』――リリスを宗主と定めた共同体――の活動は長らく確認されていなかった。

 が、三十年ほど前にある動きが勃発した。

 それが、【七つの大罪の悪魔】の復活。そのうちの一人、【強欲】のマモンの【悪器】が異次元の狭間よりこの世界に産み落とされ、それを感知した『組織』も再稼働したのだ。

 それまで流浪の詩人として旅を続けていた彼を、悪魔との戦いの道に再び誘ったのはノアであった。

 

『シルやパール、エル、ハルマ……彼女らが築いた平和な新世界が、再び悪魔に犯されようとしている。あの「滅び」だけは二度と起こしちゃいけない――協力してくれるね?』


 彼は迷わずノアの手を取り、それから地道に活動を進めていた。

 当時、『組織』は小規模な宗教団体のようなものであった。二人は彼らの拠点を次々と潰していったが、その全ての所在を暴くことは叶わなかった。

 とある都市の豪商の男や、白髪赤目の少年、エルフの森の王女……次々と宿主を変えて暗躍する【強欲】の悪魔。【悪器】の存在は分かっていても、逆にそれ以外の情報は全くなかったため、グリームニルたちの行動は常に後手に回されていた。上述の例は、ずっと後になって判明したものだ。


 マモンの暗躍には何者かが手を引いている。それは確実であったが、何の手がかりも得られないまま十五年ほどが過ぎた。

 その頃、決定的な変化がスカナディアの民たちの知らぬ間に起こっていた。

 異次元に封印されていた【大罪の悪魔】の【悪器】、その残り六つが全て、世界に解き放たれたのだ。

 そして同時に、『シル・ヴァルキュリア』も目覚めた。かつて【悪魔の心臓】を生み出した魔女の手によって、『組織』は単なる宗教団体から魔導士の武装組織へと変貌していった。

【強欲】のマモンを利用して力を増した『リューズ商会』にシルはすぐに接触を図り、間もなく『組織』と『リューズ』の盟約が密かに結ばれることとなった。

 

 現在までの約十五年の間に、組織による目立った事件はなかった。

 しかし――シル・ヴァルキュリアが【特異点】と呼んだ少年が、【魂の管理者】の働きかけで精霊の少女と巡り会った直後から、彼らは焦燥に取り憑かれたかのように続々と動き始めたのだ。


【色欲】のアスモデウスによるミラ王女誘拐事件と、アマンダ・リューズとトーヤらとの神殿ノルンでの戦い。

『アールヴの森』でカル・アールヴヘイムが【憤怒】に駆られて起こした、過去の悲劇を巡る事件。

【怠惰】と組織が結託して【神器使い】と戦った、「ルノウェルス革命」。

【暴食】は幼い少年の精神を蝕んで死を貪り、【強欲】のマモンは欲望の赴くまま殺人を犯し、【神器使い】もろともスオロを焼き払わんとした。

 ドリス・ベンディクスはルーカス・リューズを思うままに利用し、【嫉妬】のレヴィアタンの力でフィルンに厄災にも等しい打撃を齎した。


 そして、今――ノエルに憑依した【傲慢】のルシファーが彼の意識の表層に現れ、滅びの導き手になろうとしている。

 ノエルの王国は虚像でしかない。が、その幻のためにケヴィン王の命は失われ、スウェルダ兵の犠牲は今も増え続けている。


 グリームニルがノエル・リューズの居城に侵入したのは、悪魔による身勝手な戦争を終わらせるためであるが……狙いはそれだけではなかった。

 今回の事件はこれまでとはわけが違う。文字通りの戦争――国家と国家の武力衝突に発展し、悪魔の願う人の黒い感情が際限なく増幅する危険を孕んだ状況にあるのだ。

 怨念を捨てきれなかった死者の魂から生まれる、下級の「悪魔」。それらを糧に【悪魔の心臓】は産声を上げ、世界を破滅させる。

 ただ、【悪魔の心臓】は自然発生するものではないことが分かっている。

 強い魔力と「心意の力」を宿した魔導士が「核」となる必要があり、それに相応しい人間は彼女の他には考えられない。

 

 ――シル・ヴァルキュリア。

 

 彼女がこの地に降り立ち、ユグドラシルの惨劇を再現しようというのならば、グリームニルは命に代えてでも止める覚悟だ。

 ノエルに接触し、戦闘に臨んだのは、シルが彼と接触していないか探るためだったのだ。



「それで、どうだったんだ? シル・ヴァルキュリアとやらは、この王宮に現れていたのか?」


 神妙な声音で訊ねるイルヴァに、グリームニルは一度長く瞑目し、それから答えた。


「……分からなかった、としか言えん。あの男の瞳も表情も、暗く澱んでいて――まるで、感情そのものを捨て去ってしまったかのようだった」


「そう、か……読むべき心がそもそもないのなら、思考を測ることもできない……」


 イルヴァの相槌に、浅葱色の髪の少年は沈鬱な表情で睫毛を伏せた。

 高慢で尊大な彼のその様子に、容姿相応の幼さを見出してしまったイルヴァは、彼を抱きしめてやりたい衝動に襲われたが――出来なかった。

 触れれば切れてしまいそうな糸のように張り詰めた彼に、そんなことをしても逆効果だろう。少なくともイルヴァだったら嫌だ。困難に突き当たった状況で、何の解決にもならない甘やかしなど求めたくない。

 いてもたってもいられず席を立とうとするミラを制しながら、イルヴァは少年に問いを投げかける。

 

「ところで、先程のノエルとの戦闘で重傷を負い、失神していたのは演技だったんだろう? なぜ、わざわざそんな真似をした?」


「あぁ、それはな……お前の善性を試すためだ。お前が使える戦士であることは察していたからな。結果、お前が私の仲間となるのに相応しい人間であることが分かった。見込みが当たって嬉しいよ」


 瀕死の彼を救いたいという内なる善意に従い、ミラ王女のもとまで赴いて彼女に自分の願いを吐露した。その過程で彼女は祖国とミラ、ノエルの全てを選び取る覚悟をした。

 そして、グリームニルという少年から『組織』との戦いについて聞かされ、彼に協力する気になっている。

 自嘲の笑みを浮かべようとしたイルヴァだったが、止めた。

 これが自分の選択なのだ。卑屈になる必要など微塵もない。


「仲間になる、とは言っていない。……ともあれ、お前と無闇に敵対するつもりもないが」


「素直じゃないな。まあ、敵の敵は味方、ってやつだ。ノエル・リューズから【悪器】を奪い、【悪魔の心臓】の誕生を阻止する。世界の滅びなど、そちらにとっても望むところではないだろう?」


 当然、世界が滅亡してしまうとなれば、帝の理想など叶う以前の問題になる。

 イルヴァもそこは同感だったが……戦を長引かせてルノウェルス軍を消耗させるマギア側としての思惑と、ノエルから【悪器】を奪うという行為とで板挟みになることには、頭を抱えたくて仕方なかった。


「私にはノエル・リューズの副官としての立場がある。しかし、今は都市全域に耐魔法防壁を張っている代償に、他の魔法が一切使えない……」


「――私が戦うわ。バルドル様の【神器】は闇魔法に打ち勝つ力を持っている。一度は油断から敗れてしまったけれど、もう負けるつもりはないわ。陛下の――父の仇を討つのは、私よ」


 もどかしさに歯噛みするイルヴァに代わって立ち上がったのは、ミラであった。

 彼女の強い決意と瞋恚の宿った瞳に、グリームニルは真剣な眼差しを返した。


「ふっ、決まりだな。サポートは私に任せてほしい。攻撃魔法はからきしだが、防御に関しては絶対の自信がある」


「随分と大口を叩くな……まぁ、ノエルの呪いを受けても死なず、自分で解除できたお前の実力を疑いはしないが」 


 グリームニルの語ったことに嘘が含まれているとは、思えなかった。

 彼が千年以上も前から生きてきた者だということには流石に驚いたが、何故だかすんなり受け入れられた。

 少年の語り口には聞く者を引き付ける力がある。かつて、シル・ヴァルキュリアが彼の歌に救われた時と同じように、その言葉は人の心にすっと染み込んでいってしまうのだ。

 先ほど覗かせた幼い少年のような顔と、それに対する尊大なまでの自信。弱さと強さ、それらを巧みに使い分けることで、彼は人の心を動かしていた。


「さ、ミラ王女殿下。ボクが回復魔法をかけますから、少し横になって、楽にしててくださいね~。……なんて」


 少し高いトーンの声で、別人のように柔らかい微笑を浮かべながら王女を促す少年。

 邪魔をしないようにとベッドから離れて見守るイルヴァは、とんだ演技派だ、と密かに舌を巻くのであった。

 


 ルノウェルス軍によるストルム西区画の制圧は、その日のうちに完了した。

 エインの活躍で怪物の襲撃が止んだ後、後続の第三旅団も戦闘に加わったことで彼我の戦力差はさらに広がり、ノエルの洗脳兵士たちは敢え無く沈んだ。

 都市に入りきらなかった第四旅団は市壁外で待機、戦闘を終えた第三旅団の兵たちも彼らと共に夜を明かすこととなった。

 拠点となった西の関門前の大広場には、第一旅団の500人の生き残りと第二旅団の全員が配置され、総指揮官のカイの下で最大限の警戒を払いながら日没を迎えた。

 指揮系統を別にするフィンドラ陣営は、第三、第四旅団の者たちから少し離れた位置で野営を始めた。


「士気は衰えていないようですね。この調子ならば、明日には王宮に攻め込める。早期の決着も不可能ではない」


 騎乗していた白馬から降りたエミリア・フィンドラは、広場で糧食を取っている兵たちを見回す。

 第一旅団が壊滅的な打撃を被ったものの、それ以外の旅団の人員は殆どが健在だ。【炎の王】カイが率いるだけあって、全体的な士気も非常に高い。

 頼もしさに口元を綻ばせるエミリアはまず、ルプスのもとへ足を運んだ。

 臨時の司令部となった天幕に入ると、彼女が挨拶する前に獣人の男は声をかけてくる。


「エミリア殿下! 貴女様のおかげで無事、西区角を奪還することが叶いました。本当に、感謝しております」


「ルプス殿……ここまで迅速に作戦を遂行することは、貴方の采配があってのこと。私だけの手柄ではありませんよ」


 簡易椅子に腰を下ろしているルプスは、エミリアを見上げてはにかんだ。

 エミリアはテーブル上にあるストルム市街の地図に視線を落としながら、彼の隣に座る。

 部下に淹れさせた温かい茶を彼女に勧めつつ、ルプスは自分の肩を揉みほぐした。


「しかし、これだけ大規模な兵を指揮するのはやはり大変ですな。こうも上手くいくとは、奇跡なんじゃないかと思えてなりません」


「ええ。第一旅団の戦闘が泥沼に陥った時は正直焦りましたが、そこを切り抜けた後はトントン拍子でしたね。しかし、油断は出来ません。浮かれていると、気の緩んだ所に付け込まれてしまいますから」


「そうですな。調子に乗って騒いでいる連中には、後でガツンと言っておきますよ」


 ルプスはカイが即位してから初めて軍に加入した男のはずだ。

 王に認められて特例の「兵士長」なる立場に就いている彼の横顔は、エミリアの側近の壮年の士官とそう変わらない。

 もともとあった才が、カイに引き入れられてようやく芽吹いたといったところだろうか。

 と、そこで天幕に来訪者があった。


「ルプス兵長、歓談中のところ失礼致します。明日の作戦について、士官を集めての会議をそろそろ行った方がよろしいかと」


「あ、ああ。そうだな……少し狭いが、佐官以上の者たちをここに呼んでくれ」


 ルプスの言を受けて素早く踵を返す女性士官。

「うっかりしてたな」と頭を掻く彼に、エミリアは苦笑した。

 

「戦場を離れれば、俺もまだまだ未熟者ですな。……さて、王子様を呼びに行ってやらねば」


「え、王子様?」


「あ……ハハハ。もう王様でしたな。俺としたことが、またあいつに小言をいわれちまいます」


 きょとんとするエミリアに、ルプスは眉を下げて空笑いした。

 席を立とうとした彼だったが、そこでエミリアに引き止められた。


「あ、私が行きましょうか? ルプス殿は総指揮官としてお疲れでしょうし……」


「いや、俺はここに座って部下たちに指示を出していただけですし……。殿下の方が一日馬に乗った上に魔法まで使って、疲労しているはずです。気持ちだけで、十分ありがたいですよ」


 王女の親切を丁重に断り、ルプスは足早にカイたちの天幕へ向かった。

 彼に気づいて直立不動で敬礼してくる兵たちに間延びした声をかけながら、彼はここまでの道のりを思い返す。


 この立場に就いてから、現場の兵たちに寄り添うことをずっと意識してきた。再編された軍には当然不満も多く出てきたが、それら全てに耳を傾け、可能なものは改善してきた。

 その結果もあって、ルプスは皆に慕われる上官になれたのだ。


 かつて復讐心に突き動かされて『組織』に加入した男がここまで変われたのは、カイ・ルノウェルスという青年と出会えたから。

 人生どう転ぶか分からんものだな、と感慨に浸りつつ、彼は天幕の外から一声かける。


「……返事がないな」

  

 寝ているのか、それとも出払っているのか。

 入り口の垂れ布を捲って中を覗くと――前者だった。

 カイは簡易ベッドで、トーヤはその側の椅子に座って眠っていた。

 が、すぐに、ぴくっ、と体を震わせて少年が目を覚ます。


「……ルプスさん? ごめんなさい、僕、寝ちゃったみたいで……」


 椅子で寝たせいか、首やら腰を擦りながらトーヤは立ち上がった。

 彼はベッドのカイを見下ろす。ルプスも天幕に入って様子を見てみると、王子様は規則正しい寝息を立てて熟睡していた。

 

「……やっぱり、俺には王子様にしか見えないな」


 清潔な服に着替え、浴びた返り血も拭われているカイの寝顔は、肩書に不釣り合いなほど幼く見えた。

 

「えっと、ルプスさん、何が用があったんですよね?」


「そ、そうだった。明日の作戦会議をするから、カイを呼びに来たんだ。だが……」


「こんなにスヤスヤ寝られちゃったら、起こすのも憚られますね……。あ、何だったら僕が代わりに出席しましょうか? 戦略的なことは分かりませんけど、【神器使い】として、対悪魔で何か役に立てるかも」


 カイを起こさないよう声を潜めてトーヤは提案した。

 拒む理由も特になかったため、ルプスは頷く。


「会議が終わったら飯でも食って、そしたらお前もベッドで寝れるな。

 ――酷い泥沼だったそうだな。気丈な顔を繕っていても、消耗しきっているのは見え見えだ。遠慮せず、しっかり休めよ少年」


 そう言って先に天幕を出るルプス。

 トーヤは彼の後を追いながら、この人がいるならルノウェルス軍は大丈夫そうだ、と思うのであった。

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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