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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
最終章【傲慢】悪魔ルシファー討伐編/マギア侵略編

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1  束の間の平穏

 何てことのないいつもの朝は、当たり前の挨拶から始まる。


「おはよう、シアン、ジェード」


「あ、おはようございますー!」

「おう、おはよ」


 フィンドラ王城に食客として迎えて貰っている僕は、居室を出たところで鉢合わせた獣人二人組に手を振った。

 朝から眩しい笑顔を向けてくるシアンに、まだちょっと眠そうなジェード。変わらない、普段の二人だ。


「トーヤは朝ごはん食べましたか? わたし、もうお腹ペコペコで」


「ううん、これからレストランで食べるつもりだよ」


「あ、じゃあご一緒させて貰おうっと。ところでエルさんは……まだ寝てますか」


「あはは……ねぼすけさんだからねぇ、エルは。何度揺さぶっても起きやしないんだよ。あんなにぐっすり眠れるなんて、正直羨ましいところもあるけどね」


 僕が苦笑すると、シアンもつられたように眉を下げる。

 廊下を歩いてレストランへの道のりを辿りながら、僕らは和やかに言葉を交わした。

 昨日食べた夕食の話。街で見かけた珍しい動物の話。汗だくになった特訓の話。少し浮ついた夜の話――流石に廊下では憚られるのでこれはすぐに打ち切った――等々。

 レストランに着いても話が途切れることはなく、僕は早朝にエインと剣の稽古をしていたことを話題に上げた。


「剣術や速度では、もう僕より彼の方が断然上なんだ。魔法では優っていると分かっていても……昔から剣の方にこだわって来た身からすると、やっぱり悔しいね」


「トーヤでも悔しがることがあるんだな。いつも飄々としてるし、何か意外かも」


「それは僕を高く買い過ぎだよ。僕だって普通の人間なんだから、それくらいは思うさ」


 エインの実力に抱く感情を素直に明かすと、ジェードは目を丸くして呟いた。

 水差しからコップに冷水を注ぎながら、僕は彼へ苦笑を向ける。

「そりゃそうだよな」と納得したようにこくこく頷くジェードの隣で、メニュー表を眺めるシアンは訊いてきた。


「一緒に稽古してたって言ってましたけど、当のエイン君はどこにいるんです?」


「んー、僕が稽古を止めた後も、エインは残って続けるって言ってたからなぁ……。まだ中庭にいるか、部屋に戻ったか、どちらかだろうね」


「エイン君、本当に熱心ですねー。わたしも見習わなきゃ」


 感心するシアンに相槌を打ちながら、僕は鍛錬に一日の殆どの時間を費やすエインを心配せずにはいられなかった。

 エインが夜毎、外に出て剣を振っていることは知っている。この前、皆で『雲上温泉』に浸かった時に指摘したけれど、それでも彼は眠りを惜しんで鍛錬することを止めていないようだった。

 このまま無理を続ければ、いつか倒れてしまう。そうなったらこれまで積み重ねてきたものも、無駄になってしまうだろう。

 

「彼には何か……焦りがあるのかもしれない。何かに駆られて過度な練習をしているような……そんなふうに見える」


 つい思ったことを声にしてしまった僕に、シアンとジェードも揃って黙り込んだ。

 エインの常軌を逸した鍛錬への傾倒――その理由はもしかしたら、僕にあるのかもしれない。僕への恩返しのために、悪魔を倒す使命を一刻も早く果たそうと、彼はこれほどまで練習を繰り返しているのではないか。


「あのドリス・ベンディクスの力を見た後だ、危機感を覚えるのも仕方ないと思うけどな……。見かけたら俺たちからも言っとくよ。何度も言えば、あいつもそのうち改めてくれるだろ」


「ありがとう。あと、これは一応君たち全員にも言えることだ。君たちも、あまり無理はしないでおくれよ」


 僕からのお礼と忠告に、シアンとジェードは頷きを返してきた。

 と、そこでやっと料理が運ばれてきて、僕らの興味はそちらに移る。


「わぁーっ、美味しそうですねー!」


 シアンが歓声を上げ、隣でジェードが口元の涎を拭う。四人がけの席で二人の向かいに座っていた僕は、そんな彼らの様子に微笑んだ。

 今日の朝食は薄焼きの生地に果実やナッツ類を載せたパンケーキに、熱々のコーンスープのセットである。噛めば甘酸っぱい果汁の染み出る果実と、ポリポリとした食感の楽しいナッツの相性は抜群で、僕らは決まって朝にこれを注文している。


「そういえばさ……フィンドラに来て驚いたんだけど、この国の人は朝からウォッカ飲んでたりするんだよね」


「あ、それわたしもびっくりしました! フィンドラの方々は朝から飲んで日中も平気でいるものだから、羨ましいやら何とやらって感じで」


「エルも酒に強けりゃ良かったのにな。彼女、弱いくせに好きなもんだから飲みまくるだろ」


「あはは……確かに。おまけに絡み酒だから、結構めんどくさいんだよね。でも、なんだかんだで付き合っちゃうんだけど」


 エルと二人きりで酒を酌み交わし、語り合う夜は、僕の中で最近の密かな楽しみとなっている。

 僕がその時によくせがむのが、彼女の学園時代の話だ。どんな魔法を研究して、どんなエピソードがそこで生まれたのか。彼女が何を思って【ユグドラシル】時代を過ごしていたのかを知るのは、魔導士としてためになったし、彼女のパートナーとして楽しかった。


「何だかいいですねー、そういうの。パートナーとの時間って大切ですもんね」


 そう言ってにっこりとジェードを見つめるシアンだったけど、その目は全然笑っていなかった。

 ……ジェード、何をやらかしたんだ。

 獣人の少年が汗をだらだら流しながら視線を明後日の方角へ向ける中、僕の当惑した顔に気づいたシアンは唇を尖らせる。


「聞いてくださいよ、トーヤ。ジェードったら部屋に戻ったらすぐにベッドに飛び込んで、そのまま寝ちゃうんです。わたしが同じ部屋にいるのにですよ。付き合ってるんだから、少しはわたしのこと意識してほしいなーって、いつも思ってるんですけど……」


「そ、そりゃしょうがないだろ! こっちだって毎日【神器】と魔法の鍛錬で疲れてんだから。それだけ本気で取り組んでんだよ、俺は」


 欲求不満を露にするシアンに、ジェードは弁明の言葉を慌てて述べた。

 残る悪魔は二人で、そのうちの一人はルシファーの力を宿すノエルさんだ。彼に勝つためには、これまで以上に強くならなくてはならない。だからジェードの言い分も汲んでやるべきだとは思う。でも……。


「シアンの気持ちも尊重してあげなよ、ジェード。求められたら互いに応える、それが良いパートナーのあり方でしょ?」


「――は、はい。反論の余地もありません、先生」


「分かればOKさ。これから気をつけたまえよ」


 生徒と先生に扮した僕らのやり取りを、シアンは微笑んで聞いていた。

 そんなこんなで食事も終わり、僕らの一日は本格的に始動していく。

 積み重なっていく鍛錬の時間。地味だけど必要不可欠な、準備段階。

 近いうちにやって来る「本番」のために、僕らは今日もひたむきにそれを続けるのだった。



 エミリア・フィンドラは枕に顔を埋め、ひとり居室で静養の時を過ごしていた。

 アレクシル王とエンシオ王子がマギアから帰還するまでの間、王の代行者として彼女は働き詰めであった。それが祟ったのか、昨日彼女は職務中に倒れてしまい、こうして休養を取る次第となっている。


「あぁ……陛下、兄上。私は弱い人間だったようです。本当に、申し訳ありません……」


 か細い震え声に、潜めた嗚咽が混じる。

 その自罰的な思考がエミリアをさらに追い詰めてしまっているのだと、彼女自身は気づいていない。王族として一時的にだが役目を果たせなくなった自分に、一体何の価値があるのか。エミリアにはその答えが何も見いだせなかった。

 と、そこで――彼女の耳に、ドアをノックする控えめな音が届いた。

 咄嗟に服の袖で目元を拭い、ベッドを抜け出たエミリアは「入りなさい」と来訪者へ声を投じた。


「エミリア殿下、おはよーございます」


 そっと扉を開けて入ってきたのは、ピンク色の髪の毛がよく目立つハーフエルフの少女であった。

 魔導士の黒ローブを身に着けたティーナ・ルシッカは、その手に何も持っていない。エミリアはまずそれを怪訝に思った。


「仕事の案件……ではないようですね。取り敢えず椅子に掛けてください、お茶を淹れますから」


「あっ、いいですよそんなの。殿下は休んでいてください、お茶は私が用意しますので」


 怪訝に感じたのはもう一点。アレクシル王にすらタメ口を叩くティーナが、エミリアに敬語を使っていることだ。

 どこかよそよそしく、遠慮している。ティーナらしくない。

 ソファに掛けてティーナがお茶を出すのを眺めるエミリアは、溜め息を吐いた。

 歯車が噛み合っていない――自分も、彼女も。やるべきことがあり、人から頼られているにも関わらず、本調子が出ない。


「殿下はたくさんお茶を揃えられてるんですねー。これだけあると、選ぶのも大変だ」


「どれでも構いませんよ。ところで……今日は何の用で?」


「殿下も察してるでしょう? ちょっとお話したいだけです」


 そう答えて間もなく、ティーナは淹れた二人分のお茶をテーブルに運び、エミリアの対面に座った。

 湯気の上がる紅茶を一口飲み、それからエミリアはティーナに訊ねる。

 

「今日は、『エミリアたん』とは呼んでくださらないのですね。あの不遜なまでの口調も、距離感も……普段のあなたはどこへ行ってしまったのですか?」


「呼んでほしいのですか? 友達でもあるまいし、本来王族と話すなら敬語、敬称を使うのは当然のことでしょうに」


 ティーナは真顔でそのようにのたまった。

 そして彼女のそんな態度に、エミリアは何故だか苛立ちを覚えた。


「ですがっ、あなたは常に立場に囚われない振る舞いをしていました! それがあなたのアイデンティティではなかったのですか!?」


 つい声を荒げてしまうが、もはや構わなかった。

 ティーナがこんな態度をするなど有り得ない。何が彼女を変えてしまったのか、何を思って彼女は今ここにいるのか、エミリアは追及したかった。

 詰め寄ってくる茶髪の王女に、ティーナはそこでふと、笑みを浮かべてみせた。


「ふふっ……エミリアたん。今、エミリアたんは何を思った? ――私が今日会いに来たのは、こうやってあなたを揺さぶるためだったんだ」


「は……?」


 唐突に口調を以前からのものに戻したティーナに、エミリアは唖然とするしかなかった。

 

「ね、考えてみてよ。私を見てエミリアたんは何を感じたのか――私に何を見出したのか。それが分かればきっと、あなた自身の本当の望みも浮き上がってくるはずだよ」


 ティーナはテーブルに身を乗り出し、エミリアへぐっと顔を近づけて問いかける。

 エミリアは間近にある少女の瞳の光を見つめながら、それに抱いた感情について考えた。

 

 何が彼女を変えたのか、それが第一に知りたかったことだ。その裏にあるエミリアの真意――それは果たして何だろうか。


「……分かりません。何というか……上手く言語化出来ないのです。私は、変わってしまったように見えたあなたを、心配しました。ただ……そこから浮き上がる私の望みなど、何のことか……」


「私を心配してくれたのは、私に変わってほしくなかったから。ティーナ・ルシッカの在り方という特殊なそれに、価値を見出していたから……違わない?」


 エミリアは、答えに詰まって口を閉ざした。否定はしない。だが、即座に肯定もできない。――分からなければ、人は答えようがないからだ。

 エミリア・フィンドラは自己を知らない。『王女』としての在り方に拘るあまり、『エミリア』という人格について自身でも理解することを放棄していたのだ。

 自我のない機械人形。統治のための機構。彼女は、それこそが王族のあるべき姿だと植え付けられた。

 人情を知る勇侠の士たるエンシオと、理性の化物として統治を行うエミリア――この対極にある二人の支配こそ、アレクシルの望む次代のフィンドラの姿であった。


「私はね、あなたを変えたいの。陛下に忠誠を誓っていても、そこだけは譲れない。人が人らしく生きることを否定して、ただの機械として扱うなんて見過ごせない。これは前からあなたに話しておきたかったことなんだ」


 アレクシルが不在の今しか機会はなかったのだ、とティーナは語った。

 ティーナは先日のレヴィアタンとの戦いで、恐怖に何の行動も起こせなかった。マモンを巡る戦いでも、彼女は敗北を喫した。『フィルン第二位』を自負しながら、このざま――自分は弱い存在なのだと、彼女は認めざるを得なかった。

 が、そんな中でも彼女は自分に出来ることを模索していた。そして導き出したのが、エミリアと触れ合い、彼女を変えることであった。


「ただの、機械……? あなたは何を言っているのですか?」


「やっぱり自覚はないよね。……この際だからはっきり言っとく。陛下はエミリアたんを人として尊重してないよ。彼は支配者とは人にして人あらざるものと考えている。王が支配のための機構となることで、完璧な統治は実現されると信じているんだ」


 エミリアは絶句する。敬愛していた父親は自分に何の情も抱かず、単に支配の道具として育ててきた――そんな事実は、認められない。認めたくない。

 父の期待に報いるためにこれまで頑張ってきたのに。父が向けてくれる笑顔だけが恋しくて、ひたすらに王女としての務めを果たしてきたのに。


 ――あの笑顔は仮面だったのですか。


 胸の内に大切に秘めていた何かがひび割れる音を、エミリアは聞いた。

 俯き言葉を失うエミリアに、ティーナはそっと手を差し伸べる。


「自分がどんな人でありたいか、考えてみてよ。それで何か困ったら私を呼んで。一緒に悩んであげるから」


 エミリア・フィンドラの心はこれを機に、静かに、だが着実に変化を始めていく。

 それがどのような結果をもたらすのか――今はまだ、起爆剤となった少女でさえ、知る由もなかった。



 復興が進むフィルンの街は、事件前の賑わいを早くも取り戻しつつあった。

 商店からは売り子の元気な声が響き、多くの市民や観光客がそれぞれの店を見物したり、買い物に興じたりしている。

 そんな中、ある服飾店にリオはオルトロスを伴って訪れていた。


「おお……よく似合っておるぞ、オルトロス。やはり何を着せても様になるのぅ、お主は」


 フィッティングルームで着替えた銀髪の獣人少年を眺めたリオは、そう感嘆した。

 男装を好むリオは男物の服のコーディネートに長けている。彼女が選んだ服を期待通り着こなしてくれたオルトロスに、リオは小さく拍手を送る。

 グレーのチュニックの腰元をベルトで締め、黒いぴったりめのズボンという衣装は、少年の細身なスタイルを前面に押し出したものとなっていた。

 

「……これ暑苦しくて、嫌いなんだけど」


 満足げなリオに対し、露骨に顔をしかめるオルトロス。(ドリス)の死から一週間が経ち、リオたちとの生活を始めた少年だったが、未だに衣服嫌いは健在だった。

 もちろんリオとしてもオルトロスの意向をなるべく尊重したい。だが、流石に素っ裸で外を歩かれれば大問題だ。こればかりは呑んでもらいたい――リオは心を鬼にして彼を説得し、今に至るという経緯があった。


「もう少し涼しい服が良かったかの? 裾の短いズボンなら向こうに……おや」


 少年を試着室に残したままズボンを探しに行くリオは、女性向けのコーナーにいる銀髪の少女に視線を向ける。

 立ち止まったリオに少女も気づき、つかつかと彼女の方へ歩み寄ってきた。


「あら、こんなところで会えるなんて奇遇ですね♡」


「うむ。ところでケルベロス、見たところ一人に見えるが、私たちとご一緒する気はないかの?」


 ケルベロスは優美な笑みを浮かべ、リオへ会釈する。

 初対面の頃のケルベロスは怪物の子としてリオたちの脅威となったが、今は共に組織に抗う味方だ。以前よりすっかり人間らしくなった彼女は、白い無地のワンピースに丸い鍔の帽子を被り、まるで街の生娘のようであった。


「一応言っときますけど、一人でいるのを可哀想だとか思ってるならお門違いですよ。あのカップルの間には混ざれないし、科学者さんたちの研究には興味ないしで手持ち無沙汰なだけなんですから」


「ヴァニタスはどうしたのじゃ。あれはお主とも関わりの深い女じゃろうに」


「あの子は蛇さんと一緒です。あんな科学者のどこがいいのか、私には分かりかねますがね」


 腕を組んで吐き捨てるケルベロスに、リオは苦笑する。

 ――一人で寂しいと正直には言えぬか。

 そんなふうに少女の内心を透かし見たリオは、ケルベロスの手を引いてオルトロスのもとへ連れて行った。


「……ね、姉さん」


「あら、誰かと思ったら……見違えましたね」


 目を見開くオルトロスだったが、ケルベロスも負けす劣らず驚いていた。

 服を纏い、髪も清潔に整えられた弟の姿はまるで別人のようで、一瞬ドキッと胸が高鳴ってしまう。

 ほんのりと頬が熱を帯びるのを自覚しつつも、ケルベロスは平然とした口調をどうにか繕って言った。


「修羅の道ではなく、人の道を取ったのね。いいんじゃないですか、それも一興ですから」


「……主を失って、戦う理由がなくなっただけだよ。リオが導いてくれたから、今オレはここにいる」


 素っ気ない態度ながら、内心ではケルベロスは弟分の変化を我が事のように喜んでいた。

 彼とは本当の家族ではない。だが、姉弟としての繋がりは確かにそこにあり――戦闘に明け暮れた『組織』時代から、言葉にはしなかったものの二人は互いに親愛の情を抱いていた。


「奇妙よね。培養液の中で育てられた、人でもない歪なモノである私たちが、人間みたいに生きて、人らしい情を誰かに向けているなんて」


「……うん」


 掠れた小声で漏らされるケルベロスの思いに、オルトロスは静かに頷いた。

 そんな二人の会話を穏やかに見守っていたリオは――ふと、エルフの優れた聴覚をもって、外からの何らかの騒ぎを聞きつける。


「……む?」


 号外、号外――新聞屋の切羽詰まった声だ。

 リューズ家の不祥事に関しては、今日の朝刊で世間に晒されているはず。何か新しい情報が入ったのか、それとも別の事件なのか。

 手に取っていた半ズボンを商品棚に戻し、リオは早足に店を出ていく。


「リ、リオっ!?」

「ちょっと、いきなりどこ行くのよ?!」


 背後から届く銀髪の姉弟の声も、リオは意に介さず突っ走った。

 通りの人の群れをかき分け、台車に号外を載せて叫んでいる新聞屋のもとにたどり着いた彼女は、そこから一部をひったくると一面に目を通す。 

 そこに記されていたのは――。


「『ストルムでクーデター勃発』……首謀者はノエル・リューズ、じゃと!?」

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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