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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第10章 【強欲】悪魔マモン討伐編/【嫉妬】悪魔レヴィアタン討伐編

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31  退廃の貴公子

「やはり来たな、侵入者!」


 シアンらの部隊がアマンダ・リューズの執務室であった部屋へ急ぐ最中、突如として前方に現れた男たち。

 彼らは鎧に剣といった重装備の警備兵だ。五名ほど廊下に立ちふさがる敵に対し、シアンらがとった手段は剣や魔法で攻撃することではなく、


「邪魔をするなら、撃ちますよ!」

 

 彼女らがそれぞれ手に持っているのは小型の銃。それこそがアナスタシアが作成した、敵対者を殺さずに動きを封じる一手であった。


「ふん、そんな玩具!」


 科学者が銃という武器を開発したのはここ四、五年のこと。未だ発展途上にあるその武器は、同じく遠距離攻撃を可能としている魔法より劣った存在である、というのが通説である。

 兵士らが盾を構え、こうして廊下を塞いでいれば侵入者たちはアマンダの部屋には辿り着けない。現在、彼らがいるこの廊下は三階だ。敵が適当な部屋からベランダ伝いに移動しようとも、その際は庭に配置されている魔導士たちが狙い撃ちにするだけ。

 敵が銃で戦うというのなら、負けることはない。そう思っていた彼らだったが――。

 

 撃鉄が起こされ、次いで鳴り響くはずだった発砲音は、彼らの耳には捉えられなかった。

 代わりに聞こえたのは空気の噴射音。無味無臭の霧が勢いよく兵士たちに浴びせられ、全くの予想外に彼らは正しく対処できなかった。


「ぐあっ……何だ、これは!?」

「目、目がぁ!?」


 ひりつく皮膚、こみ上げてくる咳、止まらない鼻水。何が起こったのか理解できずに兵士たちが叫喚する中、天井に()()()()()いたヒューゴはニヤリと覆面の下で笑みを刻んだ。

 兵士たちは、シアンやリオが正面から放った催涙ガスは食らってはいなかった。彼らが浴びたのは上からの噴射――床と垂直に構えられた盾の防御範囲からは外れた攻撃であった。

 気配を殺し、想定外の位置からの攻撃を行うヒューゴの活躍は、まさに鬼蛇(きだ)王国の(しのび)のようだった。


「へへっ、チビだからって甘く見るなよ」


 小声で得意になるヒューゴに、シアンは目礼で感謝の意を伝えた。

 悶え苦しむ兵士たちの脇をすり抜け、彼女らは先へと進んでいく。


 ――対策をされたらそれまでですけど、初見殺しには充分。良い味方を手に入れましたね、トーヤ!


 心中で高揚した声を上げるシアンは、同時に獣人の耳を澄ませて周囲を警戒する。

 トーヤからこの部隊の隊長を任せられている彼女は、先ほどの兵士の言葉から状況を推察していた。

 ――『やはり来たな』とあの男は言っていましたね。私たちの急襲は敵にバレていた。トーヤやエルさんも監視があったと話してましたし、敵側も何らかの動きがあると察していたのでしょう。


「っ、また敵……!」


 屋敷の角に位置するアマンダの執務室に到達する寸前になって、新たな守衛が姿を現す。

 隣接する部屋から飛び出してきた兵士たちが短弓から矢を撃ち放つのを捉え、リオは目を細めて木刀を閃かせた。

 

「ふッ――!」

「なっ……馬鹿な!?」


 風を纏い、振り抜かれる木刀。エルフの眼は不意に射られた矢の軌道をも正確に補足してみせ、その一つ一つを触れたそばから打ち落としていく。

 まさに神業――矢を全て防ぎ切ったリオに、兵士たちは驚愕のあまり言葉を失った。


「どうした! このくらいで狼狽えていては、神器使いなどには到底敵わんぞ!」


 一瞬にして男たちの懐まで入り込んだリオは、銃型のスプレーを彼らの顔面めがけて噴射する。

 敵の動きはまたもそれで阻害され、シアンらはリオに続いてアマンダの部屋へと突入していった。


「ここが、アマンダの……! 絶対に何かある、全力で探すのじゃ!」


 エルフの騎士が蹴破ったドアの先にあるのは、アマンダが死んで以来そのままの状態である執務室の風景である。

 フィンドラへ発つ前に侍従らが片付けたのだろう、室内は整理整頓が行き届いている。部屋の窓際に置かれた大きな机、書類の数々がファイリングされて並んでいる書棚、観葉植物に至っても埃を被っている様子はなかった。


「娘が死んでも、あの男はこの部屋を綺麗にしていた……ということかな」

「娘思いというべきか、それとも死人に囚われた憐れな男と呼ぶべきかのぅ」


 椅子に掛けて執務机を物色するヒューゴが呟くと、リオは皮肉な笑みを浮かべる。

 シアンと共に書棚のファイルを片っ端からめくっていくエルフは、傭兵団の二名にそれぞれ指示を出した。


「一人は見張り、もう一人は室内に隠し扉などがないかの捜査を。アマンダの寝室はこの部屋の隣じゃが、そこはここを調べ終えてからで構わん」

「「了解です!」」


 男女の団員がリオの指揮で行動していくのを横目に、シアンは感嘆の声を漏らした。

 

「トーヤは私を部隊のリーダーに選びましたけど、やっぱりリオさんの方が向いているかもしれませんね」

「む、そんなことはないぞ。私は参謀で充分。力を、神器を持つお主こそ、頭としては相応しいのじゃ」

「で、でも……ただ武力があるだけじゃあ、人の上に立つなんてとても――」

「いいから手と目を動かしなよ。俺たちに時間の余裕なんてないんだからさ」


 リオの言葉に頭を振ったシアンの声音は、自身をも否定するような色を含んでいた。その口調に僅かな危うさを感じ取ったヒューゴは、厳しい声で彼女らを戒める。

 青年からの叱責に「すみません」と謝ったシアンは作業を再開した。リオと共に黙々とファイルの背表紙のタイトルを一つ一つ確認していく彼女だったが、棚の上から下まで眺めても、悪魔に関していそうなものは全く見当たらなかった。


「あのアマンダさんのことです、そんな分かりやすい所に悪魔に関する情報を放置するわけないと思ってましたけど……。ここまで来たんだし、何かしら持ち帰りたいところですね」

「こっちもダメだよ。当たり前だけど仕事の書類しかない。どうやら彼女は本業と『組織』の業務は完全に切り離していたようだね」


 ヒューゴはそう推察するが、実際にはアマンダ・リューズが『組織』の運営に関わることは一切なかった。彼女が行っていたのは【悪器】使いとしての任務のみで、『組織』の本拠地の場所すら知らなかったのだ。当然、『組織』についても詳細は知らない。

 だがシアンらからしたら不幸なことに、アマンダは『組織』からの扱いに不満を持たなかった。――自分が中核に触れさせて貰えないのは、実績がないから。結果を出し、力を示せば父のように『組織』の実態を知られるだろう。彼女は、常にそう考えて『組織』の一助となるように『リューズ商会』のサブリーダーとして行動していたのだ。


「ここに手がかりはない、と考えるしかなさそうじゃな。寝室の方にも一応当たってみるが……結果はどうだかな」


 結果はやはり何も無し。寝室にあったのは、ベッドとごく一般的な女性の生活用品だけであった。

 シアンががっくりと肩を落とし、部屋を後にしようとしたその時、ヒューゴは床の一部分に違和感を覚えて声を上げる。


「ちょっと待って! ここの床板だけ、少し色が濃いような……」

「本当ですか!?」


 シアンもリオもそこに飛びついたが、目を凝らして見ても何も分からなかった。どう見ても、床板は一様に薄い茶色だとしか思えない。

 

「押してもびくともしないし、取っ手のような窪みも見えないし……本当に、ここに何かあるんでしょうか?」

「いや、あるね。俺の目を信じて欲しい」


 小人族は亜人族の中でも、特に視力や色覚に優れる種族だ。シアン達には判別できない微細な色の違いも、彼には分かる。

 ヒューゴは縦に20センチ、横に8センチほどの幅をした床板を、どうにか剥がそうとする。そんな彼の背後から覗き込んだ傭兵団のヒーラーの女性は、咳払いすると申し出た。


「私ならどうにか出来るかもしれません。恐らく魔法で保護されているのでしょうが、術者が死んでいるなら解除も容易ですから」


 その床板に指を添え、短く呪文を唱える。すると彼女の指先に白い光が仄かに灯り、次いでカチャリ、と解錠音が小さく鳴った。


「よし、開いた……!」


 ヒューゴが床板を上から押すと、先程までとは異なり、いとも容易くそれは沈み込んだ。

 板は10センチほど下がり、床下のスペースが露出する。ヒューゴは、空いた直方体の空間の側面に何か木箱のようなものがめ込まれているのを見つけ、それを引きずり出した。

 部屋の内装と同様、箱も埃を被ってはいない。


「この中に、アマンダさんの隠した何かがあるんですね」


 シアンらは青年が箱の蓋を開けるのを固唾を飲んで見守った。

 彼がそこから取り出したのは――一冊の、手帳であった。表紙にはアマンダのサインと日付が書かれている。


「この日付……私たちがリューズ邸で働き始めた日です」

「む、本当かシアン? 果たして偶然なのか、それは中を見てのお楽しみじゃな」


 ヒューゴが開いた1ページ目に書かれていたのは、アマンダ・リューズの日記であった。



 他方、司令部と化したリューズ邸内の会議室にて、ラファエルは部下たちに命じていた。


「第7小隊、第8、第9小隊はアマンダ様の寝室へ至急向かえ! 神器使いの少女らが現れた、確実に捕らえよ!」

『し、しかし、我々はルーカス様をお守りしなくては』

「アマンダ様の遺品が暴かれようとしているのだぞ!? お前たちは死者の尊厳を守ろうとは思わないのか!」

『イ、イエス、サー!』


 その答えを聞くと同時に通信を切り、即座に別の箇所へと魔道具の通信機を繋ぐ。

 

「ラファエルだ。そちらに兵を向かわせた、早急に離脱せよ」

『は、はい! 了解しました!』


 トーヤらの作戦における目標は二つ。まず第一にリューズ家が悪魔に関与した証拠を掴むこと。そして第二に、ルーカスを捕縛し『リューズ』から引き剥がすこと。

 第二の目標にはトーヤの私情が大いに絡んではいるが、そんなものラファエルにはどうだっていい。

 これは契約だ。命を見逃して貰えた恩に、ラファエルは仇で報いるつもりなどない。少なくともこの作戦中は少年らの味方として行動する。

 アマンダの遺品を入手したとの報告があった以上、そちらの戦略的重要度は下がった。

 事前に兵の登場を知らせておけば、シアンらも適切に対処してくれるはず――ラファエルは、そう少女らの実力を信頼していた。


「ラファエル様、ノエル様から通信が入っています。繋げますか?」

「当たり前だ、早くしろ!」


 諜報部の兵に訊かれ、彼は苛立ち混じりに唾を飛ばして急かす。

 ラファエルがノエルから授かった悪魔の力により、この会議室の者は全員が彼の洗脳下にあった。リューズ邸でトーヤたちを迎撃する部隊の主導権は、まさしくラファエルが一手に握っている。


『ラファエル、こちらにトーヤ君たちが現れた。外の暴漢どもに当たっている兵をこちらに割くんだ。私はトーヤ君を捕らえる』

「承りました。トーヤ以外の者は兵たちに足止めさせます。兵の移動に多少の時間はかかりますが、ご容赦ください」


 今のところは計画通りだ、とラファエルは独りごつ。

 ユーミやフェンリルの部隊からも、ルーカスの部屋は目前だとの報告があった。ラファエルが兵をそこから離れさせたため、ルーカスは一人きりで彼女らと遭遇することになる。

【悪器使い】が相手だろうが、二人の【神器使い】に二人の【怪物の子】でかかれば敗北を喫すことはないはずだ。

 あとはトーヤらがノエルに屈しなければ、作戦は完了する。


「ふふ……この事件は明るみにはならない。不幸にも各新聞社はリューズと、いや私と、癒着しているのだから。

 強者への反骨精神、犠牲をも厭わない冷徹な心、何よりその実行力――。素晴らしいよトーヤ君。エイン君もそうだが、君たちには素質がある。反逆者としての素質が」


 腹の底から込み上げてくる笑いが止まらない。

 こんなにも強い魂を持った少年たちと共闘できるなど、何という幸福、何という栄光か。

 ラファエルは心酔していた。彼は黒髪の少年にかつての戦友の横顔を重ね、そこに希望を見出していた。


「トーヤ君……君の戦いを見せてくれ! 戦いの果てに何を掴むのか、全てを!」


 机に置かれた水槽のような魔道具を覗き込み、その水面に映る少年の表情をラファエルは眺めた。

 映像の視点を上からの俯瞰に変えた彼は、しばしノエルと少年の戦闘を観賞することにする。



「ドリス、ドリス! なんで通じないんだ、ドリス……!?」


 ルーカス・リューズは憔悴しきっていた。

 カーテンを閉め切った寝室の中、ベッドを抜け出て小机上の『魔導通信機』を操作するが、愛するメイドからの応答は一切ない。

 水晶玉に何度触れ、何度呼びかけようがドリスの声がそこから響くことはなかった。


「ドリス――俺は、お前がいないと駄目なんだ。お前だけが、俺を満たしてくれる存在なんだ……」


 外からは激しい戦闘の音が届いてきている。

 抗争だ。リューズに刃向かう勢力による、襲撃が起こっているのだ。それを頭で理解しながらも、ルーカスは固まってしまっていた。

 ――俺には何もない。トーヤ君のように【神器】も、親父のように【悪器】を持つこともなく、こうして立ち止まったまま。

 前へ進まなくてはいけないのは、彼も理屈で分かっていた。それでも感情がついて来ないのだ。胸にぽっかりと空いた穴が、その中心からどす黒い瘴気を放ってくるような気がする。それに加えて、聞こえてくる声――。


『何故あなたは生きているの? 何も出来ないくせに。英雄にも悪役にもなり損なった、中途半端な脇役でしかないのに。私の代わりに、あなたが死ねば良かったのよ』


 あなたが死ねば。あなたが死ねば。あなたがあなたがあなたがあなたがあなたが――――。

 

「あああああああああああああああああ!!?」


 ルーカスは絶叫した。

 彼が見ているのは姉の幻覚。自分の首をくびろうとしてくる白い手に抵抗もせず、青年は責め苦を甘美として享受する。


「あぁ……姉さん。俺を殺してよ。俺も同じ場所に逝きたいのに……死のうとすると身体がそれを止めるんだ。『生きろ』って、誰かの叫びが聞こえるんだ……」


 それは抗えない呪いだった。ドリス・ベンディクスが彼にかけた、生という呪縛。悪魔の宿主として狂うまで育て上げられているルーカスが、レールから外れないよう制御するための楔だ。

 

 廊下を何者かが走る足音がしても、ルーカスは逃げる選択すら忘れていた。彼はもう、幻覚と現実を区別できない。

 だから、黒い覆面の集団が目の前に姿を現しても、ルーカスはきょとんと彼らを見つめるだけだった。


「何だい、君たちは? こんな時間に……もしかして、外の騒ぎと何か関係があるのかな?」


 ユーミを頭とする部隊は、ラファエルの画策もあって妨害されることなくこの2階を突破し、ルーカスの元まで到達していた。

 寝室のドアを蹴破り、ルーカスを捕縛しようと得物を構えたジェードらだったが――青年のただならぬ様子にその場で立ち尽くす。


「ルーカスさん、ですよね……?」


 獣人の少年は恐る恐る、白髪の青年に訊ねた。

 彼らが知っていたルーカスは快活で爽やかな好青年だった。しかし、今この部屋にいる男にその面影はない。顔には覇気がなく、目は泣き腫らしたように赤い。部屋中に立ち込める臭いはアルコールのものだ。床には酒瓶が何本も落ちている他に、使用済みの避妊具が放り出されている。

 姉を失った傷心を、酒とセックスで埋めている青年。もともとルーカスと面識のないユーミは、単純に彼をそう捉えた。


「この人がリューズ家の息子、か……。弱ってる人を無理やり押さえつけるなんて、嫌いなんだけど……やるしか、ないわね」


 焦点の合わない瞳で自分たちを見つめてくるルーカスに、ユーミは気乗りしなさそうに呟いた。

 腰の杖を抜いて一歩前に出た彼女は、ジェードとアリスに後ろへ引くように告げる。


「あんたたちは彼に良くして貰ってたんでしょう。だから、きっと情が邪魔をする。リル君、ヨルちゃん、サポートを頼むわ。殺さない範囲でこの人を無力化するのよ」

「分かったぜ」「了解」


 怪物の子たちはそれぞれ短く了承し、ヨルは窓際、リルはドアの側に立ってルーカスの退路を塞いだ。

 

「少し乱暴にするけど、許してくださいねッ!」


 叫び、杖をしならせた瞬間――ユーミの【神器】から放たれた光は、一本の鞭と化した。

 音より速く青年の身体に巻き付いたその鞭は、ルーカスをベッド上に叩きつける。


「がはっ!? 何をするっ……!」

「あなたがどれだけ自分を保ってるのか知らないけど、ノエル・リューズの息子である以上野放しにしてはおけないのよ!」


 もがくルーカスの体に馬乗りになって、ユーミは完全に彼から自由を奪った。

 引きこもりの魔族が巨人族の腕から逃れられるわけもなく、青年はすぐに抵抗が無駄だと悟る。

 そこへダメ押しするようにヨルが素早く駆け寄り、ルーカスの口内に自身の指を突っ込んだ。


「むぐっ!?」

「これは麻痺毒……死にはしないけど、およそ半日の間、筋肉の硬直を引き起こす」

「よーし! よくやったぜユーミ、ヨル!」


 ルーカスの捕縛はこれにて完了した。彼を無事にアナスタシアの待つ馬車へ運び込めば、ユーミらの部隊の仕事は終わりだ。

 静かにヨルムンガンドの操る毒を語るヨルと、飛び跳ねて年相応の少年らしく喜ぶリル。そんな二人を横目で見つめつつ、ユーミはルーカスを横抱きに持ち上げた。


「ジェード、アリス、警戒は絶やさないでね! 無事に帰還するまでが任務なんだから」


 ユーミの言葉に二人は頷く。部屋を出てもと来たルートを逆走するユーミを護衛するように、彼らは【怪物の子】らと共に並走していった。

 ティーナお手製の腕時計型『魔力灯』で前方を照らしながら、彼らは無人の廊下を行く。

 しかし、階段を駆け下り、玄関ホールを通過し、前庭へ繋がる扉を開いたその直後――。


「お疲れ様、君たち。そして久しぶりだな、我が作品たちよ」


 若くして総白髪の頭髪を長く伸ばした、白衣の科学者がそこで待っていた。

 隣にグレーの髪のエルフを従えた男の名は、アズダハーク。またの名を、『蛇』といった。

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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