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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第2章  解放編

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11  談話

「やあ、トーヤくん。はじめまして。俺はルーカス・リューズだ。よろしくな!」


 ルーカスさんは明るく言って僕に握手を求めてきた。


「こちらこそ、はじめまして。ツッキ村のトーヤです。……彼女がエルで、彼らはノエルさんに解放して頂いた元奴隷たちです」


 僕は握手に応じる。ルーカスさんの手はゴツゴツしていてマメが幾つもあった。きっと、武芸をしているのだろう。

 そして僕は、自分たちの身分を明かした。

 この人……ルーカスさんは、明るくていい人そう。それが僕の第一印象だった。


「こんなだだっ広い部屋で話すのもあれだし、応接間があるんだ。そこで少し話さないか?」

「いいですね。そうしましょう」


 僕たちはルーカスさん、アマンダさんに案内され、応接間に通された。

 応接間は玄関ホールを通った先の廊下のすぐ手前にあり、中には絢爛豪華(けんらんごうか)な美術品の数々が飾られていた。


 ルーカスさんとアマンダさんがテーブルを挟んで向かいのソファーに座ると、僕もソファーに腰を下ろした。

 エルとシアンたちは後ろで立って待機している。


「お茶でも出しましょうか。バトラー、用意して」


 アマンダさんが言うと、執事がどこからともなく出てきて「畏まりました」とお辞儀をする。

 ……あの執事さんどこから出てきたんだろう。速すぎてわからなかった。


「ごめんな、小さいソファーしかなくて。本当は皆が座れるようにしたかったんだけど」


 ルーカスさんが申し訳無さそうに頭を掻いた。


「いえいえ、大丈夫ですよ!」


 プレーナが少々上がり気味の声で言う。商人の家とはいえ、貴族と同等かそれ以上の立場がある相手だ。彼女らも緊張しているのだろう。


「では、始めましょうか」


 アマンダさんの言葉で僕らの談話が始まる。


「僕たち、ノエルさんに、ここで働かせてもらうことになりました。これからよろしくお願いします」


 僕は二人に頭を下げた。エルたちも同じようにする。

 するとルーカスさんは、笑って「顔を上げてくれ」と言った。


「俺たちは表向きは主従の関係にあるが……俺は、人と人として、君たちとは対等な関係でいたいと思っている。だから言いたいことがあったら何でも言ってくれ」


 大金持ちの家の息子なのに、僕たちと対等でいたいと言う。ノエルさんもそうだったけど、この人も大分変わってる人だ。


「はい、わかりました。では一つ聞きたいことがあります」

「何だ? 言ってみろよ」


 ノエルさんは僕のことを気に入ったと言って、僕らに手を差し伸べてくれた。

 だけど、それは僕の【神器】の力が欲しかったからじゃないのか。

 僕はノエルさんにここで働いてもいいと言われてから、その疑念をずっと抱いていた。


 僕がそのことを口に出すと、ルーカスさんは曖昧な笑みを浮かべた。


「それは……どうだろう。そうじゃないとは言い切れないかな」


「そうですか……」


「親父は貪欲な人だから、手に入るものは何でも手に入れようとするんだ。だから……君のその、【神器】の力を利用することも、もしかしたら考えているかもしれない」


 後ろのエルたちの雰囲気が若干変わったように感じた。僕はちらっと彼女らを見て制する。

 丁度その時、さっきの執事さんがお茶を人数分運んできた。丁寧にお菓子まで一緒にあった。


「あらあら。頂きましょうか」


 アマンダさんが僕らにお茶を勧める。お茶はちゃんとシアンたちの分も用意されていた。


「では、頂きます」


 僕は差し出されたお茶を口にした。

 芳醇な香りと味が口の中を満たし、緊張状態にあった僕の心を落ち着かせてくれた。


「うちが所有している畑から採れた紅茶よ。絶品でしょう?」

「ええ、本当に美味しいです」


 アマンダさんは嬉しそうに微笑む。つられて僕も少し表情を崩した。


「それじゃあ、仕事について話をしましょう」


 二人の表情が真剣なものに変わる。僕も気持ちを引き締め、二人の話を待つ。


「……ここで貴方達がどのように働くかだけど、それは私達が自由に決めて良いと父は話していたから……。ルーカス、どうしましょうか?」


 アマンダさんが意見を仰ぐ。ルーカスさんは少し考えてから、言った。


「うーん、そうだなぁ……まずは使用人として働いて貰おうかな。それでもいいかい? トーヤくん」


 僕は二人の目をしっかり見て、頷いた。


「はい、それで、構いません!」


「心配するなよ。働きが良ければ昇格もさせてやる。他にも、君たちがやりたいことを頼めば、その事次第じゃこちらでも動くことが出来る」


 僕が思っていた以上の好待遇だ。

 そこで、僕は一つ頼み事をした。


「僕、この大剣を上手く扱うことが出来なくて……どなたか剣術に長けた方がいれば、仕事の傍ら教えて頂きたいのですが、それは出来ますか?」


 ルーカスさんはすぐにそれを了承した。


「よし、やってやろう」

「と、言いますと……ルーカスさんが教えてくれるんですか!?」


 僕は驚く。彼が武芸をしていることはわかっていたが、まさか彼が直接僕に教えてくれるなんて思ってもみなかった。


「ああ。この俺が大剣の使い方を一からみっちり教え込んでやるよ」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 僕は思わず笑みを浮かべた。

 アマンダさんが立ち上がり、部屋のドアを開ける。


「さあ、まずは貴方たちがこれから寝起きすることとなる、使用人室へ向かいましょう。使用人たちは新しい仲間が来るのを心待ちにしていたわよ」


 この邸の使用人たち……どんな人達だろう?

 仲良くやれたらいいな。特にエル……何かやらかさないか心配だ。

 でも今は、気持ちを切り替えていこう。


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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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