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黄昏英雄譚 ~アナザーワールド・クロニクル~  作者: 憂木 ヒロ
第9章 『ユグドラシル』編

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20  戦乱の幕開け

『フィライト』はアルフヘイムの辺境も辺境、軍の駐屯地がある他には特に何もない田舎町である。

 軍隊が常駐しているとはいえ、普段訓練が行われている以外にはそれといった事件も起こっておらず、紛争らしいものももう何十年もなかった。

 そのため兵士たちは平和ボケし、形だけの訓練が常態化して、あまつさえその事実は政府には隠蔽されていた。近年、『中層』全体でも戦争が全くと言っていいほど勃発しなかったので、彼らの隠蔽は発覚することすらなかった。

「見えない敵から国を守る穀潰し」――国軍に税金を持っていかれる不満から民たちがそう口にするようになってからも、既に長い。

 

 事が起こったのは、そんな矢先だった。

 

『フィライト』にダークエルフのゲリラ軍が押し寄せ、突如として襲撃を開始したのである。

 まさに青天の霹靂――戦を予感することすらなかった軍の対応は、案の定遅れた。

 時間が早朝だったこともあり、士官たちは眠りこけていた兵士たちを叩き起こすところから始めなくてはならなかったし、戦闘が開始されてから彼らを苦しめたのは、敵の巧妙な戦術に他ならなかった。

 光魔法で自らの見た目をエルフ族と同じように見せかけたダークエルフの兵士たち――一般市民と大差ない容貌の彼らは、幾手にも分かれて襲撃を行うダークエルフ軍とは別に、影から支援を行い、またエルフ軍への不意討ちも何度も仕掛けてきた。

 

「嘘だろ……奴ら、どこにそんな力を隠し持ってたんだ……?」


 一人のエルフ兵が地面に膝を屈し、炎上する民家を力なく見上げた。

 緑豊かなフィライトの森も、街も、そこに住む人さえも、圧倒的な暴虐の前に燃え尽き、色褪せていく。

 エルフはダークエルフを見誤っていたのだ。彼らが非力な民族だと見下し、反逆されても軽く抑え込めるだろうと思い込んでいた。

 しかし、現実は異なっていた。着々と力を蓄えていたダークエルフたちは、何名かの戦の神の力も借りて『ミッドガルド』の人間軍にも劣らない優秀な軍隊を作り上げていたのである。

 

「俺たちはもう、我慢の限界なんだ――俺たちのために死ね、哀れなエルフの兵士よ!!」


 燃え行く家の前に崩れ落ちた兵士に、ダークエルフの歩兵の一人が近づいた。彼は激情に任せて剣を抜き、眼前の敵兵に一切の容赦なく振り下ろす。

 肉塊が飛散し、男の鎧を返り血が濡らすが彼は表情一つ変えなかった。

 

「ぬくぬくと守られてきた連中に、俺たちがやられっぱなしでいると思うなよ。俺はお前らを絶対に許さねえからな」


 ダークエルフ軍を確かに後押ししているのが、彼らの持つエルフ族への憎悪である。

 人の感情が有する力は絶大で、時にはどんな剣や魔法よりも強い武器となるのだ。

 連鎖した憎しみが殺戮を生み、その殺戮は更なる恨みを別の者へ植え付ける。

 世界は今、シルやパールたちの望む形とは正反対の方向へ突き進もうとしていた。



 ――どうして、王城に報せが届くのがあんなに遅れたの。


 シルがまず疑念を抱いたのはそこだった。

 早朝4時に襲撃が始まったのなら、戦場での混乱があったとはいえ遅くとも30分後には連絡がないとおかしい。エルフ族がいくら魔力車などの【魔導機械】に頼らない民族とはいえ、各所に【言霊】魔法の通信機が置かれていないはずがないからだ。


(通信機が壊されたって線が妥当ね。それでも……高位の魔導士なら私のように飛んでいったり、【言霊】を首都アリアまで飛ばすことだってできたはず。国境に精鋭の一人も置かないなんてあり得ないし……まさか、有力な魔導士が全員潰された――?)


 現在は13時を過ぎた頃であり、戦闘開始から9時間も経ってしまっていた。劣勢を告げた伝令兵が飛んできてから経過した時間を考えると、もう戦場では形勢が決まってしまっているかもしれない。

 全速力で飛んでも、シルが『フィライト』に着くまでにはあと30分はかかる。

 果たして間に合うのか――シル一人が動いてどうにかなる問題ではないかもしれないが、彼女には策があった。間に合いさえすれば、その魔法でダークエルフ軍の侵攻を少しは足止めできる。


(間に合うか間に合わないかじゃなく……間に合わせるのよ。私の魔法をもって、彼らを止めなくては)


 女王ティターニアの動向も気になるが、それは後回しだ。

 今はただ、この先の戦いにどう臨み、調停するべきかを考えるのみ。

 

(エストラス君、カトレアちゃん、アイル君――。あなたたちの生きる世界の平和は、私が守るからね)


 決意と覚悟を胸に魔女は飛翔する。

 目下、彼女の視線の先には、森林や市街地が炎上する赤々とした炎がちらつき始めていた。

 


「くそっ、撤退だ!! これ以上は持たん!」

「逃がすな、一人残らず始末しろ!」


 エルフの指揮官が叫んだと思えば、追撃するダークエルフの騎士が指示を飛ばす。

 場所は『フィライト』市街地西端。街の東側はとうに制圧され、残った西側もじわじわと攻められている現状にあっても、エルフ軍に反撃の糸口は見えていなかった。

『フィライト』に駐在していた兵士の人数は3000人。そのうち半数が死者もしくは重傷者と成り果て、エルフ軍の戦力は大幅に削がれている。


「神の力は偉大だね。この魔導具……中々に使える」


 ダークエルフの騎士の青年は一人、戦いの順調な経過にほくそ笑んでいた。

 エルフ軍の兵士たちが最後の砦としているレンガ造りの三階建ての市役所前の広場へ、彼は黒馬に乗って軍を率いる。

 数少ない住人が死ぬか逃げるかした幅広の路地を悠々と通過した彼は、広場で足を止めると建物に立てこもる敵の指揮官へ声を投じた。


「エルフの指揮官よ、これが最後の通告になる! 今すぐに白旗を上げ、我々に恭順せよ!! 繰り返す、今すぐに白旗を上げ、我々に恭順せよ!!」


 自身の髪と同じく漆黒の鎧を纏う騎士の通告に、返す言葉はなかった。

 屋上や窓から杖と弓をこちらへ向けてくる兵たちの姿を確認し、騎士は傍らの女性に横目を送る。


「残念ながら奴らは諦めないらしい。終わらせちゃって、防御は僕に任せていいから」

「yes。――魔導銃士隊、狙撃準備!」


 銀髪の女性士官の声と共に、彼女の背後に並んだ部隊が一斉に武器を構えた。

 各属性の魔力の光が溢れだす銃口が、仇敵の隠れる箱を狙う。その魔弾は断罪の光だ。エルフがダークエルフを不当に差別し虐げた過去を裁き、粛清する神意の炎。

 

「ネメシス様……全てはあなた様のお陰です。あなた様がいなくては、我々はここまで戦えはしなかったでしょう」


 銀髪の女が感謝を捧ぐ女神、ネメシス。

 彼女は『アスガルド』にも『ヴァナヘイム』にも所属しない、【大罪の悪魔】との戦争で多くが死に絶えた神族の系譜の数少ない生き残りであった。司る事象は、「復讐」。長い時の中で、彼女は幾度となくそれを望む者に力を与えてきた。それは今回も同じなのだが、これまでと異なる点は――まるまる一つの軍隊に能力を分け与えたということである。


「撃て――!!」


 頭上より降り注いでくる魔力を纏う矢の雨に対し、ダークエルフ軍の【魔導銃】が火を吹いた。

 その瞬間、曇天の下、紫紺の光が辺り一帯を満たす。

 音もなく放たれた女神ネメシスの恩恵を授けられた銃撃は、両軍の視界を一時的に奪い取った。

 レンガ造りの屋上で、弓兵隊を指揮している初老の男が舌打ちする。


「ちっ、妙な武器を使いやがって……」

「光線銃ですね。上層では既に汎用装備として普及している魔道具です。軽く取り回しが良いですが、威力にはやや欠けます」

「説明感謝する、我が副官よ。――さて、この老兵をがっかりさせるような武器じゃなきゃいいんだがな」


 その会話を、ダークエルフの青年騎士は《()()》の力によって得た超人的な聴覚で聞いていた。

 ――連中の頭の中はお花畑か! あいつらは今、自分達の置かれている状況が分かっているのか!? 


「ちょっとは危機感持ってほしいなぁ……。叩きのめされないと分からないなんて、面倒な連中」

「皆殺しにしますか、マスター」

「いいや……あいつらは生け捕りにする。エルフにまともな情が少しでも残っているなら、交渉材料として使えるだろうさ。本当は王族や貴族だったら最高なんだけど……ま、こんな辺境の、しかも戦場に出てくるとは思えないし」


 ネメシスの神器使いの青年は、背中に吊っていた大型のライフルを両手に構えながら答えた。

 スコープは覗かず、光の段幕越しにエルフ軍の様子を観察する。

 すぐに予想通りのどよめきが敵軍に起こり、青年はニヤリと笑みを深めた。


「なっ、馬鹿な……っ! 無傷だと――!?」

「不思議かい、エルフの老兵。ただの光線がどうして魔力を纏った矢を完璧に防げたのか」


 声が届くはずはないが、青年は敵へ呟きを送る。

 豪雨のごとし音と勢い、量のあった《魔矢》の攻撃。少数の部隊なら瞬く間に蜂の巣と化してしまうこの戦術は、エルフ軍の古来からの十八番だった。

 が、しかし――その矢は一本たりともダークエルフたちに触れることさえ叶わなかった。

 漆黒の鎧の兵士たちの足元に散見される、何かが燃え尽きた後の灰……これを視認した途端、エルフたちは彼我の実力差を明確に自覚させられた。

 同時に、ここまで9時間近く粘ってきた彼らの心は完全に諦めへと傾く。

 

「もう、駄目なのか……。援軍は――援軍はいつになったら来るんだ……?」


 自分達の力では持ちこたえられそうにない窮状に、エルフの指揮官は項垂れて唇を噛んだ。

 上の立場の者がこれでは、兵士たちの士気も下がってしまう。そのことを理解していてもなお、指揮官は諦念を隠しきれなかった。


「第一、第二歩兵部隊、突入せよ! 魔導銃士隊は援護しつつ、彼らの後に続け! 騎兵隊は僕と共にここで待機!」


 歩兵小隊と魔銃の使い手たちが、青年騎士の号令でエルフの最後の砦へ突入していく。

 それを完璧に阻む余力はエルフたちに残されてはいなかったが、彼らはやれる限り抵抗する覚悟でいた。どうせ負けるのなら相手になるべく深い傷を与えて負けた方がいい。

 閉めきられ内部でバリケードが張られた鉄の扉が、魔銃の一撃で破壊された。

 開いた大穴から歩兵たちが一挙に侵入し、積み上げられていた机や木箱を強引に蹴り飛ばして進んでいく。


「――ふぅ。ひとまず、何とか終えられたな」


 神器使いの青年は、ここでようやく緊張の糸を緩めた。

 建物内に入れればもはや勝敗は決したようなものだ。この後から援軍も到着する予定になっているため、多少粘られようが先に力尽きるのは敵軍だろう。

 ――勝った。ネメシスの神器の初陣は、勝利で終わったんだ。

 この勝利は青年の初めての大きな戦果と言えたが、しかし彼はそれを手放しでは喜べなかった。


 ――ダークエルフとエルフは元来、友好関係にあった。僕にだってエルフの友人はいる。本音を言えば、彼らとは手を取り合っていきたかった。


 戦争へ突き進もうという国の世論や、彼を神器使いに推す周りの声に青年は逆らえなかった。

 自分は弱い、青年はそう自覚している。だが、自覚しながら彼はそれを表に出すことなく、強い騎士を演じていた。


「お前たち。大勢は決したが、戦では何が起こるか分からない。警戒は解かずにいてくれよ」


 そう、戦というものは海のようなものなのだ。

 常に流動し、時には大荒れする、完璧な予測はあり得ない大いなる脅威。

 その証拠に――。


「攻撃が来る!! 盾を掲げよ!!」


 ダークエルフの俊秀の耳がヒュッ、という射出音を捉えた次の瞬間、彼らの頭上には赤い魔力の光が閃いていた。

 防壁魔法を展開しながら、青年はその魔弾を放った何者かの姿を空に確認する。

 楕円形をした白色の飛行物体――『上層』で使われている飛行機と同型のものだ。

 まさか人間まで参戦してきたのか、と黒髪の青年は瞠目する。

 

「――っ、お前たち、無事か!?」


 攻撃に感づいて即座に防壁を張ったつもりだが、守りきれなかった部分もあるかもしれない。青年が訊ねると、特に負傷者が出たという声は聞こえてこなかった。

 仲間の無事に胸を撫で下ろす間もなく、彼は突如現れた新たな敵へ視線を戻す。


「ただでは終わらせないって訳かい……。最後まで面倒くさい連中だなっ」


 半透明の紫紺の防壁を維持しつつ、青年は上向けたライフルのスコープを覗く。

 すると驚くことに飛行機上部の窓が開き、そこから姿を現した人影が見えた。

 長い髪の毛や細身のシルエットからして、女性だ。女の軍人は珍しくはないが……たった一機、しかも女の操縦士とは、援軍としては不十分なのではないか。それとも、彼女一人でどうにかなるほど、あの女は強いのか。

 青年が怪訝に思っていると、彼の思いを見透かしたかのようにその女は魔法で拡大した声を投じてきた。


「卑小なるダークエルフの軍隊よ、よく聞きなさい! わたくしの名はティターニア、エルフ族の偉大な女王! 私の可愛い子供たちに傷をつけたお前たちの罪、今ここで裁いてあげるわ!」


 しばし言葉を失ったのは神器使いの青年だけではなかった。この場のダークエルフ軍全員、そして建物内で戦闘中の両軍が、思わぬ参戦に絶句する。

 一時訪れた沈黙の後――始めに動いたのはエルフ軍だった。

 彼らは女王の登場に、負けられない、と消える寸前だった士気を取り戻す。防戦一方だった彼らのどこにそんな力が隠されていたのか――銀髪の女士官が驚愕する中、建物内の戦況はその一瞬、エルフ軍の優勢に傾いた。

 

 それを知るよしもない外側のダークエルフの青年は、気丈にも女王ティターニアの言葉を鼻で笑い飛ばした。


「はっ、何が罪だ! 罪人はお前だろう、エルフの女王! その傲慢がどれほど我々を苦しめてきたか、お前は知っているのか――食うものもなく餓死するしかない子供たちの存在を、お前は知っているのか!!」


 青年の叫びはダークエルフたちの総意であった。

 両種族の関係をねじ曲げた張本人を前に、怒りに燃える青年。彼を見下ろし、ティターニアは気に入らなさそうに眉をしかめた。


「だったら? 他種族の子供が飢えて死のうが、私には関係ないわ。私には私の国と民があればそれでいい! お前たちの国がどうだとか、そんなことに興味なんてないの」

「あぁ、そうかい……思った通りの大悪党だ。逆によかったよ。エルフの女王に手をかける躊躇いが、この瞬間に僕たち全員から失われたのだから」


 ティターニアの背に漆黒の翼が生え、飛行機を飛び出して天空に舞い上がったことに驚くことも、青年は忘れていた。

 憤怒に支配される彼は、己の《神化》の発動のみを意識する。

 青年は腰からリボルバーを抜き、自身の心臓へその銃口を向けた。ネメシスの神器の片割れで己を撃ち抜くこと――それこそが、神化発動のトリガー。その器にない者は命を落とすが、選ばれし英雄ならばまさしく神のごとし比類なき力を手に入れられる。

 

「女王ティターニア……よく聞けよ。僕の名は、フェイ。女神ネメシスより神器を頂いた、英雄の器! 見せてあげるよ――これがッ! 僕の、《神化》だッ!!」


 空を仰ぎ、フェイという名の青年は叫ぶ。漆黒の瞳を上空の女王へ照準した彼は、憤怒に震える指で銃の引き金を引いた。

 紫紺の光が銃口から溢れだし、それは光線となってフェイの心臓を貫く。

 

「ぐっ……うおおおおおッ!!」


 雄叫びを上げる彼の身体は漆黒のオーラに纏われ、陽炎のように揺らめいて姿を変えていく。

 鎧や銃など装備はそのままで、瞳の色が深い紫となり、髪は同色で肩に届くほど長めに。顔つきも鋭かった目付きが若干垂れ目よりになるなど、女神の要素を含んで女性的に変貌していた。左耳のピアスは深紅の宝玉であり、強烈な魔力を輝きとして放っている。

 元々細身の彼の変身はそこまで違和感もなく、部下の騎兵たちが目を剥くことはなかったが、ティターニアは率直に驚きの意を示した。


「あら、びっくり。怖いお顔が可愛らしくなって……虐め甲斐がありそうじゃない」

「見た目で舐めてくれるなよ。今の僕は、神と同じなんだから」


 声も高くなって少年のようになった彼だが、その言葉に嘘はない。

 ライフルを背中に吊り直した騎士は、リボルバー片手に馬から降りたと思えば、地面を蹴って文字通り飛び上がった。

 翼がなくとも飛行する彼に瞠目しつつもティターニアは笑う。相手にとって不足はない――一方的な蹂躙じゃつまらないもの、と。

 

「楽しませてくれるわよね? ――【影の詩】!」

「『一に憎悪。仇敵を滅する、裁きの弾丸』」


 ティターニアの魔法が発動すると共に、フェイの詠唱も開始される。

 女王が打ち上げた漆黒の魔力の塊が花火のように弾け、雨となって降り注いだそれは巨大な腕の形を成した。

 掴みかからんとしてくる腕を身を捻りながらの高速旋回でかわしたフェイは、リボルバーから魔弾を撃ち放つ。首を後ろに捻って女王に片目で狙いを定めた彼の銃撃は、次々に迫り来る黒い腕など強引に貫いて敵へ直進していった。

 まさに音速――刹那にして距離を詰めてきた一撃に、女王は回避が間に合わないと判断し防壁魔法を展開する。

 ドガッッ!! と激突音が鳴り響き、目の前で鉄壁のはずの防御がひび割れるのを見たティターニアは、その一幕でフェイに対する認識を改めた。

 ――この男の子、強いわ。見かけは小さいけど、私がこれまで戦ってきたどのダークエルフよりも大きな力を持ち得ている。


「――何よ、あれ」


 その光景に心揺さぶられているのは、何もティターニアだけではない。

 シルもまた、少し離れた空中に停止しながら唖然と二者の攻防を見つめていた。

 まだ彼女の登場に気づかないフェイは、顔から笑みを消したティターニアにニッコリと笑い掛ける。


「これはほんの始まりに過ぎないよ。ネメシスの弾丸は、仇敵を撃ち殺すまで止まらない」

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新作ロボットSF書きました。こちらの作品もよろしくお願いいたします
『悪魔喰らいの機動天使《プシュコマキア》』
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