プロローグ 奴隷
暗い、暗い船の中。檻に閉じ込められた少女は、船が地上に着くのを静かに待っていた。
鉄格子の隙間からは、自分と同じように捕らえられ、閉じ込められた者達が檻の中でうずくまっているのが見えた。
船が揺れて気分が悪くなってくる。
ゴウン、ゴウンと聞こえるのは波の音だろうか?
これで、何度目かしら……?
以前の『飼い主』が死に、ようやく解放されると思っていたのに。
残された私達は『奴隷商人』に捕らえられ、次の『飼い主』に買い取られた。
今私達は、その『飼い主』の屋敷がある海の向こうの半島へ船で運ばれているらしい。
次の『飼い主』はどんな人だろうか。以前の『飼い主』よりましな人だといい。
私は絶望している。
どんなに足掻いても、この現状からは抜け出せない。
『奴隷』は、死ぬまで奴隷として生きる運命なのだ。
でも、私はその運命を恨んではいない。いくら恨んでも、運命は変えられない。
そして、私達は『恨む』ことを許されていない。
『飼い主』のために全てを捧げる。
それが、『奴隷』の生き方なのだ。




