どんぶらこっこと。
魚・・・だっけ?
肉か魚だと思うんだが、そういえばあんまり俺も食ってない。
明日、午前中にバァちゃんとこいって、帰りに買い物してこよっかな。
キャットフードとか売ってたらそれかってきてもいいし。
んー・・やっぱ、冷蔵庫とかは必要だなぁ・・・。
「うりー。」
「ぅ?」
「後でまた、ババァんとこいって、そして冷蔵庫とか買おうな?」
「ぇーぞこ?」
「そそ、冷たいままとっておけるから、便利だぞ?」
ぅ?と首をかしげる。
うん、想像つきにくいだろうなー・・・。
まぁ、この間の話の続きもしないといけないし、今後の事もあるし、絶対行かないといけないのはわかってる。
前に比べて、気持ちが穏やかなのは、諦めがついたから、とかじゃない。
なんていうか、気持ちが座ったっていうか、気合が入ったって言うのかな。
ここ譲るつもりも、遺産の事とかも、あきらめるつもりなんてないし、出来るなら穏やかにしておきたいのは、変わらない。
むこうの部屋もそのままにはしておけないし、今回はうりはバァちゃんとこにいてもらうしか、ないよな。
「よし、うり、そろそろねるか!」
「ぁぃっ!」
あ。
そういえば。
「ニィちゃん、ホラ、これやるからねぇ。」
「ん?」
「寝る前に読んであげるんだよぅ?」
バァちゃんが、帰り際にくれたのは、絵本。
タイトルは、・・・桃太郎。
「うり。」
「ぅ?」
「いい子で寝るから、本よんでやるぞー?」
「ほん?」
くりっと、首をかしげる、うり。
「本っていうのは・・・えーと。・・・オハナシだ。」
「おはぁし?」
「そうだ。おもしろいぞ?」
「ぉぉぉお!」
おお、喜んでるぞっ?
「ちなみに、食い物じゃねぇぞ?」
「ぁぅ。」
・・・ま、まぁ、布団いくかっ。
「昔々、あるところに、じぃさんとばぁちゃんがいました。」
「どこ?」
寝転がって、絵本を読む・・・なんて、初めてだっ!
この場合、ジィちゃんとバァちゃんは、どこにすんでるんだ・・・?
「えー、んっとな、・・・その、遠くだ。」
うん、あってるよなっ?
「それでな、バァちゃんは、川へ洗濯に、ジィちゃんは、山へ芝刈りに行きました。」
「ぅ?」
・・・なんで、芝刈り?
首をかしげるうりにつられて、ふと思いつく、俺。
「なんで、芝刈りなんだろなー?」
「ぅー?」
「ま、まぁいいかっ!そんで、バァちゃんが洗濯をしていると、川から大きな桃が。」
「ももっ!」
「うん、桃だなー・・・。」
川から桃・・・どんだけすごい光景なんだっ?
いや、続きだ!
「そんで、バァちゃんは、桃を持ち帰りました。」
「ぅ。」
「そして、うちに帰ってジィちゃんと食べようと、桃をきってみると!」
「と!」
「中には男の子が!」
「ぇぇええっ!」
驚いて目を丸くする、うり。
「二人は、その子を桃太郎と名づけました。」
「ももたぉ、たべちゃたー?」
「いやいやいやいやっ、まてっ!」
どこの世界にそんな恐ろしい日本昔話がっ!
「かぁいそねー?」
「いや、大丈夫っ!」
「ぅ?」
「桃太郎は、でてきて、無事に育ったんでした。」
「ももはっ?」
「んー、そりゃ、余った部分は食ったんじゃねぇかな?」
「んま?」
「うん、そんだけでかい桃なら、くい応えあるだろうなー。」
確かに、桃太郎が入るくらいの桃・・・どんだけでかいんだ?
「ょかったねー?」
「うん、よかったな。」
俺の方にころんと転がる、うり。
こら、それじゃ頁見えないだろ・・とか思うんだが、まぁ、覚えてるから、話でいっか。
「桃太郎は、鬼退治にいくから、きびだんごをつくってくれと言いました。」
「ぉに?」
「うん、頭に角あってな、悪い事するって言われてたもんだ。」
「おに、どこ?」
「んとな、鬼が島っていうとこだな。」
「おに、いじわぅすぅ?」
「んー、どっかな。でも、悪いやつに違いはないっていう設定だな。」
うん、多分。
細かい事、どういう設定だったとか、覚えてない。
確か、鬼が島に犬サルキジといって、鬼退治して、鬼が降参して、金銀財宝もってかえってきたんだっけ。
「おに、ぁゃと、いじわぅ?」
「いや、鬼にあった事はないなー。」
「よかったねー?」
「う、うん、そうだなっ?」
ふわぁ、と、あくびが出る。
つられて、あくびをして「くぁ。」なんて声が出ている、うり。
「よし、今日はここまでにしておくかっ!」
「ぁぃっ!」
「明日また、続き読もうなー?」
「ぁーぃ♪」
パチン。
ランプの電気を消すと、微かに月明かり。
目を閉じて、隣で丸くなっているうりの頭を撫でる。
柔らかい、猫っ毛。
すー、すー、と、小さな寝息。
しばらく、毛並みに沿って髪を撫でて、布団をかけなおす。
明日、バァちゃんとこいったら、話してみよう。
これからのこととか、いろんなこと。
早くきめなくちゃいけない事もある。
ふっと浮かぶたびにこめかみに脈打つ感覚だった、不安は、今は大分、楽だ。
状況が変わったわけじゃない、と思う。
・・・でも、なんていうか。




