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うりと夏休み〜続編〜  作者: ぬこ
5/40

もも


 「大分涼しくなったなー?」

 「ぁー?」

 

 ほんの一週間でこんなに温度、変わるもんなんだなぁ、なんて。

 前はもうちょっと遅い時間まで日が伸びてて、まだまだ暑くて。

 

 「うり、今日はちょっとゆっくり風呂つかろうなー、そろそろ40かぞえよっか。」

 「ぁぃ!」

 「さんじゅー、の次は?」

 「よんじゅっ!」


 ・・・ま、まぁ数え方によっちゃあってなくはないんだがっ・・・?

 

 「あ、あー・・・うん、数えてみよう・・・。んじゃ、二十五、二十六・・・。」

 「にじゅひち!」

 「お、えらいっ!そんじゃ、二十八っ!」

 「にじゅく!」

 「三十っ!」

 「よんじゅっっ!」


 まてっ!

 それじゃ「ちょっとゆっくり」じゃなくて一瞬だろうっ!

 

 「よし、うり。すごくいい事をおしえてやるぞー?」

 「ぁにっ!?」

 「三十の次は、三十一なんだ。」

 「ぇぇえ!」

 「さらに・・・。」

 

 今にもツバをのみこみそうな真剣な顔で俺を見るうり。


 「三十一の次は三十二なんだ・・・。」

 「ぇえええ!」

 「ここまで言ったら、うりは、わかるよな・・・?」

 「ぁぃっ!」

 「三十二の次は・・・?」

 「はんじゅはん!」


 思い切り驚いた顔をしてみせる。

 びくっとして、拳を握り締め、じぃぃぃっと俺を見る。

 

 「・・・うり・・・。」

 「・・・・ぁぃっ・・・!」

 「正解っ!えらいぞぅっ!」

 「ぉぉぉおおお!」


 ふと、某クイズ番組が頭をよぎったわけですが。

 残念ながら賞金はありませんっ!






 キキッ、と音を立てて自転車を庭に止める。

 あ、俺蚊にさされてるな、かゆい。


 「うり、蚊にさされてないか?」

 「ぅ?」

 「痒くない?」

 

 自転車から抱き上げて降ろしてやる、が、刺された跡はないみたいだ。


 うん、やっぱ自転車っていいなー。

 風切って走るのも気持ちいいし、なにより、荷物持つのがかなり楽だ。

 まぁ、うりが一人じゃ乗り降りできないんで、その辺は手伝ってやらないといけないわけだが、これが、なんか楽しい。


 「自転車、やっぱりいいなー。」

 「ぅー♪」


 カゴからお土産を降ろす。

 おにぎりもらったから、今夜は飯炊かないでいいかな。

 ナス炒めたのもあるから、それおかずにして、デザートに桃、明日の朝はスイカだなっ!


 「よーし、うり。」

 「ぅ?」

 「ほーら、かいでごらん?」

 「ぁぃっ!」

 

 うりの鼻先に桃を近づける。

 

 「ぅ!」


 ぴくっとして、口を開ける。

 それを、すっと上に上げる。


 「ぁ!」


 飛び上がるうり・・・が、届かないっ。


 「ほーら、いい匂いしただろ?これが、桃だ!」

 「もー!」

 「飯食ったら、デザートにしようなっ?」

 「ぁーぅ♪」


 うん、返事してるのか?それとも、今くいたいってねだってるのか?

 あーん、の口でじっと俺を見る、うり。


 「うりー、晩飯食ったら、桃にしようなー?」

 「ぁーぅ♪」

 「うりー、口開いてるぞー?」

 「ぁー♪」


 ・・・あー、口全開だぞっ?

 

 「よ、よし、いっこだけな?」

 「ぁぃっ♪」

 

 結局、口を開いてるうりに勝てず、桃をむく。

 てか、俺も待てなかったりしたのは秘密の話だっ!


 獲り立ての桃、これ、包丁無くてもむけるんだな。

 そんなに簡単にむける訳じゃないけど、硬いから爪でぴーっと。

 

 うん、いい匂いだっ。


 「やとっ!ぁゃとっ!」

 「はーいはい、ほら、あーん。」


 ぱかーっと口を開いてるうりに、桃を一つ手渡してやる。

 一口大に切ってやろうかー、と思ったんだけど、やっぱ、丸ごとだろっ?


 「ぉぉぉおお!」

 「よーし、いただきますっ!」


 庭にそのまま皮を捨てて、二人で自転車に座って桃を食う。

 

 「じゅっ・・・ぶじゅっ。」

 「うめっ!」


 汁気が多いもんで手がベトベト。

 当然、隣のうりは顔までベトベトなわけで。


 「うり、うまいか?」

 「うまぁあああ!」

 「顔、ベトベトだぞ?」

 「ぅししししっ!」

 「いや、ほめてないっ!」

 「ぅ?」

 

 拭ってやろうかと思ったが、俺の手もベトベト。

 

 「ぁゃと、ももー。」

 「ん?いっこだけだぞー?」

 「ぁゃと、ぅー。」

 「ん?」

 

 あ、俺の顔にも桃がついてたのか。

 うりが手を伸ばして取ろうとして気付く。


 ・・・って、22にもなって俺ってばっ!


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