いつか。
「アカネー!ホラ、じっと!」
「あー!」
一面の夕焼け。
空を飛ぶ、たくさんのトンボ。
それに、小さな手を伸ばして、トンボが止まるのをじっとまつ。
「瑠璃様、ほら、トンボとまった!」
坊主頭の少年が和服の幼女に指先に止まったトンボを見せる。
幼女が嬉しそうに微笑んで、触れないように、触れないようにとそうっと手を伸ばす。
「ケンタぁ!ずるい!」
「なーにがずるいもんかぁ、・・・あ!コウモリだ!」
「うそだぁ!」
「うそなもんあるけ!みてみ、ほら!」
見上げた頭上には、小さな影。
翼を広げて、森へと飛んで行くのが見える。
「それじゃ暗くなってきたし、かえろっけぇ?」
「んだ。瑠璃様、いこ?」
こくっと頷いて、二人と手をつなぎ、山道を歩き出す。
一面の夕焼けに、辺りまでもが紅をさしたように、赤い。
「明日は川さ、いこうな!」
「スイカもっていくけ?」
「にぎりめし作ってもらってっ!」
アカネと、ケンタのつないだ手が、じんわりと暖かい。
夕方に吹く風が少しずつ冷たくなって、秋の訪れを感じさせる。
「したっけ、ケンタぁ、瑠璃様、又明日ねぇ?」
「おー、又明日なぁ!」
にっこり笑って手を振る、和服の幼女。
いつか、又明日と手を振って、明日を待つ日が遠くなる。
それでも、もう、会えないなんて、思わない。
きっと、また、必ずどこかで逢えるから。
必ず、逢えるから。
「あらぁ、バァちゃんもうりちゃんもお昼寝しちゃってるねぇ?」
「いい夢みてるんだ、きっと。笑ってるし。」
「うむ。見るからに幸せそうだ。」
夕方の中ごろ。
もうちょっとしたら、日が暮れる、その手前。
いっぱい話して、喜んでくれて。
雲罫と俺と、ミヨコさんで畑に出かけて、お土産もらって。
見上げた空には赤とんぼ。
綺麗な赤い背が、夕焼けに混ざっていくみたいで、思わず目を細める。
「バァちゃーん、風邪ひくよぅ?」
ミヨコさんが、二人に声を掛け、ゆすって起こす。
「んー・・・ああ、バァちゃん居眠りしてたねぇ?」
「いい夢みてた?」
「うんー、どんな夢だったかねぇ、でも、なんだか幸せだねぇ。」
「目覚める前にみた幸せな夢は正夢と言うから、いいことあるでしょう。」
うんうん、と頷く雲罫。
「そうなのか、いいこと聞いた。」
「我がそうであるからな。間違いない。」
「ぁー♪」
体を伸ばして、んーっとしながら、俺に手を伸ばすうり。
にこにこしながら、寝起きって、いいな。
「よーしよし、それじゃ、かえろうなー?」
うりをぎゅっと抱き上げてやる。
「うむ。そろそろ失礼致します。又、明日に。」
「それじゃ、バァちゃん、ミヨコさん、ありがと!又明日っ!」
「まちゃーしたー!」
「はいよぅ、又、明日ねぇ。」
「また明日ねぇー。」
また、明日。
これからも、ずっと、一緒にいるから。




