ごっさまえった!
「せせせーのよいよいよー♪」
「はぃ、せっせっせーのよいよいよいっ。」
二人、向き合って手を握り、何やら歌いながら指を動かしている、バァちゃんと、うり。
「ただいまー、うり、桃もらったぞっ。」
「ぉも?」
「もーもっ!」
「もーもー!」
バァちゃんの指をにぎったまま、にこーっと笑う、うり。
「ぅし?」
「いや、違うっ!」
「ニィちゃん、ミヨコさん、お疲れさんだねぇ。麦茶冷えてるよぅ。」
バァちゃんがコップに麦茶を注いでくれる(のを手伝ううり。)。
カゴを降ろして、ミヨコさんとばぁちゃんと、俺とうりとで縁側に座って、一息入れる。
「今日は、何教えてもらったんだ?」
「ぁゃとに!」
「俺かっ!?」
「あやとり、だよぅ。」
「あら、懐かしいねぇぇ?」
うりが、ポケットから、毛糸の紐を出す。
「お、見せてくれるのか?」
「ぁぃっ!」
毛糸を指にかける、うり。
いや、違うな。
毛糸の輪っかの中に両手を入れて・・・・。
「ぁぃ!」
ぱっと開く。
・・・手錠?
「ぅししししっ!」
「おー、うり、・・・それはなんだ?」
「ぁなっ!」
「あなっ!?」
ミヨコさんが、ぶっと吹き出して、ケラケラ大声で笑う。
バァちゃんも笑いながら、
「うりちゃん、穴上手にできたねぇ?」
「ぁぃ♪」
バ、バァちゃん、それでいいのかっ!
「それじゃぁ、明日にでも今度はおニィちゃんとうりちゃんと、ミヨちゃんとバァちゃんでかくれ鬼しようかぁ?」
ミヨコさんがそういって、カゴに隠れる振りをする。
「ぉぉぉ!」
ガキの頃とか、こうやって遊んだ想い出って、俺、ほんとなかったんだなぁ、なんて思って。
ババァん家に引き取られてからは、遊びに行って、帰るとか、なかったんだよな。
大抵、まっすぐ帰って、掃除して。
タクが帰ってくるまでには風呂沸かして。
ほんと、今更、ってやつかもだけど、
「それじゃぁ、明日にでも今度はおニィちゃんとうりちゃんと、ミヨちゃんとバァちゃんでかくれ鬼しようかぁ?」
っていうミヨコさんの言葉にひそかにわくわくしちゃってたりする、俺。
ほんのり風が涼しくなって、虫の声が聞こえ始める。
もう少ししたら、一番星が見える頃だろうか。
「ん、そろそろかえろっか、うり。」
「ぁぃっ!」
縁側であれこれ話しをしたり、スイカをご馳走になったり。
明日もバァちゃん家に遊びに来る約束をして、立ち上がると。
「おニィちゃん、これもってきなぁ?」
「あ!」
「おにぎりにしてあるからねぇ、帰ってたべるんだよぅ?」
台所から慌てて呼び止める、ミヨコさん。
もたせてくれるのは、おにぎりと、ナスをいためたものと、スイカと桃。
「毎回ほんと、たくさん頂いちゃってすいませんっ。」
「いいのよー、手伝ってもらってこっちも助かるんだからねぇ?」
「そうよぅ、またうりちゃん、ニィちゃん、おいでねぇ。」
「助かりますっ!ほんと、ごちそうさまでした!」
頭を下げる。
それをみて続ける、うり。
「ごっさまえった!」
・・・うり、今舌かんだろ?




