俺は潔白なんだっ!
「おまたせ、うり、もってきたぞー?」
「ぃやとっ♪」
「では、一休みしたら銀行に行こうな。」
「あ、バァちゃんとこも行きたい。」
「うりも!」
「我も。」
雲罫にむかってにこーっと笑ううりと、パチン、と片目を閉じてにっと笑ってみせる、雲罫。
「ん?何か話してたのか?」
二人の様子に、なんとなく尋ねてみると。
「いや、うり嬢に世の中の真理について語っていたのだ。」
「おにたいじ、わういの、めー!」
「うむ。うり嬢は実に聡明だな。」
──「うり嬢、案ずる事はないぞ。今後何かしら不安がないとも言い切れないのでな、タクとやらには先ほど我が一言話をしておいたのだ。」
「ぅ?」
「いづれまた悪しき事を企むやもしれんのでな?」
「あしき?」
「悪い事、そう、悪い人、だな。証拠はあるが、何かあっては困るのでな。我の家で毎日住み込みで精進するか隼人に全て委ねて事件として調書をとっておくかー・・・まぁ、その場合、もっと厳しい条件になるであろうが。」
まぁ、早朝から夜中までみっちりと本堂の掃除やら神事の手伝いに修行。
前科がつかない分良いであろうが、・・・精進せい。
「ぃくちゃ、わういの、めって?」
「うむ。我の家で住み込みで精進なら極僅かにと伝えてある賃金もでよう。馬鹿だとは思っていたが、そういう類の人種が好きな男が我の家にはおるのでな。彼はなかなか素晴らしい師匠だ。」
「ししょ?」
「うむ。黒帯所持の、文武両道をこよなく愛する男だ。」
「ぶっぶりょーろー?」
「うむ。」
口の聞き方、礼儀作法から教わる事になるのであろうな。
さぞかし鍛え甲斐のある事だろう、喜ぶ顔が目に浮かぶ。
「なんだ?雲罫、どうした?」
「いや、なんでもない。とりあえず銀行を確認すればひと段落つくものよな、と安心して笑みを浮かべていただけだ。」
「そ、そうなのか?」
「うむ。隼人、今後不安はない。」
そういう雲罫に、納得する。
彼がそういうのなら、大丈夫なんだろう。
しかし、・・・雲罫の家に、是非にとタクが・・・?
「ほんとに、タクが世話になるって、迷惑かけないのか?」
「うむ。問題ない。」
「そ、そうか。・・・じゃぁ、後で食器三人分と、まとめて買いに行こうな?」
「ぁぃっ♪」
「うむ。」
・・・あ、そっか、部屋のこともしないと。
「どうした?」
ふと思い出して黙る俺に、声を掛ける雲罫(に肩車されているうり)。
嬉しそうに頭をぺちぺち・・・いいのか?
「いや、部屋の事も電話するなりしておかないと、って思い出して。」
「ああ、それなら我の家に世話になりにくるついでに荷物の発送なりもしてくれるそうだ。」
「タクが!?」
「うむ。修行はそこからはじまるのだ。」
「・・・そ、そうか。」
「うむ。如何わしい本等おいてあるのか?」
「い、いやっ!そ、そういう訳じゃないけどさっ!?」
「いじゃじゃあしー?」
うり、つっこむなっ!
「成人男性として恥じる事ではないが、特殊な趣味の本でも?」
「と、特殊ってっ!?」
「いや、そういう物を片付けさせるのに抵抗があるのかと案じてな。」
「断じて違うっ!ないっ!・・・はず・・・で・・・すっ・・・?」
「語尾に迷いが感じられるが。」
「ぁゃと?」
ぅ?と小首をかしげて俺を見る、うり。
ああっ、そんな目でみないでくれっ!俺は無実だし問題ないっ!
特殊な趣味なんてないし、成人男性として本の一冊位は・・・
!!!!
まてっ!
確かバイト先の先輩が・・・いや、あれは返したはず、返したはず・・・うん、返した。間違いないっ。
「安心した笑み、というやつだな?」
「ぁゃと、よかったねー?」
「うん。・・・ってっ!」
そんな俺を見てにやりっと笑う雲罫と、雲罫の頭越しに俺を撫でてくれる、うり。
うり、信じてくれ、俺は潔白なんだっ!




