果汁100パーセント
「雲罫、ごめん。」
「どうした?」
「せっかくしてくれたのに・・・。」
そういうと、ぽんっと俺の頭を軽く叩く、雲罫。
「お前が望むのならそれでいい。そのために我が居る。」
そういって、笑ってくれる。
「正直、不安が無い訳じゃないけど、どうしても、踏み切れなくて、ごめん。」
「案ずるな。タクは是非にと我の家にいくそうだ。」
「・・・って、え?」
二人を見送るから、とタクとババァを送っていった雲罫。
俺には、うり嬢とここにいてくれ、と言って一人で。
もしかしたら、怒らせてしまったのではないだろうかと不安にもなったり、やっぱり、間違っていたんじゃないかとあれこれ思い悩んで。
30分程して戻ってきた雲罫が、
「さて。茶が飲みたいな、隼人、頼む。」
と笑って言ってくれた事にほっとして、俺が入れた茶を旨そうに飲むと。
続きを待つ俺をみて、ん?と笑う雲罫。
「我の家で、世話になりたいと言うものでな。頭を下げられては断るのも気の毒ゆえ。」
「頭さげ・・・マジ!?」
「うむ。まぁ、二人がかりで頼まれてはな。」
「え、いや、あのっ・・?」
タクが頭下げて?ババァも?
雲罫の家に・・?何でだ?
考え込む俺を見て、にっと笑う雲罫。
「人として自己を見つめなおしてみたくなったのであろう。朝から晩まで面倒見てくれる。案ずるな。」
「タ、タクがか・・・。」
「ぁゃとー、じゅすあげうー?」
違和感があったりでつい、握ったままの空の俺のコップをみて、うりが自分のを俺に差し出してくれる。
飲み足りないと思ったんだろう。
「いや、大丈夫だぞー、ありがとなっ?」
「ぁぃっ!」
「・・・ん?」
「うり、おかあり♪」
「はいはい、まっててなー?」
台所へうりのジュースを取りに行く。
これで、全部落ち着いた・・・ってことなのかな。
今日午後にでも銀行いって、確認して。
そして、俺はここにいても、いい・・・。
どうしても、本当の事なのかって、実感がなくて。
手に取ったうりのりんごジュースをじっと見つめる。
果汁100パーセント。
うん、100パーセント。
・・・って、そうじゃなくて。
俺は、ここにいても、いい。
午後銀行確認して、無事入ってたら、もう、心配は・・・ない。
それで、いいんだよな・・・?
ほんとに、俺は、ここに居られて、このまま毎日を過ごせるんだよな・・・?
涼しい土間で程よく冷えたジュース。
冷蔵庫なり色々買わないとなー、なんてうりと話してた。
でも、不安はあって。
考えて、幸せな毎日を思い浮かべるたびに、本当にそれは俺の未来になってくれるのかって。
幸せ、な未来を思うたび、出てくる不安。
それが、・・・解消された?
・・・本当に?
「あ。」
そうだ、これをもって行ってやらないと。
ひんやりとしている空気に我に返る。




