ババァとタク
「入るわよ。」
「どうぞ。」
ちらり、と土間を見て顔をしかめるババァ。
「スリッパ無い訳?」
「ありません。そのままどうぞ。」
汚いものを見るかのように顔をしかめると居間へと上がるババァとタク。
そして、戻ってきた雲罫。
「わかってると思うけど。」
口を開いたのはババァ。
すぐ側に無言で座るタク。
一言、謝ってくれて、話ができるのだろうか。
俺の隣に座り込む雲罫。
俺の膝の上には、うり。
ババァの言葉の続きを待って黙り込む。
「写真なんか、証拠にならないからね。」
ババァの言葉に、一瞬、思考が止まる。
「言いがかりもいい加減にしてくれるかしら。侮辱罪、って知ってるわよね?」
「全く、人が様子を見に行っただけでびっくりさせられて迷惑だっつーの。」
口々に言う、ババァとタク。
想像もしていなかった展開に、びっくりして。
・・・とはいえ、黙ってるわけにはいかない。
「それならばこれから警察に行きましょう。放火って、罪ですよね?」
ふん、と鼻で笑うババァ。
「様子を見に灯油持参でいきなり裏の薪に火をつけるのが様子を見にいくということであるのか。妊婦と偽らせて連れてきた女性を夜に置き去りにして、な。」
「は?バカじゃねーの、何テキトーこいてんだよ。」
雲罫の言葉に強気で言うタクに。
「気の毒に。程よい馬鹿であれば可愛げもあろうが、二十歳過ぎてもここまででは先が暗いな。」
そういって、俺に向き直り、言う。
「隼人、情け等必要は無いであろう。証拠なら我が揃えてある。車中の会話に、昨日の写真に、今朝焼け跡も取ってある。中に人がいることを知った上での放火である事だしな。」
「ちょっと、会話ってなによ!!」
「ふざけた事言ってんじゃねえぞ!ぶっ殺すぞこの野郎!!」
キュルル・・・ガチャリ。
───「ちょっと、会話ってなによ!!」
「ふざけた事言ってんじゃねえぞ!ぶっ殺すぞこの野郎!!」
雲罫が手にした機械から、流れる会話。
「他の分まで聞かせてやる義理は無い。昨日あの時点で一度。そして、今で二度。我は仏ではないのでな。三度目は無い。」
「雲罫、さんきゅ。」
俺の膝の上のうりは、ぎゅっと俺の手を握っていてくれる。
その目に涙は、無い。
「あぁ!?この場でぶっ殺してやってもいいんだぜ!?」
「どこまでも愚かよな。」
「ふざけてんじゃねぇ!」
ガタッ!
立ち上がって雲罫を見下ろすタク。
そして、
「昨日あのまま焼け死んじまえば良かったんだよこのカス!!」
怒鳴りながら、雲罫に蹴りを入れる。
バタンッ!
「言っておくが、正当防衛だ。」
倒れたのは、タク。
座ったままの雲罫。
何が起きたのか、と目を丸くするババァ。




