願わくば。
「あ、ミヨコさん、俺手伝いますよ。」
「あらー、おニィちゃん、ありがとねぇー?」
大きなカゴを背負うミヨコさんに声を掛ける。
いつもいろいろもらってばっかなんだし、たまには手伝わないとっ!
変わりにカゴを背負うと、畑にむかう。
「じゃぁ、うりちゃん、バァちゃんと遊ぼうねぇ?」
「ぁぃっ!」
「それじゃ、こないだの続きやろうねぇ。」
「ぃーかんーのあーながー♪」
あ。
「ばぁちゃんっ!」
「うん?」
「それ、なに?」
ミヨコさんが、笑う。
「いかんのう、穴が開いている、って?」
「ぶはっ!」
あ、バァちゃん麦茶噴出した。
「えっ!?」
「あらやだぁー、おニィちゃんったらっ!」
ミヨコさんまで、俺の肩をバシバシ叩きながら大爆笑。
え、え、え?
もしかして、俺の靴下に穴!?
・・・いや、そもそも靴下はいてない。
・・・パンツ!?
「ニィちゃん、よぅっく聞いててなぁ?」
バァちゃんが笑いながらお手玉を二つ、手に取る。
「みぃぃーかんーのはぁーながーさぁいてーいるー。」
・・・・・。
「うっ・・・。」
えー、マジで、かなり、恥ずかしいですっ!!!
それから、しばらく笑い転げているミヨコさんと、バァちゃんと、釣られて笑う、うりの笑いが引くまで、俺は「あー。」とか、「いや、ほら。」とか言ってみたりして。
ま、まぁ、笑ってもらえたなら、いっか?
なんて照れ笑いするのみて、又笑うもんだから、なぁ?
「いやぁ、ほんとに面白かったわぁぁ、おニィちゃん、今日のお土産弾むからねぇ?」
「ミヨコさん、またスイカいっこもたせてやりなぁ。」
涙拭きながら、バァちゃんとミヨコさん。
「うっわ!嬉しいっす!・・・笑ってもらえた甲斐がありますっ!」
「ぷっってすぅ!」
「おー、今度はうまく飛ばせるようになろうなー?」
「ぁぃっ!」
口を尖らせて、すいかの種を飛ばす真似をする、うり。
その唇をにゅーっとつまんで、ふにふに。
「こらっ、よだれっ!」
「だっ!」
想像だけでここまで涎とは、恐るべし、うりっ。
「んじゃ、ミヨコさん、いきますかっ!」
「手伝ってくれるの、ほんとたすかるわぁー?」
秋になったら、栗拾いがあるらしい。
もちろん、初体験だ。
バァちゃんによると、あのイガが当たると半端なく痛いらしいから、長袖で、分厚い服きて、そんで、長靴はいて足で踏んで、割るようにして中の実をだすんだそうな。
・・・絶対うりが大喜びだろうな。
とかいいつつ、俺も楽しみだったりする。
うん、また食べ方おそわらねーとなっ。
「おニィちゃん、これつかいなー?」
「あ、すいませんっ。」
そういって、ハサミを渡してくれるミヨコさん。
やっべ、マジいい匂い。
桃が木になってるのを見るのは、実は初めて。
よく、店とかでパックに入ってて、押しちゃいけないんだけど押したくなるもんなんだよな。
しかし、こうやって収穫みてると、悪かったなー、って反省。
「ほんと、いろんなもの作ってるんですねー?」
「そうよー、なんでもあるよー、ほら、いっこたべてみなぁ?」
「やったっ!」
もぎたての桃を一つもらう。
うりにも食わせてやりたいな、なんて思ってたら。
「大丈夫よぅ、うりちゃんの分もあるからねぇ?」
「あ、すみませんっ!」
笑って、カゴを見せてくれるミヨコさん。
指先で皮をつまんで、つぴーっ、とむく。
うん、やばい。
「ほんっといい匂い・・・。」
「うんまいから、がぶっと食べてごらん?」
「いただきますっ!」
じゅるっ。
口とか、鼻とか、いい匂いと甘い幸せで満たされてっ!
「硬い桃って、初めてです!マジでうまい!」
「でしょぉ?」
そういって嬉しそうに桃にかぶりつくミヨコさん。
これ、種もらっていって植えたら、来年辺り食えるかなー、なんて思ってみたり。
思わずじっと種をみると。
「おニィちゃん、桃栗三年、柿八年ていうのよぅ?」
「えっ?」
「すぐに実はならないわよぅ?毎年ウチに食べにきなぁ?」
「そ、そうなんですかっ?マジで食べに来ますっ!」
三年、か。
その頃、俺とうりはどうしてるかなー、なんて、ふと思ってみたりする。
・・・想像つかないな。
願わくば、いつまでも今のままで居られたら、いいなっ。




