布団を暖めて
「んー・・・やっぱ、いないかな。」
あちこち見回してみるも、姿はみえない。
とはいえ、やっぱ夜は冷えるな、えこ、どこで寝てるんだろ。
「来てない訳じゃないな?」
昨日少しこぼれていたエサはキレイになくなってる。
たまたま時間が合わないのかな・・・っと。
きらっと光る目。
小さな体。
「えこ?」
「にゃーん。」
手に持っていた皿を下ろしてやる。
ひゅぅっと吹く風が風呂上りしばらくたった体に冷たい。
「・・・まだ、家の中入るの怖いだろうしなー・・・、一応縁側のとこ開いてるから、寒かったら入って来いよ?」
かりかり。
「なんなら家のなかで飯くうか?」
・・・かりかり。
一瞬俺を見上げて、軽く小首をかしげてまたエサを食べる、えこ。
無理やりつれてくのもなんだし、入ってくるの待つしかないなー・・・。
手を伸ばしてみて、やっぱり逃げられる。
食事の邪魔するのもなんだな、と思って、俺も居間へ戻る。
「うり嬢は完全に眠りに落ちた。」
「お、さんきゅ。」
居間に戻ると、雲罫が一人茶を飲んでいる。
「ビールでも買ってくれば良かったかな。」
「いや、気にするな。茶は好きだ。」
そういって、俺にも茶をすすめてくれる。
耳を澄ますと、微かにえこがかりかりとエサを食べる音。
いつか一緒に眠れたらいいなー、なんて思って、ふと。
「雲罫。」
「菊ちゃん、でもよいのだが。」
「いや、雲罫でっ。」
「そうか。」
突然の提案にびっくりして、何を言おうとしていたのか忘れる。
・・・なんだっけ。
・・・あ。
「ここ、いつまで居られる?」
「特に決まってはいない。隼人に不都合がなければな。」
「俺はかなりありがたいんだが、本当に家とか平気か?」
「うむ。身代は揺るがぬ。」
「そっか。んじゃ安心していいな?」
「安心しろ。」
そういって、二杯目の茶を注ぐ雲罫。
きっちり姿勢を正して、まるで茶席(行ったことないけど。)みたいだなー、なんて思って思わず見とれる。
そして、しばらくずっと雲罫も一緒にってことになんか嬉しくて。
ここに、・・・って、そうだ。
「雲罫、さっきの続きだけど。」
「どうした。」
「タクの子供の。」
「・・・隼人、うり嬢が寒そうだぞ、ちょっと布団を掛けてやる事を進言する。」
「あ、マジ?ちょっといってくる。」
「我も一服すませてくる。」
そういって、袈裟を羽織ると立ち上がる雲罫。
「いや、風邪引くとなんだし、中でかまわないぞ?」
「せっかくの夜なんでな、少し見て回りたいのだ。」
「そうか?んじゃ、ランプかしてやる。」
箱をまた首から下げて。
「あいや、それには及ばん。少々遅くなるかもしれんので先に寝ていろ。」
「いや、待ってるさ。」
「我は暖かい布団を所望する。先に暖めておいてくれないと、人肌ということになるが?」
なんてことをさらっと言ってのける。
「お、おっけっすっ!」
思わずどもる、俺。
「では、頼んだ。」
「お、おうっ。」




