風呂場で数数えて
「それじゃぁ、バァちゃん帰るからねぇ?」
「またねぇー?」
食べながらあれこれ話をして、気がつけば夕方の風。
あたりが薄暗くなると寒さも増すような気がする。
「ほんと、今日はありがとうございました!」
「ごじゃいあた!」
「お世話になりました。」
二人にお土産を渡して三人で垣根までバァちゃんとミヨコさんを見送る。
今日一日で畑に苗を植えてくれて、風呂は沸いてて、おまけに晩飯まで作っておいてくれた、バァちゃんとミヨコさん。
ぷぅん、といい匂いが台所からしていて、かなり嬉しい。
しかも、風呂場からは湯気が。
「それじゃ、うり、雲罫、風呂でも入るか!」
「ぁぃ!」
「おお、ありがたい。」
俺と、雲罫の真ん中で、手をつないでぶらぶらと空中浮遊しているうり。
「うり、もう名前覚えたか?」
「ぅ?」
「菊乃蔵 雲罫だ。うり嬢、よろしく。」
「きくのーらっけー?」
ぶらぶらと揺れながら、雲罫に続こうとするうり。
・・・が、ちょっと発音難しいかな。
「菊ちゃん、でもよいぞ?」
「ぶっ!」
うりに言う雲罫に、思わず噴出す。
き、き、・・・菊ちゃん・・・か・・・。
「ぃーくーちゃ?」
「うむ、なかなか良いものだな。」
「ぃくちゃぁ、ぁゃと、いしょ?」
くりっと顔をあげて俺と雲罫を交互に見る、うり。
「おう、三人で風呂入ろうなー?」
「久々だな。」
「ぉぉぉおお!」
そういえば、雲罫と風呂入ったのって、昔アパート断水になったときについでに一緒に銭湯行った時以来だな。
「おーぅごーでいーくちゃーやとー♪」
ぶらんぶらん、と揺れるのがとても気に入ったらしく、体を揺らしてまた怪しげな歌を歌う、うり。
それを目を細めて嬉しそうに見つめる雲罫。
「よし、んじゃ服脱いでー、風呂場突撃、合図行くぞー!」
「ぁぃっ!」
「脱ぐのなら任せておけ。」
うりを下ろすと、居間の隣の部屋へ。
ここから廊下を抜けて風呂場まではまっすぐだ。
「雲罫、風呂場はわかるな?」
「無論。土地勘には自信がある。」
「っじゃー!」
にやり、と笑う雲罫。
うん、手加減はいらないな。
「3・2・1・ゴー!!」
俺が叫ぶと、バッと袈裟を脱ぐ、雲罫。
絶対一番だと思っていたのに!?と慌ててシャツを脱ぐ俺。
「・・・もっ!・・・じゃ!」
「もじゃっ!?」
じたばたしながらワンピースを脱ぐ(頭に引っかかっているが。)うり。
ばたばたと足を踏み鳴らして頭を振るがなかなか抜けないらしく。
「ぁー・・・ぅー!!」
・・・自分で自分もちあげる勢いだぞ、うりっ!?
「っかー、やっぱ風呂はいいなぁ。」
風呂に浸かって、星を眺める。
そこまで極端に広い風呂な訳じゃないけど、大人二人に子供一人位ならなんの問題もない。
「実に快適だ。眺めは良い。吹く風は心地よい。」
「いーねー?」
大きな窓をいつも開けて入るもんで、星は見れるし風も気持ちいい。
俺の膝に乗って、風呂の減りに掴まって気持ちよさそうに揺れているうり。
「しっかりあったまったかー?」
「おう。」
「ぁぃっ!」
いつもの風呂の、儀式、ってほど大げさじゃねえけど。
「そんじゃ、いくぞー?」
「ん?」
「ぁぃっ!」
右手をあげて、げんきよく返事をするうりをみて、じっと様子を伺う雲罫。
「いーち。にーい。」
俺が言うと。
「はーん、しーい、ごっ!」
続くうり。
それをみて、ふむ、と頷き、にっと笑って数に続く、雲罫。
「六、七、八!」




