視線が
垣根を越えて。
庭の畑にいるミヨコさんとバァちゃんと、うり。
思わず、なんだかほっとして顔が緩む。
「ただいまー!」
声をかけると、三人同時に顔を上げる。
「おかえりぃ、はやかったねぇ。」「おかえりぃ?」
声を掛けてくれるミヨコさんとバァちゃん。
そして。
「ぁゃとっ!」
一目散に俺に向かって走ってくる、うり。
畝を越えて、ぱたぱた足音を鳴らして。
「うり、ただいまっ。」
「おじゃぇりぃ!」
ぎゅぅっと抱きついてくるのを、抱き上げてやる。
雲罫と一緒に、バァちゃんとミヨコさんのすぐ側まで行くと。
「お世話様でした、お土産あるんでお茶にしましょうっ!」
と縁側へ誘う。
「そして、こちら、俺の友人の雲罫です。」
「どうも、始めまして。菊乃蔵 雲罫といいます。」
と、笠を脱いでぺこり、と頭を下げる。
袈裟をまとって箱をぶら下げた彼に驚くか、と思ったんだけど、んっと立ち上がって腰を伸ばすといつもの笑顔でにっこり笑いかける、バァちゃんとミヨコさん。
そして、じーっと、視線が雲罫な、うり。
畑から縁側に戻り、手を洗うと荷物を下ろす。
ミヨコさんとバァちゃんが熱い茶を入れてくれるのに甘えて、お土産を出す。
雲罫が買ってくれたシュークリームを人数分並べて、俺が買ってきたものも一堂に並べて。
「んじゃ、先に紹介な?雲罫、こちら、バァちゃんとミヨコさん。」
「よろしくねぇ?」
「お坊さんなんだねぇ、いいことだねぇ。」
「今後ともよろしくお願いいたします。」
うりを、どう紹介しようか、と一呼吸。
「で、そちらの可愛いお嬢さんが、うり嬢、だな?」
「!!!!!」
先に雲罫が、シュークリームに釘付けになっているうりを見る。
驚いたのは、バァちゃん、ミヨコさん、そして何より、俺。
いきなり見えるとはさすがに思わなくて。
まずは紹介して、それから見えたら、って思っていたのに。
「雲罫、見えるのか?」
「可愛らしい。ハナシには聞いていたが想像以上だな。」
「ぅー♪」
その頭をなでなで、と目を細めて優しく撫でてやる雲罫に嬉しそうに頭を摺り寄せるうり。
「あれぇ、よかったねぇ?」
驚いたものの、同じように嬉しそうに笑うバァちゃんとミヨコさん。
俺は、といえば。
いや、こいつなら、とは思っていたけど余りにもあっさりと、で思わず言葉がでてこない。
「それでは、頂こうか。お茶が実に良い香りだ。」
「いいねぇ、それじゃ早速いただくよぅ?」
「あ、食べてください。」
驚いたものの、悪いことなんかじゃなくて、むしろ幸せで。
「いやぁー、おいしいもんだねぇぇ。ミヨちゃんびっくりしちゃうよぅ。」
「うまぁっ!」
旨そうに俺と雲罫からの土産に喜んでくれているバァちゃんとミヨコさんとうりに、同じように涼やかに頷きながらシュークリームを食べる雲罫。
なんか、いいなぁ、なんて思って。
さっきまでのギスギスした気持ちみたいのとかが溶けて行くのを感じて、俺もシュークリームに手を伸ばした。




