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うりと夏休み〜続編〜  作者: ぬこ
21/40

弁当


 ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・


 規則正しく揺れる電車の音。

 

 「ふむ、良い眺めだ。」

 「だろ・・・って、ほんとに大丈夫か?」

 「何がだ?」

 「いや、いきなりこんな遠くまで。」


 なんとなくやっぱり気がひけて聞いてみる、が。


 「気にするな。何より、我が行きたいから行く。隼人が迷惑でないのなら我の好きなようにする。」

 「ありがたいさ。迷惑なんかじゃない。」

 「ならば、拝んでも良いぞ。」

 「いや、それはまだいいや。」


 差し向かいの席に座り、先ほどから何度目かの会話。

 確かに、成人男性だし、ちょっと外泊くらいは構わないんだろうけど。


 「しかし、のどかでよい景色だ。隼人がいるところもこんな感じか?」

 「いや、もうちょっとのどかだ。」

 「ほう、羨ましいな。」

 

 切符を買って再び電車に乗る前に買ったプリンとダンゴと、肉まん。

 在東京時間、何分だ・・・って位のトンボ帰りになるわけだけど、お土産は忘れちゃいけない。

 なぜか、雲罫までもがシュークリームを箱に詰めてもらって、賽銭箱の上に。


 「シュークリーム、好きなのか?」

 「好きだ。」

 「そ、そっか。」

 「一人で食うつもりはないぞ?泊めてもらう礼に、ご婦人方と、うりちゃんとやらにも、勿論ある。」

 

 てことは、つまり。

 甘いものだけで土産3箱。


 「甘いものは脳にも良い。」

 「そうか。疲れにもいいしな。・・・って、着替えはどうするんだ?」

 「案ずるな。洗濯位できなくては世の中渡れん。」

 「そ、そういうもんなのか。」

 

 カパっと賽銭箱のような箱のふたを開けて、ちらっと見せてくれる。

 その中には、電池、カセットテープ、和紙に筆に硯に・・・。


 いまいち統一性の無い細々としたものがあれこれと入っている。


 「カセット?」

 「うむ。なかなか売ってるところが少なくなって困っている。」

 「CDとかMDとか多いもんな。」

 「そうだ。かといって長いこと愛用しているので手放すわけにもいかなくてな。」


 ガタン、と途中の停車駅で一度電車が止まる。

 この次が、俺達が降りる駅だ。


 丁度朝出る時に稲刈りをしていたのを見かけたのはここら辺だったかな。

 

 昼飯時を軽く過ぎている事を思い出し、腹が減ってくる。

 

 「なぁ、腹減らないか?」

 「確かに。車内販売でもあるかと思ったが無い様だな。」

 「ちょっとまっといて。俺、アレ買って来る。」


 電車の停止時間は7分。

 席を立って降り口に走ると改札の側で木の箱を肩から下げて弁当を売っている人に声を掛ける。


 「すいませーん!」

 「はぁぃ。」

 

 改札を抜けてしまうわけには行かないので声を掛けて・・・と思ったら。


 「ああ、ニィちゃん、弁当か?いいよいいよ、電車出る前に買って来い。」

 「あ、すいませんっ!」

 

 改札のおじちゃんが板をあげてくれる。

 一礼して改札を抜けて、箱の中を見る。


 「うは、うまそうっ!」

 「おいしいよー、好きなの選んでねぇ?」

 

 目に付いたものはシメジの炊き込みご飯弁当と、栗ゴハン。

 どっちもオカズが入っていて、お茶までついてる。


 「コレとコレ下さい!」

 「はいよぅ、800円ねぇ。」

 「あ、じゃぁ丁度で。」

 「はい、ありがとさんねぇ。」

 「頂きますっ。」


 弁当を二つ受け取ると、改札のおじちゃんに礼を言って車内に戻る。

 電車もここまで来ると大分人もいなくて空いているので少しくらい走っても迷惑にはならないだろう。


 「ふむ。先ほどから思ったのだが。」

 「ん?栗ゴハンとシメジ炊き込みどっちがいい?」

 「実に良いな。」

 「秋の味覚って感じだよな。」

 「確かにそれはそうであり、非常に食欲が沸くのであるが。」


 と、雲罫が言って、シメジの炊き込みご飯を選ぶ。

 俺は栗ゴハンのフタを開けて、そのフタに半分ゴハンを乗せて、渡してやる。


 「ほう、実に旨そうだ。ご馳走になるぞ。」

 「俺にもシメジ分けてくれ。」


 雲罫が頷いて半分フタに乗せて寄越してくれる。

 ぷーんとおこわのいい匂いがして、思わず一口。


 「うめぇ!」

 「旨い。実に、いい味だ。」

 「たまらねぇなっ!」

 「同感だ。そして、我が良い、といったのはお前のことだ、隼人。」

 「ん?」


 口の中の栗ゴハンをもごもご、とやりながら問い返す。

 形の良い大振りなシメジとゴハンを口に入れ、うん、と味わってから飲み込む雲罫。


 「実に、良い顔をしている。」

 「俺が?」

 「そうだ。しばらく前にあった頃も悪いわけではないが、今に比べると遥かに悪い。」

 「なんも手入れもしてねぇぞ?」

 「顔形だけではない。的確な表現が見つからないが、あえて聞きたいか?」


 そういわれると、そりゃ聞きたい。


 ふむ、と軽く頷いて、真面目な顔で、一言。


 「我が女であったならグッとくる、っていうやつであろうと推測する。」

 「いや、難しいぞっ!」


 どういう推測だっ、雲罫っ!


 「まぁ、良い顔つきになっておるということだ。喜べ。」

 「おう、ありがとなっ!」




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