あいもかわらず
あいも変わらず朝にはセミが鳴いて、夕方にはカエルの声がして。
俺の隣には、うりが居て。
幸せだって思いながら、色々考える事もあったりして。
でも、もちろん、うりがいてくれるのは嬉しいし、なにより、いなくなったら、絶対嫌だ。
あれやこれや、悩んで、気になって。セ
でも、縁側でバァちゃんからもらったお手玉を頭に載せたり、あやしげな歌を歌って並べるのを見て、幸せだから、考える余裕があるのかななんて、ちょっと大人になった気分になってみたり。
「んーぅっ、っれしーぃがー♪」
どっかできいたことあるような、ないような。
思い出せないことって、一回気になりだすとダメなんだよなー・・
歌にあわせて、お手玉を頭に載せている。
そうか、お手玉って、積み上げていく高さを競うもんなのか。
「うり、それ、なんの歌だ?」
「いかんの。」
「いかんの?」
「いかんのあながあいていぅの。」
「・・・いかんのう、穴が開いている・・・?バァちゃんに何教わったんだ?」
穴が開いている・・・。
靴下か?
パンツか?
うりを持ち上げて、あちこちみてみるが、どこにも破けた跡はない。
「いーかんーのあーながーああああいてーいぅー♪」
・・・今日、バァちゃんに聞いてみよう・・・。
「ほーら、うり、坂道だぞー?」
「ぉぉぉぉおお!」
「いくぞー!」
ママチャリの後にうりを乗せて、坂道を下る。
できればカゴにのせたいよなーなんて思ってみたりしたけど、うん、悪くないっ!
バァちゃん家までおかげでかなり近くなった。
自転車サマサマだなっ。
いつもの橋を渡って、見えてくるのはバァちゃん家。
今日のお土産は、ナス。
なかなかでかいやつがなってたから、もってきたのだ。
自転車で、庭を抜ける。
ニワトリーズが草を食べているのを見てか、うりが、
「こっこっこっこっこっ?」」
「ん?」
「けー!」
・・・威嚇してんのか、会話試みてるのかっ?
「あ、ミヨコさーん!こんにちわー!」
「ぁー!」
畑にしゃがみこんで草むしりをしている、後姿。
大きな声で声をかけると、立ち上がって手を振ってくれる。
「よくきたねぇー、バァちゃん縁側にいるからねー!」
そういうと、よいしょっと腰を伸ばすミヨコさん。
「ありがとうございますー!」
「しゅー!」
チリンチリン、とベルを鳴らして、縁側まで走る。
「おお、よく来たねぇー、まってたよぅ。」
「バァちゃん、これ、お土産っ!」
「なし!」
「ちがう、なす、だっ!」
「ぅ!」
うりが、しっかりと抱えていたナスをバァちゃんに渡す。
「ありがとねぇ、うりちゃん。」
わらしさま、と呼んでいたバァちゃん。
今は、バァちゃんのほうがずっと年を取って、それでも、うりはちいちゃくて。
目が覚めたうりに、わらしさま、と声を掛けたバァちゃん。
「うり、バァちゃんだよ。色々うまいものもらっただろ?」
「ぁーちゃ?」
にこーっとわらって、バァちゃんにぎゅぅーっと抱きついた、うり。
バァちゃんが、バァちゃんじゃなくて、もっともっとちっちゃかったころ。
そのことをうりが覚えているか、いないかは、わからない。
その頃の事から、紹介したほうがよかったのか、これでいいのか。
でも、俺がしってるのは、うりで。
おかえり、っていって、ただいまって帰ってきたのは、うりで。
きっと、いっぱい、いっぱい、混乱するんだろうな、なんて思ってた。
でも。
「うりちゃん、よかったねぇー?」
「ぁぃ♪」
って、バァちゃんは、うりの頭を撫でた。




