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羽を成せ
吊革にぶら下がって夢見る蛹は
二つ先の駅から目を逸らして
本当の自分が目覚めないように
どろどろに溶けてしまった
箱の中で糸を吐く芋虫は
仮想空間では勇者で
何万ダースの繭達と共に
どろどろに溶けてしまった
液晶画面に映し出された
華やかに踊る蝶の群れを
逞しい角を振り上げる甲虫を
目を輝かせて眺める少年少女は
分厚い昆虫図鑑の滅多に開かない頁の
そんな未来像なんて微塵も想像してなくて
形を成せ
それでも形を成せよ
雄々しい角も綺麗な羽根も無い
闇夜 光に群れる虫のよう
朝が来る頃には力尽きているのだろう
形を成せ
それでも形を成せよ
もがいた挙げ句死骸に成り果てるか
それともそのまま腐って死ぬか
どうせ死ぬなら
どちらにせよ醜いのだから
二つ先の駅を見据えて
せめて繭を破って
形を成せよ
何に成りたかった?
もう何だっていいだろう
飛べ




