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幼馴染令嬢の悲壮なる覚悟

掲載日:2026/08/11

アンジェリーナは、レッテラー子爵家の長女であり、婚約者はパズラント伯爵家の嫡男で同い年のユリウス。


二人が婚約したのは10歳の頃。レッテラー子爵家は林業・畑作・果樹園を営んでおり、地方から王都への流通を担うパズラント伯爵家との政略によって婚約が結ばれた。 子爵家の果樹園で採れる仁果類が近隣で評判となりつつあり、それを伯爵家が迅速に王都へ流通させることで、双方にとって有益となる縁組だったのだ。


出会いは政略であっても、アンジェリーナはユリウスの優しい人柄に恋をした。 やがてユリウスは「家を継ぐ前に騎士となり、家族や領民を守れる貴族になりたい」という夢を語るようになり、彼女もまた、その夢の実現に協力しようと考えていた。


しかし、二人が王立の貴族学園に入ると、ユリウスが病弱な幼馴染を心配して、アンジェリーナとの約束を破ることが増えていった。 最初の頃は「家族を大事にする優しい人」で済んでいたが、二度、三度と続けば邪推もしたくなる。 二人きりのデートのみならず、上位貴族との夜会や、学園の知人に招かれた茶会といった重要な社交の約束まで反故にされては、アンジェリーナが婚約の見直しを考えるのも当然だった。


そうして両家は話し合いの場を設け、原因となった男爵夫妻と病弱な令嬢もその場に呼び出された。


◇◇◇


「この度は、大変申し訳ございませんでした。何卒、ユリウス様とアンジェリーナ様との婚約破棄だけはご容赦くださいませ」


青ざめた顔に、骨のように細い手足。現れた人物はまさに「病人(死にかけ)」と言った風貌であり、関係者が揃った場で突然土下座をしたのだ。


全員が呆気に取られ沈黙するなか、彼女はプルプルと震えながら土下座を続けている。 やがてゴホゴホと激しく咳き込み、口元に手を当てた。


「ミランダ!?」


ユリウスがハンカチを取り出してミランダ嬢の口元に当てると、そこには血の混ざった染みがついていた。

「これはいかん!」 私のお父様が使用人に命じ、ミランダ嬢を客間で休ませようとしたが、彼女はそれを拒んだ。


「みっともない姿をお見せして申し訳ありませんが、父と母に話を任せるわけにはまいりません!」


今にも息絶えるかと思える姿でありながら、ミランダ嬢の瞳はギラギラとした光を宿し、こちらを凝視している。 伯爵家、子爵家、両家の当主ですら、その異様な雰囲気に呑み込まれていた。


ミランダ嬢は語り始めた。


「私の本心をお話しいたします。私が病弱であり、従兄である伯爵家に庇護を求めたのは事実です。ユリウス従兄様にいさまは私を哀れに思い、よくお見舞いにも来てくださいました。感謝に耐えません。……ですが! 婚約者である子爵令嬢様との約束を破ってまで、私を見舞うよう頼んだ覚えなど一切ございません!」

「し、しかし……現にお前は死にそうになっていたではないか!?」 ユリウスが困惑して叫ぶ。

「それはいつものことです」


当たり前のように「死にかけるのは日常茶飯事」と言い放つミランダ嬢に、一同は唖然とした。


「恥ずかしながら、私が生きていくためには伯爵様の慈悲が必要です。うちの男爵家では私の命を維持できないのが現状なのです。ですが!」


ミランダ嬢はキッと目を見開き、叫ぶように続けた。


「それも伯爵家が健全に発展し続けられてこその慈悲! お互いの発展のために結ばれた伯爵家と子爵家の婚約を反故にして、そんな慈悲が得られると思いますか!? いいえ、あり得ません!」


ゼェゼェと息も絶え絶えになりながら叫ぶ内容は、あまりにも生々しい。


「うちの両親は考えなしの馬鹿だから『ユリウス従兄様を私が射止めれば慈悲を継続してもらえる』と勘違いしたのです!」


「ミランダ! だって――」 男爵様が反論しようとすると、ミランダ嬢が一喝した。

「だってもクソもないって、まだわからんのか!」


その叫びの勢いで、血の混ざった唾が男爵様にかかる。男爵夫人は口をパクパクとさせるだけで声も出ないらしい。口調までガラリと変わり、もはやホラーの趣である。


「こんな感じで勘違いした両親が、ユリウス従兄様のデート日程を邪魔するように連絡をしてしまい、本日のような場に呼ばれることとなりました」


そして、彼女は私を見た。 ヒッと声をあげそうになった私を、誰も責められないと思う。それほどミランダ嬢は、生き死にをかけた覚悟の瞳をしていたのだ。


「お初にお目に掛かれて光栄です、アンジェリーナ様。このようなこととなり、本来なら申し開きもできない身でありながら厚かましいのですが……どうか真面目で誠実で、でも人情と押しに弱いユリウス従兄様をお支えください」


ミランダ嬢は再び土下座した。


「ユリウス従兄様からお人柄をお聞きし、押しに弱い兄様をきちんと論理的に諭せる素晴らしいご令嬢だと伺っております。お人好し馬鹿な従兄様は私なんかを優先してしまいましたが、これを機に『そんな金にならない人情』と『有能で美しい婚約者』のどちらを選ぶべきかという、単純明快な貴族としての判断についても再教育して差し上げてほしいのです」

「え? ちょっとミランダ!?」


ユリウスが「僕のことそんな風に見てたの!?」という顔で慌てている。 伯爵家・子爵家の誰もが心の中で「すごいなミランダ嬢……」と感服していた。


「ですから……今後とも私には慈悲を……」


やっぱ、すげーわ。この女(ミランダ嬢)。 全員が再び沈黙した。


「……やはり、そんな都合のいい話にはなりませんよね。もちろん、原因を作った男爵家の罪の償いはしなくてはなりません」


ゆらり、と立ち上がったミランダ嬢は、ユリウスの腰に手を伸ばした。 何をするのかと思う間もなく、彼女はユリウスの腰の剣を引き抜いた。


「そうですね。仕方ありません。原因を作った男爵夫婦を殺して、私も自害しましょう」


幽鬼のようにふらふらと、両手で持った剣を落としそうになりながら、ゆっくりと男爵夫婦へ歩み寄るミランダ嬢。 男爵夫婦はお互いに抱き合って震えている。あまりの展開と異様さに動けないようだ。


「示談金は……我々が亡き後の男爵領をお願いします……」


そう言って剣を持ち上げようとした瞬間――。 ミランダ嬢はそのまま剣を持ち上げきれず、体力の限界を迎えて意識を失い、その場に倒れ込んだ。


◇◇◇


その後、伯爵家は大騒ぎとなり、婚約破棄の話は一旦延期となった。ミランダ嬢はそのまましばらく伯爵邸で看病を受けることになった。

私たちが帰宅する前、ユリウスがやってきて正式に謝罪してくれた。


「アンジェ、ごめん。ミランダの言う通り、僕は君の優しさに甘えてしまっていたようだ。虫のいい話だけど、僕は君を愛しているし、信頼している。どうか僕との結婚をもう一度考えてほしい」


そう言って、改めて二人だけの約束となるプロポーズをしてくれた。 破綻しかけた婚約だったが、あの話し合いをきっかけに互いの本心を打ち明け合えるようになり、絆はより強固なものとなったのだ。


その後、男爵家は伯爵家に委譲された。 元・ミランダ嬢は伯爵家と子爵家の領地の境にある温泉地にて、元男爵夫婦と療養を続けている。どうやら温泉が体質に合ったのか、昔ほど発作は起きなくなり、手足もふっくらとして健康を取り戻したようで、定期的に感謝の手紙が届く。


そして驚いたことに、このミランダ嬢は「異世界転生者」という不可思議な記憶を持っているらしく、果樹園の栽培法や街道整備に関するアイデアをくれて、両家の発展に大きく貢献している。

温泉地の「妖精令嬢(平民となったが)」として、今は人々から大層崇められているそうだ。


おしまい


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


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AI利用状況設定については、設定にて「補助的利用(アイデア出し・資料調査・誤字脱字のスペルチェックなど、補助的な利用)」にチェックして投稿しています。

補助的利用については、「この設定は公開されません。※ただし、コンテストに参加されている場合や、商業化等で作品へのお問い合わせがあった場合など、関係する企業に伝達することがあります」

とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。

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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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― 新着の感想 ―
幼馴染令嬢の覚悟がキマりまくってる……。 まあ収まるところに収まって不幸になった人はいない(両親は知らないですが)のでこれで良かったんですよね。 ところでミランダ嬢、前世か前前世あたりでお武家様だった…
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