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胃袋ダンジョン黎明期~現代ダンジョンはヤベー神様の腹の中~  作者: 廃くじら
第二部

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43/50

第43話~疑惑~

「はぁ? 僕が椎野さんと陰で付き合ってて、真木さんを盗撮写真で脅しつつ時東さんを羽佐間さんと一緒に調教して、佐々木室長の●の穴を●めて上層部に取り入ってる?」


モニター室に血相変えて飛び込んできた真木さんの話を聞くと、つまりそういうことらしい。


色々と疑問やツッコミどころはあるが、取り合えず──


「何でその状況で僕と椎野さんはノーマルな関係なんですか?」

「そこ?」


呆れた様子で椎野さんがツッコむ。


「室長のくだりは別にいいわけ?」

「いや、室長だけじゃなくて噂全般良くはないけど、椎野さんのくだりだけ毛色が違うじゃん。そこだけリアリティ出してくるのはおかしくない?」

「まあ確かに──って、何よ。私と噂が流れたら嫌なの?」

「椎野さんに限らず根も葉もない噂は嫌だねぇ。それとも椎野さんは嫌じゃないの?」

「嫌だけど、男の側から言われるのはもっと嫌」

「ごもっとも」


女心に理解を示しつつ、僕は改めて真木さんに向き直った。


「──で、それがどうしたんです?」

「どうしたって……」


問い返されて、真木さんは少し言葉に詰まる。


「つまりそういう噂が流れてて──」

「ただの噂ですよね。こういう女子の少ない環境で、僕みたいなのが真木さんたちみたいな綺麗な人たちと一緒にいたら、やっかんで下らない噂流す連中もそりゃ出て来るでしょ」

「……でも、火のないところに煙は立たないって言うし」

「じゃあ、真木さんって僕に脅されてるんですか?」

「…………」

「あ~でも、鶫さんと京さんのくだりは少しそれっぽいかもね」

「いや、聞きたくないから」


余計な口を挟む椎野さんを睨みつける。馬鹿馬鹿しくてふざけたくなる気持ちは分かるけど、ならそっちで処理してくれ。


この頃には真木さんも大分冷静になったようで、何だかおかしいなという表情。首を傾げながら確認するように、


「……じゃあ、月見里くん。華とは付き合ってないの?」

「そう見えるならマジで眼科をお勧めします」

「華のどこが不満なの?」

「待って真木さん。その言い方だと私が月見里くんに気があるように聞こえる」


椎野さんのツッコミは真木さんには届いておらず、仕方なく僕は嘆息混じりに答える。


「……椎野さんに限らずお付き合い自体面倒くさくて嫌ですね。相手がどうあれ付き合うとなると気を遣わないわけにはいかないし、疲れるでしょ。自分のペースが乱されるのしんどいタイプなんですよ」

「もう、まだ若いのに恋愛経験ゼロで婚活に挑んだ割とカタログスペックだけいいアラサー男性みたいなこと言わないの」

「あんたに非モテアラサー男の何が分かる」


思わず敬語を忘れて素のツッコミを入れる。


「──というか論点がズレてます。結局、真木さんが悪意のある噂を聞いたってだけの話でしょ? 見た目のいい女性が絡むと嫉妬してそういう下らないこと言い出す人間は出てくるもんだってことはさっきも言いました。真木さんは一体この話の何を問題にしてるんです?」

「何を……?」


改めて問うと真木さんは腕組みして考え込んでしまった。まさかとは思うが、この人単におかしな噂話耳にして反射的に飛び込んできただけなんじゃないだろうな?


「…………あのねぇ──」

「でもその話ちょっとおかしくない?」


段々面倒くさくなり、僕がこの話を強引に打ち切ろうとしたタイミングで椎野さんが口を挟む。


何だ? またトンチキなこと言い出さないでくれよ?


「おかしいって、何が?」

「ん~──真木さん。その噂って誰から聞いたの?」


椎野さんは僕の質問に答えず、真木さんに確認する。


「誰って、同級生の男子だけど? 廊下ですれ違った時『そういう噂が流れてるけど大丈夫なのか?』って」

「うんうん。そんなところですよねぇ」


椎野さんはしたり顔で頷くが、いったい何が言いたいんだろう? 噂話を同級生の男子から聞くことの何がおかしい──あ。


「月見里くんも気づいた? そういう噂って別にあってもおかしくはないけど、わざわざ本人に伝えてくるってよっぽどじゃない? 特に私たちって他に女子が少ないから、噂が耳に入る機会自体が少ないし、今まで真木さんが言ったみたいな噂とか一度も聞いたことがないのよね。──月見里くんはどう?」

「……言われてみれば聞いたことないな」


当然そんな噂もあるだろうと思っていただけで、思い返せば実際にそうした悪意のある噂を聞いたことは一度もない。


「だよね。私が思うに、ダンジョン警備隊の人ってちゃんとした人が多いんだよ。おかしな人は入隊の段階で大体弾かれてるし、こういう根も葉もない噂を広めたり信じる人はほとんどいない」

「ねぇ、その言い方だと私が──」

「中にはそうじゃない人もいるけど、私たちの耳に届くようなことにはならないと思うんだよね」

「…………」


不満そうな表情をしている真木さんを無視して、僕は椎野さんの言葉について考える。


普通ならこんな与太話は誰も信じないし相手にしないが、今回はそうではなかった。それはつまり──


「……何か信じる──とまではいかなくても、面白がれる程度の根拠はあったってこと?」

「確証はないけどね。真木さん、その同級生って何か言ってませんでした?」

「ううん。彼は単にそういう噂が広まってるってことを教えてくれただけで、誰が言い出したとかそういうことまでは知らない感じだった」

「う~ん……月見里くんは? 何か心当たりないの?」

「悪い噂が広まる心当たりねぇ……」


悪意のある噂を流される心当たりなら幾らでもあるが、それが広まるとなると何とも言えない。少なくとも、今このタイミングで広まる様なことは──


「──ひょっとしてハニヤスの件で一緒に学校休んで開発室の奥に引き籠ってたことか?」

「それはあるかもね」


正隊員ともなれば機密に関わる機会も多く、任務内容を他者に明かせないことも多いが、それは基本的にダンジョン内部での出来事が中心だ。今回のように開発室絡みで長期間、しかも男女一緒に学校まで休んで機密任務に就く理由など普通はない。このことを面白おかしく話をする人間がいたとすれば、尾ひれがついて噂が広がってもおかしくはない、のか──?


「ああいやだけど、それだったら噂の中心が僕ってのはどうなんだろう? 巽だって一緒に休んでたんだし、あいつも混ざってないとおかしいよね」


僕の言葉に椎野さんと真木さんが顔を見合わせ考え込む。


「う~ん……そこはあれじゃない? 巽くんは途中で抜けてるから……」

「それだけで?」


椎野さんの言葉に顔を顰めて疑念を呈す。


椎野さんは言い辛いことがある風に言葉を探している様子だったが、そこに真木さんがポンと手を叩いて口を挟んだ。


「分かった! 元々、月見里くんて巽くんに寄生してるとか悪く言われてたし、巽くんも何か弱み握られてると思われてるんだ!」

「真木さん……」

「……あ。ごめん」

「…………別にいいですけど」


要は元々巽より僕の方がイメージが悪かったと言いたいのだろう。


あいつは僕より外面が良いし、先輩たちからの評価も高かったからな。噂が広まる段階で『あいつはそんな奴じゃない』とか誰かが庇った可能性もある。


いやでも、仮に僕の方があいつよりイメージが悪かったとしても、あいつの方がチャラいし腹立つことにイケメンだし、女性関係のゴタゴタはそっちの方がリアリティないか?


「……まさかあいつがハニヤスの件を根に持って悪意のある噂を流したんじゃ──」

『まっさか~!』


僕の半ば本気の疑念を、椎野さんと真木さんが即座に笑って否定する。


「……いやでも、もしあいつが噂の発信源だとすれば、あいつが噂の中心から外れてることも、まともな人が多い警備隊でこんなうわさが広まったことも説明がつきやすいっていうか──」

『ないって』

「…………何でそう言い切れるのさ?」

「巽くんはそういう陰湿なことするタイプじゃないでしょ?」

「月見里くんは割としそうだけどね」

「…………」


真木さん、タイプってなんだよ? ああいう爽やかそうに見える奴が割ととんでもない性癖もってたりするんだぞ?


椎野さん、僕ならしそうって……そういうことは思ってても口にしないのが慈悲ってもんだろう? というか、僕はこんな風に簡単に足がつくことはしない。

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