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胃袋ダンジョン黎明期~現代ダンジョンはヤベー神様の腹の中~  作者: 廃くじら


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第3話~入隊~

『──であるから、諸君らにこれから人々の安全を守る警備隊員の一員としての自覚を持って……』


普段は演習場として使われている体育館のような建物の前方で、もう名前は忘れたが来賓の偉い人が一〇分以上話続けている。新入隊員の多くは退屈な訓示に眠気を刺激され、何人かは船をこいで夢の国に旅立ってしまっていた。


そんな中、僕は自分の決断が正しかったのか今更不安になり、天井を見上げてホゥと溜め息を漏らす。


──入っちゃったんだなぁ……


入隊試験を受けたあの日から僅か半月後、僕はダンジョン警備隊の入隊式に参加していた。




入隊を勧めて来た警備隊職員の言葉に胡散臭いものを感じなかったわけではない。


絶妙にあり得そうな理屈でこちらの自尊心をくすぐってくるあの物言い。何か裏があるのではという疑念は結局最後まで晴れることはなかった。


そもそも彼らは子供を戦わせようなんて組織の人間だ。どれほど疑っても疑い過ぎということはないだろう。


僕を勧誘しようとするあの言葉には何か裏がある──それは理解した上で、僕は最終的に入隊を決断した。


決断した理由は幾つかあるが、一番大きかったのは既に入隊している隊員が一般の中学・高校に通っていて、外部との接触を絶たれているわけではないと実際に確認が取れたことだろう。それだけで絶対に無碍な扱いをされないという保障はないが、少なくともダンジョン警備隊は世間体や建前を無視しているわけではない。それが確認できたことは一つの安心材料ではあった。


勿論、その上で手続きには慎重に慎重を期した。入隊書類──特に誓約書の類は目を皿のようにして読み込み、控えだけでなく別途コピーも取ってお世話になっていた施設の職員さんに預かってもらった。


施設職員の白井さんは最後まで僕のことを気にかけてくれて、何時でも除隊して戻って来てくれていいと言ってくれた──本当にありがたい話だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


長く忍耐力が試される式典が終わった後、僕ら新入隊員約五〇名は屈強な職員に案内され、オリエンテーションに参加した。


その内容は警備隊の施設案内を兼ねた能力テスト。しかも単なるテストではない。


「今から諸君らに警備隊員の証である『リング』を貸与する。改めて言うまでもないことだが、このリングは警備隊の最高機密だ。認証を受けていない外部の者には使用できないようプロテクトがかかっており、位置情報も常に把握しているが、紛失した場合には厳しい罰則がある。また、あり得ないとは思うが外部の人間に貸与や供与を行った場合、刑事罰に問われる可能性もあるのでくれぐれも軽率な行動は慎むように」

『…………』


そう脅しをかけられ、僕らはシルバーの『リング』を渡された。


「どこの指に嵌めても身体に触れさせてさえいれば使用に支障はない。──全員装着したかな? それではこれからリングの効果を実感してもらうため、簡単なテストを受けてもらう。まだ実感はないだろうが、そのリングを嵌めた時点で君たちの身体能力はオリンピック選手をゆうに上回るものとなっている。迂闊な行動は大怪我に繋がるリスクがある為、慣れるまでは慎重に行動してほしい」


そう言われて、僕は一先ず左手中指に『リング』を嵌めて能力テストを受けることになった。


その結果は──




「う~ん……凄いんだけど、微妙」


これに尽きる。


テストは一般的な体力測定から始まり、障害物や高低差のある地形を可能な限り速く踏破したり、会場内に隠れたダミー人形を探したり、近接武器を使って人形を攻撃したり、ライフル銃で的当てをしたりと色々。テスト会場は普段は隊員たちの訓練施設として開放されているらしく、施設の利用方法を聞きながら一通りのテストを受け終わった時には、昼休憩を挟んで夕方近くになっていた。


実際『リング』による身体能力の向上は凄いものだった。まだ僕はそれを持て余している状態だというのに、一〇〇メートル走は六秒台、握力は二〇〇キロ超とガチ超人の記録がポンポンと出る。五感は単純に視力や聴力が良くなるだけでなく、観察力や聞き分けといった脳機能まで強化されているようだ。模擬刀でダミー人形をぶん殴った時には人体と同じ強度と重量を持っている人形が弾け飛び、僕だけでなく多くの人間が自分の肉体から繰り出された破壊力に呆気に取られていた。


うん、文句なしに凄い力だ。この結果を見れば確かに警備隊がリスクを冒して少年兵を募集する理由がよく分かる。


で、そんな新入隊員たちの中で僕の結果がどうだったかというと、概ね中の下と言ったところ。入隊試験時の体力テストでは下の中ぐらいだったから決して悪い結果ではないのだが、優秀な連中と比較すればハッキリ見劣りするレベルだ。


入隊試験時に告げられた通り僕の才能は精々『並』で間違いないらしい。


「テストは以上だ。今日利用した訓練施設はいつでも自由に利用可能だが、闘技場や射撃訓練所は利用希望者が多いので前日までに施設予約を入れておくことをお勧めする。それでは今から今日受けてもらった試験結果を交付するので、名前を呼ばれた者から取りに来るよう。鮎川──」


職員からA4サイズのシートを交付され、その内容に目を通す。


そこには試験結果と同期の新入隊員51名内での順位が列挙されていて、下にはそれらを参考に現時点での僕の能力が各項目一〇段階で評価されていた。


「筋力」とか「耐久」の評価が低いのは予想通りだが、『リング』への適性を示す「魔力」が「4」……これはどうなんだ? 鍛えれば上がるって話だから、それを踏まえて平均ってことなんだろうか。


う~ん……見方がよく分からないけど、全体的に何か低い気がする。感覚の鋭さを示す「知覚」の項目だけは高いが、それ以外は軒並み平均以下。なんて言うか、別に化け物相手に無双したいとかそんなことは考えていないけど、これは──


「なぁ、お前はどんな感じだった?」

「!?」


横から突然緩い雰囲気のイケメンに試験結果のシートを覗き込まれ、驚いて咄嗟に裏返しにする。


「あ。何だよ、別に隠さなくてもいいじゃんか」

「……悪いけど個人情報とコンプライアンスにはうるさい方なんだ」


馴れ馴れしい態度にイラッとしつつ、それを押し殺して僕はその茶髪の少年に素っ気なく応じる。


しかし茶髪は何が面白かったのかその回答にニヤリと笑い、肩を組んで一方的に自分の試験結果を見せつけてきた。


「そう言うなよ~、これから一緒に戦う仲じゃんか。ほれ、俺のも見せるからさ~」

「やめろ。見せんな。絶対分かっててやってるだろ」


見せたがるのは大抵自分に自信がある奴と決まってる。


ウザ絡みしてくる茶髪のシートから顔を背け──あ、クソ。少し見えた。しかも何か「1位」とか一桁代の数字が並んでたぞ。こいつマジでウゼェ……


僕がウザ茶髪をイライラしながらあしらっていると、案内役の職員が口を開く。


「結果については色々と思うところがあるだろうが、それはあくまで現時点での評価だ。あまり固執することなく、あくまで自分の現在地を知る材料の一つとして活用してほしい」


そうだ。その通り──だから僕のシートを引っ張るなウザ糞茶髪!


「それにカタログスペックがどれだけ優れていたとしても、そのことと実際に戦場で戦えるかどうかは別の話だ。これから君たちには今日のオリエンテーションの締めくくりとして『戦士』としての適性を量らせてもらう」

『?』


戦士としての適性?


意味が分からず首を傾げていると、扉が開いて武装した職員が篭──いや、移動式の檻を運んで会場の中に入ってきた。


「ひっ!?」


新入隊員たちの幾人かから悲鳴が漏れる。檻の中には小柄ではあるが鬼や天狗といったダンジョン内に棲みつくクリーチャーが大量に閉じ込められていた。


そして新入隊員たちが悲鳴を漏らしたのは、危険なクリーチャーを目にしたから──だけではない。檻の中のクリーチャーは四肢を喪失していたり、関節を砕かれていたり見るからにボロボロで辛うじて生きているような状態。その化け物とは言えあまりに凄惨な有様に、多くの新入隊員たちが生唾を飲み込んでいた。


そんな彼らの反応を敢えて置き去りにして、案内役は淡々と説明を続ける。


「こいつらは我々がダンジョン内で研究サンプルとして捕獲したクリーチャーだ。見ての通り、戦闘能力は奪ってあるから怖がる必要はない」


いや、そういう問題じゃないんだが。


「今から君たちには、好きな武器を使ってこいつらを一体ずつ殺してもらう」

『!?』

「『何故、そんなことを?』って顔だな。理由は先ほど言った通り君たちの戦士としての適性を量る為だ。我々プロの兵士でも生き物を殺すという行為は精神的に抵抗がある。特に対象が人型であれば猶更だ。相手が人類の敵だと分かっていても、いざ殺すとなると身体が固まって動けなくなる兵士というのは一定数いてね。実戦でそれが分かったのでは致命的だろう? だから事前に、君たちが殺せる人間なのかどうかをこの場で確認させてもらう」

『…………』


入隊した以上、いずれこういう人型の化け物も殺さなくてはいけないと分かってはいたし、理屈は分かる。分かるのだが、今ここで?


「別に殺せなくても除隊しろなんてことは言わないから安心して欲しい。直接戦闘に関われなくても『リング』が使える人間にやって欲しいことは研究協力、開発支援、施設整備といくらでもある。こいつは配属を決めるための適性診断と思って気楽にヤってくれ」


そんな言葉と共に、僕らの前に多種多様な武器の収められたカートが運ばれてくる。


ニコニコと、人の心のない取り繕った笑顔を浮かべる職員たちに、僕は『やっぱり子供を戦わせるような大人には糞しかいねぇ』と、分かり切っていた事実を再認識した。

【登場人物①】

月見里やまなし めぐる

男、14歳(中学2年生)、1月1日生まれ

165cm、46kg


<能力評価>

魔力  4

筋力  3

耐久  3

技量  3

機動  5

知覚  7

射程  3

特殊  0


<補足>

魔力……リングを使用するための基礎エネルギー、侵食度

筋力……力の強さ

耐久……肉体の頑丈さ、持久力

技量……戦闘技術

機動……移動速度・機動力

知覚……五感、魔力に対する感度

射程……攻撃範囲の広さ

特殊……特殊能力、普通は「0」


原則1~10の十段階で評価され、正隊員の平均値は5。

魔力は基本的に高いほど有利だが、肉体的強化には器による限界がある。

魔力は侵食度とも呼ばれ、成人前後までは使うほどに鍛えられるが、10を超えると……

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