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僕たちは捨てられた、それでも立ち上がった

虹の家から始まる日常は、不思議な客をおもてなす。


話が盛り上がって、気がつけば夜になっいた。だけど僕たちにはどこにも帰るべき場所が無かった。家を失った彼女と、家がない僕にはどこにも居場所が無かった。結局この店で寝泊まりすることになった。それ以外に場所がないからだ。営業は明日からで昼から夜に簡単な飲み物と本を売る…そんな店だ。


「いらっしゃいませ!見学自由ですよ!」

「コーヒー1つですね!」


仲間と一緒に働く…なんだか夢みたいだ。仲間と仕事をするだなんて…昔じゃ想像できなかった。昔も山の中ではほとんどこんな感じだったのに、時が経つのってどうしてこんなに早いのだろうか。


物心ついた時から親はいなかった。だから施設でずっとお世話になり、気がついた時にはもう卒業しなければならなかった。なのに身寄りもなければ誰も引き取らない。気がついた時にはあの日、施設の玄関に僕たち7人が集まっていた。高校を卒業して特に職も無かった時、誰かが山の管理を手伝ってと頼まれたのを思い出した。しかし、思い出すまでには時間がかかった。追い出されたらまずは街に行かなくてはと思い街に出ると、そこは地獄だった。地獄だったある日、その言葉を思い出して逃げるように山に向かった。そこからは山に住み込み、他愛もない日常を過ごしていた。ある日、突然山に火を放たれるまでは。あれから山は枯れてしまった。管理人もすぐに亡くなって…その後はずっと言っていた通りだ。それから僕は東京で適当に、自堕落に過ごしていた。幸いにもお金だけはあったのでそこで遊んだり適当に日雇いバイトをやって稼いだりしてここまで生きてきた。行き当たりばったりで何もなくただただ堕落していた。


「この店、結構雰囲気いいじゃん。明日もここに来るね。ここならきっと探している人も見つかるのかもね。」


どうやらこのお客様も誰かを探しているようだ。


「誰かをお探ししているのでしょうか?」

「えぇ。数年前に出ていった息子を探しているんだよ。彼は昔から何を考えているか分からなくてね…」

「特徴とか…もしくは画像を見て持っていますか…?」


そう尋ねると画像を見せてくれた。でも、この顔に見覚えがあった。先日言った夜の風呂屋の受付に似ているのだ。確かめたくなったのでその店に行くことにした。徒歩にして20分は歩いただろうか。その店の前にたどり着くと、受付に今日も遊ばないかと誘われた。違うんだ。今日は少し聞きたいことがあるんだと言い、写真の画像を見せた。その受付はその人がいまどこにいるか、何時に勤務が終わるかを伝えた。


「…そのお客さんの探している人が見つかった。待ち合わせをどうするか教えて欲しい。」

「…駅に19時らしい。」

「…わかった。すみません、駅に19時だそうです。」

「どの駅かわからないけど…たぶんあそこだな。それならその近くの寺まで連れて行く。」


そう店の受付と決めて、僕は帰ってきた。徒歩での往復だったので帰ってきた時の空調が心地よかった。


そのあと無事に見つけることはできた。そのお礼に彼女は店にコーヒーを飲みにきた。


「見つけてくれてありがとう。実はさ、私もう一つ言いたいことがあってさ…あのね、おじいちゃんが言ってたの。虹の家のメンバーにあったらこれを渡せって…」


渡されたものは手紙だった。管理人の直筆のものだった。内容は…


"山を守れなくてごめんなさい。私にはどうすることもできなかった。止めようと思った時は既に火の海が回っていた。でも、これだけはわかってほしい。彼らも悪気はなかった…彼らは役所よりも上の存在だったからな"


役所の職員は知っている。僕たちを認めていたからだ。しかし、その上となると…政府か政府が金を出した業者にしか過ぎない。それとも、詐欺集団だったのか…今となれば何もわからない。ただ、それなら僕たちはなぜ山を燃やされたのだろうか。

山が燃えた理由もわからない。だが、味方は思わぬところにいた。

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