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ある日のこと、悲しい話

リーダーは誰かと聞く彼女がいた。その彼女は彼のことを知っていたのだろうか。


 夢を見た。あの時の夢だ。忘れたかったのに忘れられなかった。みんなの悲鳴も怒りも鮮明に聞こえるような夢だ。


「なんで僕たちの山を!」

「やめて!あの子たちを返して!」


大人たちを止めても、僕は殴られて止められた。僕も仲間も燃える山を見て地獄に落とされた。信じられるのは仲間たちだけだった…それなのに一瞬でみんなバラバラになった。今じゃ仲間はどこにいるのかわからない。もしわかっても、僕はどんな顔で会えばいいのだろうか。そう思うと、目が覚めた。


目が覚めると、彼女の部屋にいた。そうだ、駅で会ってから彼女の言われるままに部屋に行き、そこで安心して爆睡していたのだ。しかし、今思えば見ず知らずの僕をよく泊めてくれたと思う。


「そういえば君の名前はなんだっけ…」

「赤間淳。じゅんと呼んで欲しい…」

「そうなの。じゅんはさぁ、私の境遇なんて知らないでしょ。私もね…昔喧嘩しちゃってね…」


彼女の話はこうだ。昔彼女は家族と仲が良かったそうだ。しかし、彼女が16の時に母が亡くなった。そして父親もあとを追って自殺した。それだけなら良かったのに引き取った親戚は子を子として見ずに放置したそうだ。それだけならまだしも、その親戚は実の子であるはずの妹と弟にも手を上げて、育児を放棄して、気がつけばぐったりしていた。結果として妹と弟は病院に行ったが、妹は間に合わず亡くなった。それ以降、親戚には黙って弟と一緒に家を飛び出した。しかし、一緒になったはずの弟は中学の時に部活中に倒れて意識が戻らなくなった。今も弟は意識が戻っておらず、しばらく1人で住んでいたという。


「…私は誰も信じられない。信じても裏切られるだけだから。」

「…そうか。」


悲しい話は嫌というほど聞く。胸糞悪い話はその数倍流れる。それらばっかりが頭に残る。それなのに、中和さしてくれるはずの嬉しい話は誰もしない。笑顔で過ごせ、だなんてバカな夢の話だ。彼女はおそらく僕と話すことで気が晴れるのかもしれないのだろうか。


「まぁいいの。私の話を聞いてくれてありがとう。君も見つかるといいね。君の仲間がね。」

「そういえば君はなんて言うの…?」

「私はこかげ。福間こかげよ。じゅんの仲間の手がかりじゃないけど…情報屋をやってる人を知ってるわ。今度呼ぶわね。」


彼女…こかげはそう言って仕事に出かけた。彼女は彼女でレストランで働いているそうだ。僕はその間暇なのでパチンコでも打つことにした。


数時間が経ち、ぼちぼち負けたところでレストランに行くことにした。たまたまそこで見かけたのは知らない誰か同士が隠れて話す不思議な光景でかる。安い店だと言うのになぜそんなことをするのか…そう考えていると、数時間が経っていた。そろそろ家に帰ることにしよう。


「…ただいま。」


ドアを開けて、部屋に広がるのは静寂のみだ。こかげの部屋はまるで誰もいないようだった。しかし、こかげは帰って来ていた。夕飯の時間に僕を呼び出したからだ。


「明日の10時にここに来て。情報屋が情報をくれるそうよ。」

「わかった。もしかしたら今日が最後かもしれないね。」

「そうね。」


朝、彼女に手紙を残して目的地に向かった。その手紙の最後に、僕は事実は隠蔽され、いつしか葬り去られると書いたと思う。こかげの弟は部活の指導で体罰を受けていたことをパチンコ屋の新聞で知った。それなのに事実は隠していたのが許せなかった。


実は、既にこかげの弟は息を引き取っていた。それもあの新聞で知った。数年頑張ったが、結局ダメだったという。医師は最善を尽くしたそうだ。ただそれさえも隠蔽するのだろうか。それはいかがなものか…今の僕にそれを聞いたところで、何になるのかさえわからない。ただ、彼女がこれを知った時にどうなるか、全く考えたくないものである。

情報屋が僕についての情報を教えたいらしい。情報屋が教えてくれる真実とはなんだろうか。

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