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第1ゲーム  〜攻撃極振り〜

かつて、近づいただけで全プレイヤーが逃げ出すようなゲーマーがいただろうか。

近づいたら殺される。

轟音を響かせ、地と空を引き裂くそれに。

何人も何人も。

そんな人物がこの世に存在できるのか。

否。今現在こうして皆から恐れられている。

誰1人近づこうとはしない。

「追いかける手間ができてめんどくさいったらありゃしない」

まぁ、半径500メートル以内まで近づけば全員殺せるのであるが。




私の名前は「柊 翼」ゲームガチ勢の高校生である。

2歳の頃からゲームの家庭教師を雇って猛特訓した。何故このような変な英才教育をさせられたのかは私にはわからない。

だが、今それが役に立っているので文句は言えない。


ゲームといってもテレビゲームだけでなく、スポーツやボードゲームもゲームの内に入っている。なのでかなりなんでもできるのだ。


私は今やっているゲームで変な2つ名を持っている。

「瞬殺のチーター」


私はチートなんて使っていない。

まぁ、チーターを倒したことなら数えきれないほどあるが、それは関係のない、いや、若干関係があるかもしれない。


ズルなんてして楽しいのだろうか、ズルをしたところで私にも勝てないくせに。


そんなことは置いといて、私が今手に取って拝見しているのは新作の「new earth Run」と 言う「VR MMO」である。

パッケージには『数人しか使えない固有スキルや、あなたしか使えない特別なユニークスキルで暴れ回れ!』と書かれている。


「このゲームでもいっちょ暴れますか!」

待ちに待った新作発売の当日。予約して、最速でプレイするためにスタンバイしているのだ。

「TOPプレイヤーになる秘訣は、まずスピードだよね!誰よりも早くレベルを上げるんだ!」


回線が混雑しているからか、なかなか始まらない。かなりいい環境を整えているので多少早く始まるはずなのだが。

そしてようやくタイトルを見ると、ボタン連打でスキップし、最速で設定画面へ到達する。

名前はもちろん「走る核ミサイル〆エンジェル」である。


前作から使っている馴染みのある名前だ。

前作から暴れ回っている翼のことを認知している人にとって威圧的な名前である。


次は初期装備選びである。

「大剣に‥‥‥ハンマー。メイスに杖に弓‥‥‥あんまり私に合ったものが無いなー。突撃部隊が私には似合ってるし、あんまり時間をかけて戦う武器は嫌だなー。前作で芋ってずっと隠れて戦わないやついたからな。そういうやつをさっさと倒せるようにキビキビ動ける武器がいいな!やっぱり双剣とかが良いかなー」


そうやっていくつかある装備を見ていた翼だが、そこにピンとくる装備が現れる。


「スナイパーライフルと短刀?防御力は低いけど‥‥‥攻撃力はナンバーワンか‥‥‥えっ!攻撃力を上げれば遠距離の敵でもワンパンなの!?」


説明文を読んだ翼は、これに決めた!とスナイパーライフルと短刀を初期装備に選んだ。

何故なら、前作で「近距離拡大スナイパー」と呼ばれていたのである。

拡大とは、相手の当たり判定を大きくして、どこを撃ってもダメージが入るようになるチートである。

拡大はしていないが、それを翼は人力でこなしていた。


説明を見ると、ワンパンできるのは序盤のうちだけらしい。それなら均等にステータスを振り分け、バランスのいい編成にするのが普通だろう。


なのでこの武器の使用率はかなり低かった。1%程だろうか。


「次はステータスポイントか‥‥‥これは攻撃力に全振りっと」

翼はゲーマーである。意味のない全振りはしない。これが普通のVR MMOなら、定石と言えるような整った割り振り方をしていただろう。


だが、このゲームは特殊であった。


「現実世界の身体能力及び、体力は引き継がれる」


このゲームがきっかけで、剣士になるために剣道を習う人や、柔道を始める人、体力作りを始める人が増えたと言うほどだ。

この新システムは、子供の運動にも良いとかなり評判になっている。


そしてやっと城下街に降り立った翼、もとい「走る核ミサイル〆エンジェル」太陽の光が窓に反射して輝いている。

一瞬街の美しさに見惚れてしまったが、すぐに我に戻り森へと走っていった。



エンジェルは毎日40キロの道のりを走って登校、帰宅を繰り返している。

その足にかかれば先に森へ向かったプレイヤーを追い抜きぐんぐんと距離を伸ばしていく事が出来た。

そして1分もすると、スピードに全振りしているであろうプレイヤーに追いつく。

そして追い越した。


「ここら辺でいいかな‥‥‥うはっ!魔物がうじゃうじゃ出てくるね!まだ誰も狩ってないから狩りほうだい!」


エンジェルは少しでも沸きのいいスポットに行くために走りながら叫んでいた。

そしてようやく武器を取り出し一瞬で森を静かにした。


「ドドドドドドドドドドドドドドン」

「しーーーーーん」


スナイパーライフルを近距離でぶっ放し、全弾0.2秒以内に命中させたのである。

この技術は昔習ったFPSで磨いたスキルだ。私以外に使える人は少ないだろう。


そこらに、羽のついた蛇やツノの生えたウサギ、空を飛ぶ花の影(倒して粒子になりかけている死体)がうっすらと見えている。


「レレレレベルがアップしましたレベルがアップしましたレベルがアップしました」

「スキルを獲得しました。スキルのレベルが上がり、固有スキルになりました。固有スキルが進化しました。固有スキルが進化し、ユニークスキルになりました。

スキル、『絶対瞬殺』」


「『絶対瞬殺』の効果はステーテスの攻撃力が4倍になり、3対の敵を10秒以内に倒した場合4体目への攻撃力が10倍になります。

さらに、相手への攻撃にホーミング機能が追加されました。

さらに、攻撃時の思考速度2倍と攻撃速度2倍を獲得しました。

さらに、命中にプラス1000のステータスポイントが得られます。」


「固有スキルとは、このVR MMO内にいるプレイヤーが受け取れる人数が限られているスキルのことです。」


「ユニークスキルとは、このVR MMO内で唯一1人しか持っていないスキルのことです。」


「称号『瞬殺王』『殺戮王』を獲得しました。」


「『瞬殺王』の獲得条件は、10秒以内に1体ずつ倒し、50体の魔物を倒すことで得られました。

効果は、敵を倒した際の経験技量が1.5倍になります。」

「『殺戮王』の獲得条件は、リリース1日以内に1秒以上の間隔を空けずに100体の魔物を倒すことで得られる固有称号です。効果は、敵を倒した際のアイテムドロップ率を10000%プラスさせます。つまり100倍です。」




「うるさいうるさいうるさーーーーーーい!!!!」

直接頭の中に、何重にも重なるメッセージが届いた。

「とりあえず成果を見るか」


「走る核ミサイル〆エンジェル

 レベル、37

 ユニークスキル、{絶対瞬殺}

 称号、{瞬殺王} 

 固有称号、{殺戮王}

 ステータスに割り振れるポイント、0

HP 200

MP 100

【攻撃力(285➕50)✖️4】   【防御力0】

【素早さ 0】         【命中 1000】

【魔力 0】      


ステータスに割り振れるスキルポイントを全部攻撃力に振って、現在のステータスはこうなった。

「こんなもんじゃ終われない!もっと奥に進まないと!」

何が彼女をそこまで駆り立てるのか。それは自分自身もわからない。


「いけいけいけーーーーー!!」


「ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ」


走りながらスポーンした瞬間の敵を瞬殺しまくっている。

もはや殺戮マシーンである。

もしこれが誰かに見られていたなら、即ネット掲示板にでも書き込まれるだろう。


「このスキル凄い!多少狙いがずれても絶対命中するし、思考速度が上がった分時間がゆっくりに感じるし、実際プログラム上ゆっくりになってるんだろうけど」


思考速度と攻撃速度が2倍になっているので、倒すスピードは4倍になっている。さらに1.5倍の速度で経験値がもらえるとなると、常人の6倍の速度で経験値が稼げる。

普通のプレイヤーが12時間レベル上げをしているのと、エンジェルが2時間レベル上げをするのとで同レベルである。

なんとずるいスキルと称号なのだろうか。


果たして既に称号を持っているプレイヤーの人数は何人存在するのだろうか。

おそらく2個も獲得しているのは翼だけであろう。

何故なら、普通は今、設定画面にいるような頃なのだから。


「ひゃっはーーきもちーーー」


神秘的な森で可憐で素敵な少女が鮮やかに踊り回りながら、世紀末のような叫び声をあげている。


「そろそろ階層ボスを倒せる頃かな?」


エンジェルの実力なら初期装備でも充分ボスを倒せると思うのだが、ボスの強さがわからない以上、負けてリスポーンする時間が勿体無い。

なので充分にレベルを上げてから余裕を持って倒そうと思ったのだ。


「バン‥‥‥コト」


「ん?何これ」

さっきまでの敵とは違い、やや大きめの魔物を倒した際に、アイテムをドロップしたようだ。

さすがドロップ率100倍。


「えーと効果は、っと」


「猪突猛進の指輪。レア。 効果、スタミナが10分で1割回復する。」


「おぉ!使える!突撃兵の私にピッタリ!」


猪のような魔物を倒した際に落としたそれは、エンジェルを喜ばせるに値するレアアイテムであった。

早速付けてみると。

「あれ?薄暗くなってきたな」


森の木々がの密度が濃くなり、上からさすが光の道が遮られているのだ。

ふと横を見てみると、あることに気づいた。


「あ!如何にもって感じの洞窟がある!」


エンジェルはワクワクしながら洞窟の奥へと足を進める。

「肌寒くなってきたな」


ゴツゴツした岩に、ところどころ水溜りができている。雰囲気のある場所だ。

そこで洞窟最初の敵が現れた。コウモリである。20匹程だろうか。


「倒し甲斐がありそうだ!」


「どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどん」


「レベルがアップしました」

「お!何レベルになったかな」


「レベル53 攻撃力(365➕50)✖️4」


「いい感じいい感じ」これなら強い敵でも倒せるかな」


「コトコトペチャコトコト」

雰囲気をじっくり堪能しながら道をまっすぐ歩いていると、1つの大きな扉にたどり着いた。


「ここかな」


ワクワクとした気分を抑えきれなくなりながら豪快にその扉を押し開けると、そこに待っていたのは。


「ドラゴン!?第1階層でいきなりドラゴンはキツすぎない!?」


堂々とそそり立つ赤いドラゴン。第1階層の割にはインパクトが強すぎる。いや、第1階層だからこそインパクトを持たせたのか。


「よくここまでたどり着いたな。我を倒し。先へ進んでみるが良い。」


「うわ、強そう。まぁ、やれるだけやってみるか!」


「どごぉおおおおん」


大きな銃声が洞窟内に鳴り響く。


「シュワッ」


ドラゴンの影が薄れていく。

「え?終わりじゃないよね…」


「第1階層クリアおめでとうございます!第2階層へお進みすることができます!」


「おわったぁあああ!!まさかのワンパンだよ!あんなに凶悪な顔してたのに可哀想だよ!」


「子供ドラゴンを最初に単独で倒したことにより、攻撃力にプラス100のステータスが追加されます。」


「レベルがアップしました。  レベル60」

「リリース初日に単独でクリアしたことにより、1000万ゴールドをゲットしました。」

流石に第1階層で1660ダメージはオーバーキルだったようだ。

「ん?何か落としてる…それも7つも」


「子供ドラゴンの帽子 防御力50    子供ドラゴンの鎧 防御力50

 子供ドラゴンのズボン 防御力50   子供ドラゴンの靴 防御力50

 子供ドラゴンの指輪     子供ドラゴンの短刀 攻撃力50

 子供ドラゴンのスナイパーライフル攻撃力200」


「全、子供ドラゴン装備を揃えたことにより、称号、『ドラゴンスレイヤー』をゲットしました。」

「スキル、『ドラゴンブレス』を取得しました。


「お、おぉ、さすがドロップ率100倍、めっちゃ落とすな…ドラゴンブレス…ちょと使ってみるか」


「どごぉおおおお」


「おぉ、まあまあの範囲。攻撃力は50か。使えなくはないけど使わないかな。次は指輪!」

「子供ドラゴンの指輪。激レア。効果、素早さのステータスが2分の1になる代わりに攻撃力がさらに3倍になる。」


「すごい!素早さのステータス0の私に全くダメージがない!!これ付けて、さっそく第2階層行ってみますか!」


そこには炎の世界が広がっていた。

「暑っ、そんなところまで再現する!?」


29℃くらいだろうか。かなり攻めた温度だ。暑さでプレイヤーが離れないか心配である。と思っていたら。

「スキル、暑さ耐性小を獲得しました。」


「そう言うことか、すぐに耐性がつくのね!」


経験値ポイント1.5倍のシマッシマだからこそすぐに獲得出来たのだが、そのことをシマッシマは知らなかった。


ただいまの攻撃力(400➕200)✖️4✖️3=7200


「ふぅ、今日はこれくらいでいいかな。夏休みの宿題もあるし明日の部活もあるし」


そう、今は絶賛夏休み初日なのである。夏休みに新作のソフトを発売するとは、やり手の企業のようだ。

宿題に関してだが、それほど多くないし、翼は宿題もゲームに延長線だと思っているので3日もあれば終わるであろう。


部活というのは、ゲーム部とパルクール部の掛け持ちである。特殊な部活がある私立に通っている。

何故ゲーム部のみんなと一緒にプレイしなかったかって?

それは、初日は1人でやりたいからだ。のんびりフレンド追加なんてやってられないからな。


とにかく今日は、いざ夢の世界へ!また明日。




翌日学校。


「みんなnew earth Runやった?」

翼の問いにゲーム部のみんなが笑顔で返した。

「やったやった!」

「やったよー」

「俺結構進めたぜ?」

「俺なんか徹夜してレベル上げたからな」

「お!レベルのランキング発表があるらしいよ?」


「なになに?3位の発表?」

「3位のレベルが27レベルだって」

「たけーーーー」

「2位が…32レベル!?」


「俺なんかまだ11レベルだぞ!結構上げたと思ったのに…」

「第1位は…60レベル!?!?」

「いや異次元すぎだろ!」

「どんな上げ方したらそうなるんだよ!」


「ちなみに翼のレベルはなんだ?」

翼はニヤリと笑みを浮かべてこう言った。


「まだたったの60レベルだよ。宿題で忙しくてさ…」


「いや1位おまえかよーーー!?!?!?」


「どうやったらそうなるんだよ。昔からゲームに関してはヤバいやつだとは思ってたけどよ」

ゆうくんがエンジェルに呆れた顔で突っ込んでいる。


「緊急ニュースだって」

コンパスくんが新しい記事を見つけた


「どゆこと?」

「第2階層を数時間で解放した人がいるって」


「「「マジかよ!?化け物すぎやん」」」

「誰がボス倒したんだよ!」

「あ、名前が載ってる、『走る核ミサイル〆エンジェル』」


「「「「「いやお前かよ!!!」」」」」


「てへっ」



その日のネットの反応。


「今日魔物少なくなかったか?」

「まあ第1階層だからな」

「まさか先に行ったプレイヤーが全部倒したとか!」

「いやまさかー、そんな強いプレイヤーがいるわけないよーまだ初日よ?」

「確かに、単純にこの階層が平和なだけか」

「おかげでレベル上げづらかったな」


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