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俺からWi-Fiが出ているせいで、学園一の美少女が離れてくれない

作者: 迫る騎士シカマル

 家のWi-Fiルーターが壊れました(怒)。


 この小説は、その怒りエネルギーとギガを消費しながら作成されました。



 幼馴染からの『明日、一緒に学校へ行こう』という内容のメッセージが送られてきた場合、大抵の男子は有頂天になることだろう。だがしかし、俺にとっては憂鬱な日々の再開であり、今月が終わることを心の底から願うのであった。



 翌朝。


 「起きなさい、陸斗(りくと)。今日は皐月(さつき)ちゃんが家まで迎えに来てくれるんでしょ」


 いつもより、30分も早く起こされる。

 ああ、この時点で憂鬱である。


 いつもと同じように身支度をして、30分暇な時間が余計に生じただけである。

 暇を潰すためにスマホを起動する。


 「もうすぐ皐月ちゃんが来るっていうのに、のんきに携帯なんか見て。よくわからないけど、データとか使える量に限界があるんでしょ。足りなくなっても知らないからね」


 あいにく、俺はそんなギガが足りないような事態になるはずがない。なぜなら、俺自身がWi-Fiを発しており、今からインターフォンを押してくる幼馴染の目的もそれだからである。


 スマホで昨日と今朝あった、たわいもないニュースを見ていると、インターフォンが押された。


 母に催促されるのはうんざりなので、すぐに荷物を背負い、玄関へと足を向ける。


 ガチャ。


 「おはよう」


 清楚な女子が、俺に対して挨拶をする。

 彼女こそ、緑川皐月みどりかわさつきである。


 「うちのどうしようもない息子をよろしくね」

 「またまた、陸斗君は頼りになりますよ」


 全く、どこからこんな美辞麗句がでるのやら。頼りにしているのは俺じゃなくて、俺から発生しているWi-Fiにだろ。


 そうした文句を垂れることはなく、黙って彼女についていく。


 道中はというと、手を繋ぐこともなく愉快な話をすることもなく、ただただ目的地に向かって歩くのみ。あくまでも利己的に、独占的に、一方的に、皐月は俺を利用しているのである。


 皐月がスマホをいじりながら歩いているため、自ずと俺の歩くペースは遅くなる。

 とはいえ、下手にいつも通り歩いてしまえば、彼女から反感を得てしまう。


 そうなれば、不利なのは俺である。理由は単純、母は俺よりも皐月の方を信頼しているのである。それもそのはず。かたや、不愛想な反抗期真っ盛りの息子であり、かたや、その息子の様子を逐一報告してくれる献身的な幼馴染。俺でも後者の方を信頼してしまうだろう。


 例えば、このまま俺が勝手に学校へ行くとする。

 すると皐月は、母に俺が一緒に学校へ行かなかったことを確実に報告する。そうすれば俺に対して怒りと失望のこめた言葉が投げつけられるのである。そうして、最後に決まり文句を言うのである。


 「陸斗と一緒にいてくれる女の子なんて皐月ちゃんしかいないのよ。彼女のことを困らせるようなことをしないでね」


 だいだいこんな内容を毎回聞かされるのである。


 まったく、大いなる嫌がらせだぜ。そのくせ、皐月の目的は寝落ちして見れなかった動画を鑑賞することである。それも、ギガがなくなった日から月末までの期間にだ。

 寝落ちする前に電源を切ればいいだけの話である。


 どうせ幼馴染みたいな行為をするのであれば、毎日来ればよいのである。もちろん、その方が迷惑なことは間違いないのだが。


 こうして、俺と皐月は一言もしゃべらぬまま、駅に到着し、最寄りまで電車に揺られるのである。


 朝と言うだけあって人が多い。


 皐月は何も言わずに俺に寄り掛かってくる。俺を背もたれとして利用しているのである。下手に離れれば、痴漢に襲われていたのに助けてくれなかった、などのでっち上げを母に報告してしまうので、甘んじて受け入れる。

 そう、俺が我慢すればいいのである。


 こうして電車に揺られ、最寄り駅に一つ前になると、俺は自主的に電車から降りる。


 一緒に登校するというのは、半分正解であり、半分は嘘である。

 

 俺と親しい関係を噂されるだけで嫌悪感を抱くという理由で、皐月とはここでお別れ。

 もちろん、学校でも一言もしゃべらないし、幼馴染であることを誰かに言うことは禁止事項である。


 ひとつ前の駅で降りた俺は、次の電車が来るまで待つことにする。

 この駅で降りたのを見た人からすると、おかしな光景に移っているのだろう。もちろん、俺だってこの駅から学校までそのまま行きたい気持ちは山々である。



 学校に到着。

 非常に疲れた、だがしかし、水分など何かしらを含むことは禁忌である。

 その理由は、俺の席を囲むように座っているクラスの陽キャ女子たちである。

 彼女たちは、俺がWi-Fiを発していることをどこからか知ったらしく、月末が近づくと俺の席に寄ってくる連中である。


 最初は本当にギガが無くなった時にだけ集合していたが、今では、俺という存在を込みでガンガン動画を見ているようである。

 まったく、俺が学校を休んだらどうするつもりなのだろうか。まあ、休まないのだろうな。


 「あ、おっはー。ウィーフィー」

 「「「ウィー」」」


 ウィーフィー。まあ、Wi-Fiをローマ字読みしただけの陳腐なあだ名である。

 こんな彼女達でも先生たちの評価は高いから、俺は何も抵抗することができない。


 席につき、俺はやかましい空間に一人閉じ込められるのだった。


 どうでもいいガールズトークを聞かされるこちらの身にもなってほしいものである。

 もちろん、俺が彼女たちの会話に参加することはない。


 アニメの話をしているが、内容の話はしていない。

 そのアニメに登場するキャラクターや声優の中で推しは誰か、といったテーマで盛り上がっている。


 大事なのはそこじゃないと思うけどな。

 そんなことを素朴に考えつつ、チャイムがなるまでの残り数分絶え忍ぶのである。


 メッセージがきた。


 『よっ、悪いなこんな形のあいさつで。近づけないのはわかるだろ。で、朝から微妙な顔をしてるってことは、また幼馴染さんのたわごとに付き合わされる時期になったのか』


 幼馴染のことを誰にも言ってないのは、あくまでも高校からの話。

 中学からの同級生であり、唯一の友達であるマサキは、俺と皐月が幼馴染であることを知っている友人であり、毎朝のようにメッセージを送ってくれる。


 まあ、最近はガールズたちに邪魔されてしまっているため、一緒に飯を食うことも出来ていないのだが。


 俺はマサキにメッセージに対して、『ああ』とだけ書いて返信した。


 スマホの時刻が8:30になり、それと同時にチャイムが鳴り響く。ようやくガールズたちは各々の席へと座る。

 

 そして、男子の集団も席につくのであった。


 その男子の集団の中心にいるのは、学園一の美少女として名高い椎名唯(しいなゆい)である。

 クラスの男子からは隙さえあれば会話を持ちかけられ、告白されることは日常茶飯事らしい。まったく別の世界の住人とは、彼女のことを指している。


 しかし、そうしたモテすぎる女子にありがちな、他の女子からの嫉妬は相当なもののようであり、自分が好きだった男が椎名に告白してはあっけなく撃沈するという展開が何度も繰り返され、女子は誰も関わらなくなってしまった。

 友達になったとしても、その友達は椎名に告白したい男たちによる情報収集や告白するための伝言を頼まれる役に成り下がるのである。


 まあ、関係ないよね。自分のことで精いっぱいなのに、他の女子にかまけている暇なんてないのである。



 昼休み。


 俺は午後に腹など壊してトイレに入る事態を避けるため、軽い携帯食料ですませる。

 ガールズたちの機嫌を損ねてしまうからな。


 マサキとメッセージのやりとりをして、『早く俺たちの日常を取り戻そうな』という他力本願なやり取りをする。

 ようやく、長い長い昼休憩の時間は終わった。


 午後の授業も滞りなく終わり、放課後。


 もちろん家に帰れるはずもなく、文芸部に足を運ぶ。


 文芸部なんて名前は肩書に過ぎず、その本性はダラダラと学校が終わるギリギリまでだべっているだけの部活とも言えない集まりである。

 その集まりは、学校の中で悪名だがいグループである。

 クラスにいたガールズたちなんてかわいいものである。


  怒らせたらひとたまりもない。

 軽いいじりの一環として、中々な威力の蹴りを腹に食らう羽目になったことがある。

 その時ぐらいだろう、昼食を食べないで功を奏した機会は。


 一応小説を書くように設けられたパソコンは、俺がいることによって生じているWi-Fiによってネットに接続することができる。


 そして俺は見ていないが、男子生徒たちがやたら盛り上がっていることから、ろくでもないサイトを見ていることは間違いないだろう。


 女子たちはというと、動画配信サイトやSNSなどをネットサーフィンしながら、下校の時間がくるまで無意味な時間を費やしている。


 俺はというと、今日から幼馴染との関係も再開しているため、彼女の部活であるテニス部が終わるまで下校することができないのである。


 それにしても腹が減った。


 俺は鳴りそうになる腹を抑えながら、小説を読むことに徹するのであった。



 下校。


 最寄りの駅の一つ先で待つ。

 もちろん彼女も電車も毎回同じ時間に来るわけではない。

 そのため、電車が来るたびに彼女が乗車していないかを確認する必要があるのである。


 三本を見送って、四本目の電車に皐月が乗車していることを確認して乗り込む。


 そして、十分座れるスペースのなかで、彼女に近からずも遠くない、ちょうどWi-Fiの範囲内の席に座る。

 髪の毛をいじった場合、接続できていないことを知らせるサインであるが、今日はその様子がなく、しっかりとネットに繋がったのだろう。


 夕焼けがきれいである。

 辺りを見渡す。大抵の人がスマホで何かをしている。それ以外の人も、読書など、誰も外の景色を見ることはない。


 なんて狭い世界で生きているのか。俺は自分にそう言い、わかっていながらもこの状況から脱出することのできない自分の無力さにうんざりするのである。


 帰り道も送っていき、何も言わずに皐月は自分の家へと入る。

 よくもまあ、どこにも、誰にも当たらずに歩けるものだ。思わず感心する。


 家に帰れば、母から皐月をちゃんと送ったか、それから、進路の話の二つ。どちらにせよノイズでしかない。中学校の連中から逃げ出すために必死に勉強したのに、高校もあまり変わらない状態である。


 まったく、どうしてそんなにもみんなWi-Fiを求めるのだろうか。

 そもそもギガを使いわなければよいだけではないか。

 てか、ポケットWi-Fiをぐらい自分で買えよと言いたい。


 しかし、そんな文句を言ったところで現実は少しも変わらないし、俺自身の何かが満足されることもない。

 そうして、ただただ月末が終わることを心の底から願うのであった。


/////////////////////////////////////////


 ようやく今月が終わる。

 皐月から解放される。

 部活も毎日行かなくてよくなる。

 ガールズたちは俺のことを嫌悪しているため、どこかへと行き、マサキと二人で飯を食うことができる。


 朝、そそくさと起きて、朝食を作る。

 理由は単純、昼飯用の弁当を作るついでである。

 この方が安上がりで済むため、バイトをしていない俺にとっては必要な節約なのである。


 誰にも邪魔されず登校する。

 そう、俺は幼馴染と学校に行くよりも早く学校をでるのである。

 そうすれば電車が混む時間帯よりも前に乗ることができる。


 快適な車内のまま、最寄り駅まで到着する。


 学校、教室。

 誰もいない。いつもであれば。


 「あっ」

 思わず声が出てしまった。


 椎名唯。学園一の美少女。

 こんな朝早くから学校に来ていたのか。これまでこの時間帯に教室で会うことはなかったので、たまたまなのか。


 椎名はなぜか俺から視線を離すことなく、感情なく淡々と語る。


 「あなたが私にこの手紙を渡した人ですか」

 「いいや、そんな手紙を渡した覚えはないぜ」

 「はあ、じゃあなんでこんな早い時間帯に。いつもならチャイムギリギリですよね」

 「なんでそんなこと知っているの」

 「そりゃ、私と同じようになっているもの」


 まさか、朝、女子たちに囲まれているから俺がモテているとでも思っているのか。彼女たちが俺が登校することを心待ちにして、俺がそんな奴らと相手するのが億劫だからギリギリの時間に来ているとでも思っているのか。

 だとしたら相当な楽観思考の持ち主である。


 「残念ながら、俺は椎名さんとは違って、モテた経験は一度もないぜ」

 「そうなんですか」

 「そうそう、みんな俺のWi-Fiに興味あるだけ。月末だけだよ、あんなに俺のところによってくるのは。椎名さんみたいに毎日違う男に言い寄られたりはしないってわけ」


 自嘲的なニュアンスを含んだ嘆きを椎名にぶつけてしまう。まったく、こんなことをしても何の意味もないのに。


 「そうなんですか」


 椎名はなぜか、俺のモテてない発言に喜んでいるような表情を浮かべる。なんだか失礼な奴である。


 そして一言。


 「大変なんですね」


 なぜだろう、俺は椎名が何も知らないのに軽々しく俺の境遇を憐れむ態度に腹が立ったのである。


 「だろ、そっちはいいよな、毎日男たちが寄ってたかって好意を抱いてくれてさ。さぞいろんな男と遊んできたことでしょうよ」

 「そんなことない。何もしらないのにこっちの事情に口を挟まないで」

 「だったら、そっちも俺のことを分かったような口を利くんじゃねー。なにが、『大変なんですね』だよ。誰からも俺を俺として扱われない辛さを知らないだろ。」


 あーあ、何むきになって語っているのやら。

 こんなことをしても意味がない。話を切り上げよう。

 てか、教室から出よう。ええと、図書室は何時から開いているんだ。

 非常に気分が悪い。


 「私も」


 椎名が言葉をこぼす。俺は教室を出ようとする足を止める。


 「何が」

 「私も、一緒だなって」

 「大変なことがか」

 「それもあるけど、誰からも私のことを私として見てくれないってところ」

 「はあ」

 「私ってさ、その、見た目だけで判断されちゃうんだよね。その性格とか好きなものとか」

 「まあ、お世辞抜きに可愛いからな」

 「そうだね」


 否定しない辺り、この辺のありきたりな誉め言葉は散々浴びせられたのだろう。表情一つ変えることはない。

 そして話を続ける。


 「で、そんな可愛いらしい私は自分ではなくて、その人が、みんなが考える理想の椎名唯を演じることを求められたわけ」

 「理想の、ね」

 「ねえ、本当の私を知りたい?」

 「……どうすればいい」

 「私と付き合って」

 「それじゃあ、椎名さんの言う理想の私になるんじゃないの」

 「それに関しては問題ない。私、鷹山(たかやま)くんのこと好きだもん」

 「なんだそれ」


 思わず照れる。俺は椎名とは違い、そういった甘い言葉に対する耐性は不十分である。


 「へー、鷹山君ってそういう顔もするんだね」

 「悪いか」

 「鷹山陸斗」

 「急にフルネームで呼んで、なんだよ」


 俺の名前をフルネームで言えるのは珍しいな、なんてことを思いながら俺もお返しをする。


 「……椎名唯」

 「確かに、フルネームで言われるなんて経験ないね」

 「だろ」

 「だね」

 「よーしわかった、椎名さんと付き合うよ」

 「いいの?」

 「その代わり、見せてもらうとしようじゃないか。あんたの言う本当の私とやらを」

 「後悔しないでね、私って嫉妬深いから」

 「ヤンデレじゃなきゃ問題ない」

 「大丈夫、だと思う。そこまでじゃないから」


 若干の不安を隠しきれない俺に対して、深々とお辞儀をする椎名。つられて、俺もお辞儀をする

 なんだか、形式的な交際って感じがする。


 それにしても俺のことを好きという。どうしたら俺を好きになるのか。まあ、そのうち分かるだろう。


 こうして、Wi-Fiとしか扱われない俺は、可愛い人形としか扱われない椎名との交際が開始した。



 「まず、これから来るであろう男を断るので、教室にいてください」


 言いたいことを言った挙句、教室から退出しようとしていた俺。そんな状態から引き戻したのは椎名からの交際宣言である。


 で、最初は景気づけに俺と椎名が交際していることを堂々と宣言するようである。


 ガラガラ。


 噂をすれば、野球部(坊主頭で勝手に判断)の男が教室に入ってくる。


 俺はあえて自分の席に座り、寝たふりをしている。

 なぜこんな演技をしないといけないのやら。椎名の真意は不明である。


 「え、と。この手紙をくれたのって、あなた?」

 「そうです、自分、サイトウと申します。いきなりですけど、俺、椎名さんのことが好きです。だから、俺と付き合ってください」


 あえて朝に告白したのか、それとも、朝練のついでに告白しているのか。後者の場合、ある意味肝が据わっていると言える。


 「ごめんさない、私、付き合っている人がいるの」


 俺は、ちらりとうつぶせになっている顔を動かして様子をみる。

 あらら、サイトウとやらが絶望した表情を浮かべてしまっている。可哀そうに。


 よく見ると、椎名が目で俺に合図を送っている。

 どうやら、俺の出番みたいですね。


 「おはよう、サイトウ君」

 「あんた誰だよ、てか聞いてたか。椎名さんに好きな人がいるんだとよ」

 「知っているよ、その相手も」

 「誰だよそいつ、一発バットで殴らせろ」

 「それはやだな、痛そうだ」

 「別にあんたにするつもりはねーよ」

 「いや、俺がその相手なんだよな」

 「……冗談だろ」


 どうやら理解したらしい。


 椎名が俺の横にひっつく。


 「鷹山陸斗君。私の彼氏」

 「う、うそだー」


 全速力で廊下を走るサイトウ。


 じゃあなサイトウよ。金輪際、出会うことはないだろうよ。


 「彼、噂広げちゃう?」

 「背ひれ尾ひれつけて広めちゃうでしょうね」

 「いや?」

 「いいや、別に」

 「ならよかった。あと、今日から一緒に帰るからね」

 「分かった、しばらくは大丈夫」

 「どういうこと」

 「今は、椎名にたかる男どもを振り払うのが先だろ」

 「そうね」



 「で、二人は付き合っていると」

 「そう」「はい」

 「はー、こりゃたまげた。二人ともユーモアあるんだね」


 一向に現実を受け入れようとしないマサキは、何度も同様の質問をする。

 そのたびに、事実から目を背けるような受け答えをする。


 「だから、俺と椎名は付き合ってるの。で、今日は一緒に帰るからマサキは一人で帰れよ」


 昼食、久しぶりにマサキと飯を食うことができる。

 そこにちゃっかり椎名がいるけれど。


 「えと、一応紹介しておくわ、こいつはマサキ。中学の時からの一緒の奴。友達」

 「友達」


 椎名は、『友達』というワードに異様な興味を抱いていた。


 「おい、まさか俺に友達が一人もいないとでも思っていたのか。椎名とは違って、友達の一人くらいいるんだよ」

 「私のことは関係ないでしょ」

 「否定しないってことは、マジで友達ゼロかよ」

 「いいえ、たったいま一人になったわ」

 「誰?」

 「んっ」


 マサキの方に顎を動かす。

 マサキはうれしい表情を隠しきれない様子である。


 「マジ、俺が椎名さんと公式にお友達なの」

 「そう」

 「イエーイ、ばんざーい」

 「いいのか、こんな奴と友達になっても」

 「だって、なんの害もなさそうだもん」

 「そうだな、無害なことがこいつのいいところだからな」

 「ひどいぞその言い草。いやいや。陸斗よ。昨日の今日で何があったてんだ」


どうして椎名と付き合うようになったのか、明確な理由は特にない。だから話を逸らすことにした。


 「やっぱり月の初めは気分がいいな」

 「だな」


 マサキは、余計な追求をしなかった。

 やはり、無害である。


 こうして、三人で楽しく昼食をとった。



 放課後。


 さっそく噂になっています。


 SNSを始め、学園の掲示板でも椎名と俺が付き合っていることが喧伝されていた。


 「まったく、暇な連中ね。今朝のことをもう学校全体に広めてる」

 「あーあー、あることないこと好き勝手言ってるな」


 そこには大げさに誇張された椎名の恋愛遍歴や、俺が悪逆非道な方法で椎名が交際を承諾するように促したなどが綴られていた。暇人たちの妄想力には、思わず感心してしまう。


 「どうしよう」

 「いや、こうなることはだいたい予想してただろ」

 「でも、私はともかく、鷹山にまで迷惑をかけてるし」

 「俺なら、この状況をどうにかできるよ」

 「マジ」

 「マジマジ。でも、これちょっと疲れるんだよね」


 自分の内にある感情を外に出すイメージをする。


 感情を外に、か。


 いつから俺は、自分の感情を押し殺して過ごすようになってしまったのだろうか。

 トリガーとなる感情が思いつかない。


 あ。

 不意に、目の前にいる椎名の顔を見る。

 彼女のことを俺はどう思っているのだろうか。

 好きと言ってくれた学園一の美少女に対して、俺は少なからず好意を抱いているのではないだろうか。


 この感覚、自分のなかにある感情が外へ展開されていく感じ。

 どうやら、俺は椎名のことを気になっているようである。

 それがいいことであるのか悪いことであるのかの判断はさておき。


 「一体何をやってるの」

 「ああ、Wi-Fiの範囲を学校全体に広げた。多分、学校内の奴がネット上に根も葉もないうわさを流してると思うから、その仕返し」

 「仕返しって、Wi-Fiを拡張させたことと何か関係があるの」

 「Wi-Fiの中でも、鍵がついてるのとついてないのがあるだろ」

 「ええ、私には鍵がついてるわ」

 「で、椎名以外のスマホは俺のカギなしWi-Fiに繋げた」

 「そうすると」

 「鍵なしの携帯にはこっちから一方的に情報を詮索することができる」

 「マジ?」

 「で、あとは、暇人たちがビビりそうな内容をピックアップして、DMで送りつければ完了っと」


 約10分後。


 「終わったの?」

 「ああ」

 「めちゃ疲れてるみたいだけど」


 肩で息をしている俺を心配する椎名。

 久しぶりにやったからえらく疲れてしまった。それでも生命の危機を感じるほどではない。


 「まあ、だい、じょう、ぶ。しばらく、休めば、大丈夫」

 「そう、わかった」

 「そしたら、一緒に帰るぞ」

 「うん」


 俺と椎名が付き合っていることがネット上を駆け巡ることはもうなかった。

 安易に情報を拡散しようとしている奴らに対して、違法な行為をしている写真、動画などをDMで送り付けて軽く脅した結果、みんなだんまりである。


 内容が内容なだけに、教師に訴えることはできないだろう。ましてや、警察などにはなおさらである。

 人には、他人に言えない隠し事を一つや二つしているのである。



 帰り道。


 「すごいですね、Wi-Fiの力」

 「別に」

 「他にも何かできるんですか」

 「混んでて上手く通信できないところでも、Wi-Fi電話できるとか」

 「へー、どうやればいいんですか」

 「確か、専用のアプリをダウンロードしておけばいいと思う」

 「これですか」

 「早いな、てか山とか海とか行かない限り使うことなんてないぜ」

 「行かないんですか、山とか海とか」

 「……山は考えとく」


 椎名の水着は、想像するだけで破壊力がすさまじいから、海に関してあまり考えないようにしよう。


 「鷹山って意外と変態だよね」

 「いや、男子はだいだいこんなもんだ」

 「やっぱり、私の水着とか想像してたんでしょ」

 「何、誘導尋問か」

 「いま、自信から確信に変わったのだけれど」


 会話が途切れ、椎名はスマホを取り出す。


 「ちょっと歩きスマホなるものをやってみようかと」

 「やるもんじゃないだろ。危ないし」

 「鷹山いるからいいかなーって」

 「なんだそれ」

 「じゃあ、危なくないように手でも繋いでくださいな」

 「マジ?」

 「そうすれば危なくないでしょ」

 「まあ、そうだけど」


 椎名の手を握る。

 すべすべしており、そして小さい。

 あまり力強く握らないように注意しつつも、するりと抜け落ちないようにする。


 「優しいんだね」

 「そうか?」

 「うん、今までいろんな人と手を繋いできたけど、なんか繋いでないみたい」

 「それってどうなんだ」

 「手汗が半端ない」

 「うれしくない」

 「ドキドキする」

 「それは、うれしい限りです」


 最寄りの駅で俺たちは、別々の電車に乗る。


 帰り道でこんなにしゃべったのは初めてかもな。

 Wi-Fiの体質が発覚してから、マサキ以外と会話どころか目線すら合わなかったもんな。

 非常に不思議な感覚である。


 電車内で今日の出来事を振り返っていると、メッセージが届いた。


 『明日から、一緒に登校しませんか。時間諸々のことはそちらにお任せします』


 

 翌朝。


 「何でむすっとしてるの」

 「昨日、私は勇気をもってメッセージを送りました。内心ドキドキでした」

 「はあ」

 「その返信としては、いついつに俺んち来いよ。もしくはそっちの家に行くよだと思います」

 「そうなのか」

 「そう」


 朝、学校。


 俺が椎名に指定した集合場所は、学校の教室である。

 時間は昨日と同じ。

 俺の考えとしては、朝早くに学校に来て、そこでだべりましょうというものである。


 しかしながら、この作戦は失敗のようである。

 完全に椎名の気分を害してしまっている。


 「鷹山の悪いところその2です。女心を分かっていない」

 「ちなみに1は?」

 「変態なところ」

 「マジかよ、人間って不完全変態じゃなかったっk、うっぐっっ」


 全力のグーが、みぞおちにクリーンヒットする。

 どうやら、椎名は冗談が嫌いらしい。


 「言っとくけど私、自己防衛するだけの力は備わってるから」

 「なるほど、美少女ゆえの力ってわけか」

 「まあね、小学生の時、しょっちゅう鷹山みたいな変態に襲われそうになってたから」

 「はあ、どうすれば機嫌を直してくれるの」

 「今日一日、ずっとそばにいて」

 「授業中とかは無理じゃね」

 「悪いところその2が出てるわ」


 ううむ、女心は難しい。


///////////////////////////////////////////


 「デートをしましょう」


 何とか機嫌を直してもらうことに成功した。

 で、一緒に下校中、椎名はデートをしてほしいと申し出た。


 「いいよ」

 「今週末でいいですか」

 「ああ、集合場所は?」

 「10時に〇✕駅の前で」

 「了解」


 そういえば誰かデートをするのは初めてではないか。

 いままではWi-Fiとしての付き添いだったから、デートにカウントされないだろうし。


 当日。


 「どうも」

 「おはよう、椎名」

 「……なんか感想はないの」

 「最高です」

 「よろしい」

 「じゃあ行きますか」

 「うん、行こう」


 映画を見て、昼飯を食べながらその映画の感想言い合って、それからウインドーショッピングをした。

 そして、両者のためにプレゼントをしようという展開となり、予算1000円の中でプレゼントを選ぶことになった。


 一時間後、約束した場所に集合。


 俺が持つプレゼントの大きさに、椎名は驚きの表情を浮かべている。


 「何かやたら大きい袋だし、それにゲーセンの袋じゃん」

 「ご名答」

 「まさかこれ全部」

 「そう、ちょうど1000円」

 「マジ」

 「Wi-Fiとして同行してた頃、映画の待ち時間とかめちゃくちゃ退屈で、その退屈しのぎにUFOキャッチャーやってたらどんどんうまくなっちゃって」

 「はあ」


 でかめのぬいぐるみが3体に、中型が6体、それからキーホルダーほどのサイズが1体、袋の中いっぱいに詰め込まれている。


 「ありがとう、予想以上に多くて私のプレゼントがしょぼい」

 「いいよ、俺がルール違反すれすれの行為をしただけだし」

 「そう、じゃあこれ」


 彼女の手には、丁重にカバーされた一冊の本が握られていた。


 どうしようやたら分厚い。


 読めるかな俺。


 「大丈夫、中身漫画だから」

 「なら安心だわ、ちなみにどんな内容なの」

 「のっぺらぼうがJKの推しの顔にモデリングされる話」

 「ジャンルは?」

 「恋愛」

 「何で」

 「鷹山の悪いところその2、女心をわかってない」

 「なるほど、勉強させていただきます」


 帰り道。


 「今日は楽しかったね」

 「デートなんて何回もしてるだろ」

 「そうじゃなくて、誰かのために行く場所を決めたり、プレゼントを決めたりしたこと」

 「そうか」

 「うん」

 「まあ、このプレゼントはぶっちゃけうれしくない」

 「ええー、せっかく選んだのに。読み終わったら私にも貸してね」

 「てかあげるよ、俺の部屋に置いておくにはあまりにも異質過ぎる」

 「そう思って、わざわざカバーかけてもらったんじゃん。大事にしなさい」

 「へい」

 「手」

 「へい」

 「Hey!」

 「テンションが高いな」

 「ベッドがぬいぐるみたちでモフモフになると思ったら、つい」

 「そっちね」

 「……好き」

 「あの、ぬいぐるみを顔に押し当てても、聞こえてるからね」

 「やっぱり、嫌い」

 「そうですか」

 「嫌?」

 「いや」

 「そう」

 「うん」

 「鷹山の悪いところその3」

 「ええ、今の流れで悪いところあったか」

 「うん、私を甘やかすところ」

 「それは悪いことなのか」

 「私ことを好きでもないくせに、ドキドキさせるようなことを言ってくるのは、完全に悪いことだと思います」

 「どうにかならんかね」

 「ぎゅー、ってしてくれたらいいよ。私がぬいぐるみにしてる感じで」

 「断る」

 「……正解」

 「何だよその顔、正解なのに不満そうな顔をするなよ」

 「合ってるけど、間違ってるの」

 「なんだそれ」


 そんな感じでデートは終わった。


 一人になって、電車内。


 メッセージである。

 早速、椎名からだろうと予想していたら違っていた。

 幼馴染の皐月からである。


 『明日から、陸斗の家に迎えにいくからね』


 どうやら、月末が近いらしい。


/////////////////////////////////////////////////////


 「どうしてあんたが陸斗の家の前にいるのよ」


 皐月は、目の前にいる椎名に対して嫌悪感をぶつける。


 「だって私の彼氏だもん」

 「どういう、……まさかいつだかネット上にあった噂って本当だったのね」

 「あれ、てっきり学校中のみんなが知ってると思っていたけれど」

 「悪いけど私、自分以外の女子に興味ないから」

 「なるほど。圧倒的な美少女には勝てない幼馴染キャラに過ぎないからか」

 「なんですって」


 朝から玄関が騒がしいかと思ったら、俺の家の前で椎名と皐月がバチバチしている。


 「ええと」

 「へー、陸斗は私を裏切るんだ」

 「いや、そんなつもりはないよ皐月。今日で終わりにする」

 「どういう意味」

 「母さん」

 「あら皐月ちゃん。それに、かわいい子、誰?」

 「彼女」

 「マジ?」

 「マジ」

 「ふん、いいわ。陸斗ママ。顔に騙されちゃダメですからね、ここにめんこい幼馴染がいることをお忘れなきよー、てかギガが足りないから今月どうしよー」


 こうして、幼馴染が俺を迎えに来ることもメールをすることもなくなった。

 Wi-Fiによって繋がっていた関係性が、これにて終了したのである。



 早い時間に学校についた俺たち。

 俺の席の前に椎名が座り、まがまがしいオーラを出す。


 「なぜオーラを出す」

 「Wi-Fi目的とはいえ、先月まで陸斗の周りにいた連中が気に食わない」

 「なるほど」


 結果、ガールズたちは一人残らず椎名の圧力に屈し、近づいてくる者はいなかった。


 「恐ろしい」

 「えへへ」


 飯の時間。


 マサキがご機嫌である。


 「いやー最高だぜ、椎名さんや」

 「そりゃどうも」

 「威圧だけでガールズたちを蹴散らしてましたもんね」

 「陸斗の悪いところその4」

 「ナニ?楽しい遊び?」


 マサキは、俺に視線を向ける。


 「いや、違う」

 「陸斗の悪いところは、Wi-Fiを出すとこ」

 「確かに」

 「同意すんなよマサキ。てか、俺だって好きで出してるわけじゃねーよ」


 そんなマサキは、ちゃっかり俺のWi-Fiを利用して動画や音楽をダウンロードしている。

 やれやれだぜ。


 「で、めちゃくちゃいい食いっぷりですけど、椎名さん」

 「備えている」

 「何に」

 「文化部との闘い」

 「マジかよ、あいつらに立ち向かうのは得策じゃないですよ」

 「じゃなきゃ陸斗と一緒にいられない」

 「これは惚気?」


 再び、マサキは俺に視線を向ける。


 「いや、単なる嫉妬だそうだ」

 「ああ、恐ろしや」



 文化部、部室。


 ドアが破壊される。

 その原因は、空中に蹴り飛ばされた男子生徒が、ドアと激突したためである。


 まさかの室内乱闘が勃発し、一人一人を確実に倒す宮本武蔵的な戦い方を椎名は行っていた。

 倒れた人は、もれなく保健室送り。


 保険の先生いわく、「あいつら無断でベッドに寝たりするから、いい気味だわ、教師が生徒に手を出すのはヤバイけど、生徒が生徒に手を出す分にはいいでしょ」とのこと。


 「でもそれを見過ごすのはダメじゃないですか」


 俺は、至極真っ当な意見を述べる。


 「てへ」

 「そんなお茶目なことをしても、賞味期限が10年過ぎてますよ」

 「頑張って食べな」

 「マジ?」

 「お、また運ばれてきた。よーし、今日は正当な理由を持ってあんたらをふかふかのベッドに寝かせてやろう。ただし数に限りあるから複数人で寝てもらうからな」


 こうして、月末、あんなに苦しんでいた日々が椎名一人の手によっていともたやすく壊滅させられた。



 帰り道。 


 「てか、なんであんな奴らにビビってたの」

 「いや、あの人たち結構強いからね」

 「ガールズは」

 「あの人数に勝てないでしょ」

 「幼馴染は?」

 「母親を盾に使われていた。けど、本当のところは、自分の将来とか大切にしたいことが不明確だったせい。それなのに、他の人に迎合して、自分を押し殺して、事態を日常化させようとしていた」

 「で、変われたの」

 「椎名が無理矢理な」

 「……」

 「椎名?」

 「……」

 「マジ?」

 「マジ。幼馴染は名前呼びするくせに、彼女のことは名字で呼ぶのはダメだと思います」

 「……唯」


 とにかくすべてが終わった。


 俺は勝手な思い込みから自分が弱い存在であると悟り、小さくまとまってしまっていた。

 唯は過去のトラウマから、精神的に敏感になりすぎていた。

 でも、俺たちは二人で補い合って、乗り越えることができたのである。


 思えば、月の初めに付き合うことになって、それから月末までのまだ一ヶ月しかたっていないのである。


 たかが一ヶ月、されど一ヶ月、夏休み一回分。


 ああ、そういえば、そろそろ夏休みである。

 唯を夏祭りに誘おう。


 「あのさ、唯……」


/////////////////////////////////////////////////////////////////


 夏祭り当日、午後5時。


 「ヤッホー」

 「ウイっす」

 「どう?」

 「浴衣じゃないのね」

 「今までのデートで着すぎて飽きたし、動きにくいし」

 「後日、浴衣姿を写真で送って」

 「動画で送る」

 「やったー」


 会うのは、夏休みに入って宿題を終わらせるため、図書館で一緒に勉強して以来である。


 俺と唯は、出店を制覇する勢いで食べ歩きを始めた。

 で、はぐれた。


 やはり、混みあっているところで、両手に食べ物を持つべきではなかったな。


 花火が打ちあがるまで、残り10分少々。

 俺は闇雲に歩く。

 電話がかかる。


 「もしもし」

 「もしもし、やっぱり混んででも繋がるんだね、便利だねWi-Fi」

 「今どこ?」

 「焼きそば屋近くのベンチ」

 「了解、待ってて」

 「食べながら待ってるよー」


 しばらく歩き、唯を発見する。


 「どうせはぐれるなら、もっとドラマチックにすればよかった」

 「いいよ、体に悪い」

 「確かにね、陸斗はあてもなく走り回りそう」

 「これまで、はぐれたこととかなかったの」

 「ないよ、浴衣だと人だかりできるからすぐに居場所がわかる」

 「なるほど、美人は得だね」

 「はい、サービスでもらった、焼きそば」

 「得だね」


 そのまま俺もベンチに座り、焼きそばを食べる。

 そうしている間に、花火が始まった。


 「綺麗だね」

 「うん」

 「こっち見て」

 「何だよ」

 「全然顔見えないね、本当に陸斗?」

 「スマホのWi-Fiで確かめてくれ」

 「お、繋がってる繋がってる。ということは、陸斗で確定です」

 「じゃあ唯は」

 「私は、そういうのないよ」


 唯は、悲しげな表情を浮かべる。

 いいや、あるはずだ考えろ、俺。


 「そうだ、俺の悪いところ、確か4つぐらいあったよな。それを言えたら唯であることは確定だ」

 「えー、数すらも曖昧な人に判定できるの」

 「できる」

 「じゃあ、まず一つ目、変態なところ」

 「これに関しては、今後撤回されることはないのか」

 「ないかな、果たして私で満足させられるのか」

 「マジ?」

 「二つ目は、女心を分かっていない」

 「そうだな」

 「で、あの恋愛漫画は読んだの」

 「読んだよ。のっぺらぼうの顔面は、粘土みたいだぞ」

 「そんなわけないでしょ」

 「だよな」

 「三つ目は、甘やかすところ」

 「これに関しては、納得できないけどね」

 「私も」

 「どういうことだよ」

 「私を甘やかすことに関しては、陸斗が私のことを好きになれば解決」

 「好きに、ね」

 「うーん」

 「なんだよ」

 「ドキドキしてほしい」

 「それは保障しかねる」

 「四つ目はWi-Fiを出すこと。何か心当たりはないの」

 「無いかな」

 「……そう」

 「そう」



 今はまだ言葉を紡ぐことに不器用な俺たち。それでも、時間をかければきっと。


 とりあえず花火が終わるまでは、学園一の美少女が離れてくれることはないだろう。

 家のWi-Fiが壊れ、明日まで繋がらなくなってしまいました。


 そのストレスを解消するべくこの小説を書きました。


 そう、ギガを削りながらこの小説は誕生したのです(怒)。



 最初に思いついた設定は、Wi-Fiを発する主人公と寡黙系のヒロインというものでした。


 ヒロインが無言のままスマホをいじってるけれど、主人公からは離れない的なイメージを描いてました。


 でも、その設定で書いてる途中、「あれ、この主人公Wi-Fiとしか扱われてなくて可哀そう」という感情なってしまい、その過程で幼馴染やガールズなどの身勝手な連中が生み出されました。


 ああ、もうWi-Fiを発する設定は無理かなと諦めて、なろうに掲載されている他のラブコメを読んでいたところ、美少女も外見でしか判断されてないなと気付き、Wi-Fi主人公と同じような境遇だなと繋がりました。


 で、発想の転換が行われて、主人公のWi-Fiによってくる女たちをヒロインが追い払う設定にすればいいんじゃねと再構築し、なんとかこの小説を書ききる?ことができました。



 情弱ゆえ、Wi-Fiに関するあれこれは、おかしな点があると思います。


 どうか、許してください。



 ああ、早く、YouTubeを高画質でミテ―!

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