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エアコンの吹き出し口から見つめる眼

作者: 荒木パカ

猛暑日が続く夏、外回りから会社に戻って来た私は、冷たい風を求め、天井のエアコンの吹き出し口に顔を向けた。

すると目があった。

風の吹き出し口の奥に、眼球の付いた浅黒い肉のような物が居たのだ。

見えている物を信じることができず、日射病にでもなって幻覚でも見ているのか、怪我をした動物が入り込んでいるのか、と考え始めた。

眼球は微妙に動いており、生きていることを感じさせる。

眺めていると、眼球の付いた浅黒い肉はスッと奥に消えていった。


私は動物が入り込んだのだろうと思い込むことにして、駆除して貰おうと、会社ビルの管理人のお婆さんに伝えに行った。

管理人に出来事を伝えると、思わぬ返答が返ってきた。

「あんた、先代の管理人を見たね。5年前に屋上に繋がる非常階段で亡くなった人が居たんだ。心臓発作か足を滑らせたのか知らないけどね。発見が遅れた上、夏の暑い日だったから死体の腐敗が酷かったと聞いているよ。だから肉片みたいな姿で、涼しい場所を彷徨っているそうだ。」


にわかには信じがたいが、実際に見てしまった訳であり、管理人の当たり前のことのように淡々と話す姿に納得してしまった。


「だからと言って、エアコンの吹き出し口に出なくていいじゃないですかね。」

涼しい場所なんて他にもいっぱいあるのだろうと、単純な疑問を口にした。

「地縛霊ってのは、死んだ場所に縛られることもあるらしいからね。一番近い場所がそこしかなかったのかもね。冷蔵庫に出てこなくて安心してるよ。あんな腐った肉が食べ物と一緒の場所に居られると困っちゃうよ。」

同じ仕事をしていた人を腐った肉扱いするのには、如何なものかと思った。

話し合った結果、今まで害が無かったから放っておいたが、流石に可哀想なので、お祓いの人を呼ぶということになった。


その後お祓いで先代の管理人は成仏したのかはわからないが、エアコンの吹き出し口を見る時、冷蔵庫を開けるとき、ふと思い出す。

ギョロリとこちらを見つめる眼球。



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