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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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短編集

呪いのメリーゴーランド

作者: 楠木 翡翠

 軽快で楽しそうな音楽に合わせて、たくさんの木馬がくるくる回っている。

 普段は小さな子供がキャッキャと歓声を挙げているメリーゴーランド。


 ある日、その遊園地に悲劇が起きた。

 歯車が狂い始めたかのように木馬が不自然な動きで回り、悲しくて暗い音楽を奏でるようになる。

 さらには、知らぬ少女の声が聞こえるようになり、メリーゴーランドに乗った者は命を落とす。

 それらのことから「()()()メリーゴーランド」と呼ばれるようになった。


 親子らしき男性と娘らしき少女が例のメリーゴーランドに近づいてくる。

 少女は嬉しそうな表情で駆け寄り、男性は怯えながら後を追う。


「パパー。メリーゴーランドに乗りたい!」

「駄目だ!」

「なんでー?」

「あのメリーゴーランドに乗ったら死ぬぞ!」

『……おいでよ……』

「……お馬さんと女の子、可哀想……」


 しょんぼりする娘。

 それはほんの一瞬だった。

 彼女の耳には知らぬ少女の声が聞こえていたようだ。


「女の子? そんな声は聞こえなかったが……メリーゴーランドのところには誰もいないよな……?」


 父親は辺りを見渡す。

 メリーゴーランドの周辺には娘以外は誰もおらず、声も聞こえなかった。

 彼がふと彼女の方を向くと「うん、遊ぼう!」と弾んだ声で話している。


何処(どこ)へ行く!?」

「パパは聴こえないの? 女の子の声と(たの)しそうな音楽が……」


 娘の()(うつ)ろで、口元は笑っていた。

 父親からすると彼女は何かに操られているのか、洗脳されているのかは分からない。

 メリーゴーランドの音楽は不快な音にしか聴こえない。

 しかし、その音楽に聴き慣れていくと不快さなんて徐々に感じられなくなった。


『……ねぇ……遊ぼうよ……』

「そうだな……娘と話してみるよ」


 そして、彼にも例の少女の声が聞こえてきたようで、きちんと会話が成立している。

 娘が父親のシャツの裾をグイグイ引っ張ってきた。


「ねぇ、パパ。一緒にメリーゴーランドに乗ろう? きっと、愉しいよ?」

「ああ。()()()()乗ろう」

「うん!」


 これが親子が発した最期の言葉だった。


 彼らがメリーゴーランドに乗ると、誰かが操作していないのにも関わらず、自動的に二周回る。


 メリーゴーランドが完全に止まった頃にはすでに遅し――。


 その親子の呼吸と鼓動が止まり、命を絶っていた。

最後までご覧いただきありがとうございました。


2021/12/31 本投稿

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