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宴?の始まり

「お待たせいたしました。どうぞ、ダイニングの方へ」


客間で寛いでいた陛下と宰相を、ダイニングへ案内する。

隣の隊長さんも無言で私と歩いていた。 


正確に言うと、客間で陛下を見た瞬間に無言になった。


なんでだろう?それまではそんなに不機嫌な様子は見られなかったのに。


私は不思議だったが、それ以上の追求はやめておいた。追求するのは良くない気がする。

うん、やめておこう。

藪をつついて蛇を出す気はない。


結論を出した私は、隊長さんに同調してダイニングへと移動した。


広くはない離れだ、すぐに着いてしまう。

狭いと言っても、この国の基準で狭いだけで私の庶民基準で行くと、平屋の一軒家くらいはあると感じていた。


ダイニングへ入ると、改めて陛下たちに向き直り今日のお礼を伝える。 


「お忙しい中、本日はお時間を頂き、ありがとうございます。精一杯のおもてなしをさせていただきたいと思います。楽しんでいただけたら幸いです」

「今日はありがとう、姫。城下では新しい料理で持ちきりだと聞いている。楽しみにしている」

「本日は私まで、お招きありがとうございます」

陛下と宰相に来ていただいたお礼を述べると、二人からも返礼があった。

それを受けるとテーブルへと改めて案内する。


本来なら侍女さんや侍従さんの役目だが、それを担う人物はいないため、隊長さんにお願いした。


私は料理を作ったり出したりする必要があるので、そこまでの余裕はないのだ。 


隊長さんに案内されて、陛下は気にした様子はないけど宰相はギョっとしていた。本来ならこんな事は頼めないし、頼まれてもしない人なのかもしれない。そんな事に後から気がついてしまった。


まずかったかな?


宰相の反応を見て、不安にかられながら突き出しを用意する。  


陛下はのんびりと隊長さんに話しかけていた。


内容まではしっかり聞こえないけど、ぼんやりと今日の料理はどんなものかを聞いているようだった。

隊長さんの返事までは聞こえてこない。

宰相は借りてきた猫の様に、ひたすら大人しくしている。


今日の離れは、ちょっとしたカオス状態なので、宰相の気持ちはわからなくもない。

陛下と陛下の親戚が話をしていて、私は肩書だけなら宰相よりも上になる。

そんな中に座っているなら大人しくしている方が、無難だと誰でも思うだろう。


ダイニングを横目に見ながら、突き出しやサラダの準備が終わる。


何も知らない顔をしてダイニングへ運んだ。

今日のメニューは、本気の居酒屋メニューだ。


この間みんなに試食をしてもらったメニューを、中心に用意をした。


燻製物からは燻製チーズ、スモークナッツ。サラダはあっさりとした和風サラダ。

さっぱり系は突き出しとして、酢のものを用意している。

卵料理は、厚焼き玉子。燻玉を作らなかったのは、卵料理で被ってしまうので今回は外した形だ。それに今後、同じようなことがあったときのために、料理のレパートリーは少しでも、残しておきたい気持ちもあったためだ。


揚げ物からはみんなの好評だった、フライドポテト、唐揚げになる。

唐揚げは隊長さんのリクエストだ。商人の『美味しい自慢』を聞いて我慢ができなかったらしい。

是非、と力強いリクエストをもらってしまった。

揚げるのは同じだし、手間はそんなに変わらないから、メニューの一つに加えてみた。唐揚げは美味しいし、私的には『お家ご飯』の部類と思っているけど、人によっては『居酒屋メニュー』とも言える、と判断したからだ。


そしてメインはアツアツ料理代表(?)のピザだ。これはみんなの反応が一番良かったからである。

なにせ、いい大人が欠食児童に変身するのだから。美味しさは推して知るべしと言ったところだろう。

あの欠食児童ぶりについては、初めは微笑ましかったけど、後はあ然としてしまった。

逸話付きのメニューだ。


お酒については隊長さんと商人の知恵を借りた。

私はお酒は飲めないので(成人していない)試食をした人たちが、何を呑みたいかを参考にするしかなかったからだ。


もちろん炭酸水はないが、エール・ワイン・蒸留酒・醸造酒はあった。

ハイボールやカクテルのような、すっきり系の飲み物は難しいようだが、お酒の種類があるのが救いだった。

水や氷はあるのでその辺を工夫して対応することを決めた。

季節的にも対応がしやすい事に自分の運の良さを感じていた。


私は食べるのが好きな事同様に、お酒を呑むのも大好きだ。

前の生活では一人呑みもよく行っていた。

いわゆるお一人様、というやつだ。おじ様達が行くような飲み屋さんも大好きだった。

お酒には詳しくはないが、それなりに呑み方は知っているつもりだ。

その知識をフルに使って美味しく・楽しく過ごしてもらおうと思っている。


『料理の許可をもらおう大作戦』は忘れていない。

しかし日本人の習性なのか『おもてなし』の気持ちが出てきていた。

だが、おもてなしがうまくいけば、物事は自然と上手く行くものだと信じている。


「がんばろう」

私はもう一度小さく呟いた。


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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
プリンが消えた…
[気になる点] >>卵料理は、厚焼き玉子。燻卵を作らなかったのは、卵料理で被ってしまうので今回は外した形だ。それに今後、同じようなことがあったときのために、料理のレパートリーは少しでも、残しておきたい…
[一言] 居酒屋メニュー、大好きです♪( ´▽`) はよ実食してほしいですね。 唐揚げメニューで、グレープフルーツサワー飲みたくなってきました。 更新楽しみにしてます
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