試食会 3
そのあとは、予想できた展開だった。
三人とも喋りもせず、黙々と、いや、取り合いをしながら食べていた。
特に商人と隊長さんの取り合いは熾烈だ。
商人、初めの頃の緊張と遠慮はどこにいったの?
ガチガチに緊張していたのに。
仲間意識があるのは良いことだけど、皿を手で隠そうとするのは、よくないと思うわ。その皿は盛皿だから、全員分なのよ。私の分も含まれているからね。忘れないで。
そして全員で『ざっくばらん』を約束したけど、最低限は必要だと思うのよ。ある程度のマナーは、ちゃんと残しておきましょうね。親しき仲にも礼儀あり、というでしょう?
「取りすぎですよ。これは私のです。渡しません」
ないと思うわ。隊長さんを威嚇するのはダメよ。やめときなさい。それに管理番も食べるんだからね。
いや、管理番は自分の分は先にキープしてたから、良いのかしら?こうなることを見越してたの?
そして隊長さん。あなたも大人気ないわ。隠している手の間から取るのはやめなさい。
「何いってるんだ。これは姫様が作ってくださったのだから、全員分だろう。私はまだ食べる権利がある」
うん。間違いないわ。あなたにも権利はある。間違いない。でもね子供じゃないんだから。
取れないからって、フォークで突き刺そうとして取るのはやめなさい。
マナーはどこにいったの?お出かけしているのかしら?手で食べるんですか?って聞いていたのに、あの言葉は嘘だったの?いや、忘れたのかな?
管理番、あなたが最後の砦かも、お行儀よく、二人に干渉せず穏やかに食べてくれているわね、
自分の分をキープしながら、二人が見ていないところで、先にキープしてるけどね。ポテトとピザばかり見てるからって、先に厚焼き玉子をキープしてるのは流石だわ。責められないように、ちゃんと二人の分をのこしてるのは偉いわ、できたら私の分もキープしてほしかったけど。贅沢な望みなのかしら?
なんか、遠くを見つめたい気分になるのは、許して欲しいと思う。
いや、美味しいと思ってくれているから、良いのだけど、うん。良いのよ、嬉しいし。
そして忘れないで欲しい。私の分は残してもらえるのかしら?
いや、残らない気がする。私のことは忘れてるわよね?うん。
失敗した。自分の分は先に取り分けてるべきだった。
着々と皿の上のものは消えていく。
最初に消えたのはピザだ。その次はポテト。やはり、温かい料理が先に消えていく。
その次は厚焼き玉子だ。量が少ない料理を、先に食べられないうちに食べておこう、という思いが透けて見える。
燻製ものは、ある程度の量があるので、じっくりと味わっていた。
皿に自分の好きな物を取っているから、安心してゆっくりと食べていられるのだろう。
因みに燻製ものは、燻玉、チーズの順に人気だった(ベーコンは料理に使うので出していない)
出来たら他の料理も、この感じで食べて欲しかった。残念。
ある程度の料理が消えていったところで、第二弾を出すべきか悩む。
この分では食べてくれるだろうけど、どうしようか?
先に感想を聞いて、メニューを皆で考えて足りないようなら追加しようかな?
それか、次回の分に隠し玉として隠しておくべきか。
今回は燻製ものも多いし(私が好きだからどうしても多くなる)バランスを考えた方が良いかも
厚焼きベーコンとか、バターコーンとかは、次に何かあった時に出せた方が安心かも。
考え込んでいたら、3人が私を見ていた。
「あの、姫様」
恐る恐る管理番が声をかけてくる。
「なに?」
「何か心配事でもありますか?」
私はこの言葉に力一杯同意をしておく
「ええ、あるわ。あなたたちが味わって食べているのか、すごーく心配だわ。食べるなとは言わないわ。でも、もう少し味わって食べてよ。口にいっぱい入れて、味がわかるか心配になっちゃう。ちゃんと味わってるの?」
「「だって、姫様。とられちゃうじゃぁないですか」」
隊長さん、商人とも声を揃えた。
管理番は苦笑いからのあきれ顔だ。私も同じ顔をしているだろう。
こんなところで仲の良さをアピールしなくても。
私は第二弾の見送りを決定した。





