試食会2
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ありがとうございます
今回は少し長くなりました
よければ、お付き合いください
よろしくお願いします
全員が席に着く。私は居酒屋メニューを並べていた。
今ある分は比較的冷めても美味しい料理だ。
サラダ・燻製系のチーズ・ナッツ・燻玉・厚焼き玉子等である。
大皿料理は初めてなのか、全員が戸惑っている(商人も含む)ので、私が料理を取り分けた。
視線が私の手と同じ動きをする。
皿から皿へと動くと、右に左にと同じに動く。メトロノームのようだ。
なかなか面白い。
「そんなに見なくてもちゃんと分けるわよ」
笑いながら言うと、全員が恥ずかしそうに俯いた。じっと見ていたことが、不躾だと気がついたのだろう。
その様子に笑いながら取り分けたお皿を並べていく。
「じゃぁ、食べててね」
私は皆にそう言うと、キッチンへ戻る。
「姫様?」
管理番が慌てて席を立とうとするので、それを止めた。
「良いのよ。あと少しだから、食べてて。温かいのを出したいの」
「そうは言われても」
商人が料理と私を見比べる。隊長さんも同意見なのか、ソワソワしている。
食べたいのと、私一人が席を立ちキッチンにいる事を気にしているらしい。
「いいから。座ってて。練習も兼ねてるんだから」
「「「はい」」」
少し強めの口調で断言した。
3人は肩を落とし座り直す。もう一度、食べ始めるように言うと、フライドポテトの準備だ。油にポテトを入れた。
油のはねる音が響いていく。小気味良い音だ。香ばしい匂いは食欲を誘う。
油の音を聞き慣れないせいか、その音に隊長さんが反応して、腰のものに手をかけ、腰を浮かせる。
逆にその反応に私が驚いた。
「隊長さん、ここには誰もいないわよ」
休みとはいえ、この部屋の護衛騎士を追いだし、自分が居座っているので、護衛の役目を担うことになる。役目を果たそうと、いつでも動ける体勢だ。
「その音は?」
「揚げ物よ。前にも食べたでしょう?」
「揚げ物?」
隊長さんは不思議そうだ。揚げ物として唐揚げを出したはず。メインでも、添え物としても出した覚えがある。
あったはずだけど、食べてない?
「あれ?唐揚げ、出した事があったよね?」
「姫様。それは私と管理番です。隊長殿はその時いらっしゃいませんでしたよ」
「そうだっけ?」
「はい」
商人は自分たちだけが食べたと嬉しそうに答え、隊長さんは、知らないことにムッとしたようだ。
このままは後が面倒なので、隊長さんにも約束しておく。
「今度、作るから」
「楽しみにしています」
油の様子を見ながら、ピザを窯に入れる。
今日は特に張り合っている気がするが、あの二人のやり取りは、いったい何なのだろうか?疑問だ。
しかし、仲間に引き入れた、と言うよりは、餌付けしたような気もする。
それならそれでも良いと思うけど。それぞれに張り合うのはやめてほしい。
次の約束をしている間にピザが焼ける。窯は高温なので焼けるのが早い。
私は台に上りピザを出すとテーブルに持っていく。
おー、と歓声が上がった。初めて見るものだから、じっと覗き込み鼻をヒクヒクとさせ匂いを確かめているようだ。
なにかしら聞きたそうにもしていたが、私がキッチンに戻りポテトを揚げているので、待ってくれた。
ポテトに塩をふりテーブルに出す。
ハーブソルトで、味付けをしても美味しいのだが、今日はシンプルに塩だけだ。
それでも、充分に美味しいので文句はない(私基準)。
ほかほかと湯気が立つポテトも3人は見ている。
揚げたてのポテトは熱いので、待つのはありかな?
ピザカッターが無いので、ナイフを出してピザを少し小さめのサイズに切っていく。
本来の大きさの更に半分だ。食べやすさを考慮した結果だ。
3人は私の行動をじっと見ている。
初めて見るから興味があるのと、早く食べたいのと両方がせめぎ合っているのか、動けないようだ。
そこは理解しているので、何も言う気はない。
私も初めて食べる料理を出されるときは、ジッと見つめてしまう。
「さあ、召し上がれ」
と言っても、食べ方が分からないだろうから、見本を見せる。
「こうやってね、手で食べるのよ?熱いから気をつけてね。」
ピザを手に持ち口へ運ぶ。もちろん食べる前にふーふーすることも忘れない。
「手で食べるんですか?」
隊長さんが驚いている。あまり驚かない隊長さんが珍しい。いや、良いお家の人だ、手で食べるなんて考えたこともないのかもしれない。
「無理にとは言わないわ。ナイフとフォークでも大丈夫よ。手で食べる方が美味しいとは思うけど」
説明を聞いた商人は、今のうち、とばかりに言い出した。
「では、失礼します」
私の真似をして、両手にピザを持ちふーふーする。
そのまま迷わず口に入れた。
「あつっ」
第一声は、うん、無理ないわ。
その量は熱いと思う、結構な量(半分くらい)を口に運んでいた。初めて食べるのに大胆だ。
その次は聞きたかった言葉が飛び出す。
「うまい」
うまい、いただきました。
叫びはしなかったが、私はグッと握りこぶしをテーブルの下で作った。自信がつく。
それを見ていた管理番は、私とポテトを見比べながら確認してきた。
「姫様。これも手で食べるのですか?」
「そうよ、こうやってね、摘まんで食べるのよ。これはピザほどではないけど、熱いから気をつけてね」
「はい。」
管理番は慎重にポテトをつまみ、口に入れた
「はふい」
ピザほどではないが、熱いのは変わらないのに、思いきって口に入れたな、と思う。ふーふーもしてないし。
二人は料理に外れはないと、思っていてくれているのか、躊躇いがない。
それを見ていた隊長さんも、触発されたのかピザを手に取る。
「無理はしないで、食べたいように食べて」
マナーは人による、気にしながら食べるのは楽しくないから、無理はしてほしくない。
「大丈夫です」
隊長さんはふーふーもせず、一気に食べた。
無茶するな。
大胆さに私の方が驚いた。
「うまい」
隊長さんの大声が響いた。燻製の時と同じ反応だ。
今回の料理も美味しいと、思ってもらえて安心した。
大声にはびっくりしたけど。





